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気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第五章 極悪貴族と姉妹の幸せ
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気球に乗って


ヨーロ大陸中央部にある王都フラン。ここには様々な国から行き交う人々で賑わっており、歩道に並ぶ商店の数もおそらく世界でも有数の部類に入る。通りの幅も広く、馬車五台分くらいが同時に通れるスペースがある。奥に見えるのはフランの大宮殿で、ヨーロ大陸王都フランの王であるルイ16世が住んでいる。今、ミス研メンバーは飛空挺をおり、この地に立っていた。


「ひゃあ、やっぱすげぇな。人の量が半端じゃねぇや。」


カルロスがしきりに驚いている。いや、カルロスだけじゃない。ランシアを除く他の全員が同じように驚いていた。見渡す限りの白い歩道。青い屋根のアーチがかかっているショッピングモール。両脇にずらっと並ぶ数々の店。空を見上げると飛空挺の他に気球なんかも飛んでいるようだ。


「あ、そうそうニーナ。これ返すよ。それとこれはミワ姉の分ね。」


俺はニーナにカジノで儲けた銀貨のうち二枚を渡した。ニーナが驚いて俺を見る。


「どうしたのよ、このお金?」


「実はカジノで大勝ちしちゃってさ。まぁちょっと、いやかなり生意気な福の神の少年に出会ってね。じゃなかった少女だったな。」


「カシワ・・言ってる事が支離滅裂なんだけど。つまりはどういうことよ?」


「はは、悪い悪い。実はさ、カジノで大勝ちしている少年がいたんだよ。実は少女だったんだけどね。その少女と同じ目にBETを続けたおかげで、大勝できたんだ。」


俺は皆にカジノで会ったライラのことを話した。カルロスが俺もカジノ行けばよかったとしきりに嘆いている。ミワ姉には成り行きとは言え、自分の分の旅費を払ってもらった事に礼を言われた。ミワ姉には普段から世話になりっぱなしなんだから、ささやかとは言え恩返しできてよかったよ。

それから、とりあえず俺たちは観光予定場所へと向かう事にした。最初はニーナが決めてくれたプランに従って行動し、ある程度見回ったら、各自で自由行動に移る予定だ。


「えっと最初に行くのは、青の洞窟よね。ここからだと列車で三時間か。結構遠いわね。その前に王都フランの街並みを見て行かなくていいのかしら?」


ランシアがニーナに尋ねる。ニーナが調べたところによると、王都フランでは今から一週間後、つまり俺たちが旅行から帰る日にちだが、そのときにパレードが開催されるらしい。だから、王都フランの観光は帰るときにすればいいんじゃないかと言う事で、先に別の場所を見回る事にしたそうだ。俺たちは青の洞窟に向けて出発するため、王都フランにある駅に向かった。だが、駅は想像以上に人の列が並んでいた。王都フランではこれが普通なのだろうか?しかし、これでは次に列車が来ても、おそらく人数オーバーで俺たちが乗る事は出来ないだろう。ニーナが駅員に尋ねる。


「すみません、私達、青の洞窟に行きたいんですけど、いつもこの駅ってこんなに混んでるんですか?」


「お客さん、観光で来られたんですか?残念ですが、今日は青の洞窟に行くのはおそらく難しいかと思います。」


え?どういうことだろう。いくら次の列車に乗れないからといっても、その次の列車を待てばいいだけではないのだろうか?


「実はですね。先ほど列車テロ予告がありまして、ただいま緊急で運転停止になっているんですよ。車両に爆弾を仕掛けたという犯人グループからのメッセージがあったようです。今王都フランの警備兵が全力で捜査にあたってくれているのですが、我々としましては乗客の安全が保証出来るまでは、列車を運転させるわけにはいかない状況でして。こんなこと初めてですよ。」


・・何それ?王都フランって治安いいってパンフレットにも書いてあったのに、テロなんて起きるのかよ。っていうか、そんな状況じゃ、他の観光スポットにも行けないじゃん。なんでよりによって俺たちが旅行に来た日に、初めてのテロなんてものが起きるんだよ。


「しょうがないわね。皆ごめん。さすがにこんな事態になるなんて想定してなかったの。旅行プラン一から練り直さなきゃ。」


ニーナが申し訳なさそうに謝る。いや、別にニーナのせいじゃないけどさ。誰だって、こんなことが起きるなんて予想してなかっただろうし。ミワ姉もニーナを慰める。


「ニーナのせいじゃないわよ。でも、これからどうしようかしら?この状況じゃ青の洞窟方面だけじゃなくて、全線で列車が運休になってるわよね。となると他の手段を探さなきゃ。ランシア、あなた海外旅行経験豊富でしょ。こういう場合どうしてるの?」


ミワ姉がランシアに尋ねてみたが、ランシアも首を横に振る。


「私だって、こんな経験は初めてよ。幸いここは王都フラン。列車の他に飛空挺や気球っていう移動手段が用意されてるわ。でも、飛空挺は当日申し込みだとどうしてもチケットが高くなっちゃうし、気球だと予定していた観光場所には行けないと思うわ。」


リッチマンもランシアの発言に追随して意見を述べる。


「とりあえず気球で行ける場所を調べてみたらどうかな?予定と違っちゃうけど、先に王都フランの観光するって手もあるし。もし今日中にバクダン騒ぎが解決してくれるようなら、明日からまた普通に列車に乗れるかもしれないしさ。」


確かにリッチマンの言う通りかも、それが一番手短な方法に思えるし、そうするか。皆もリッチマンの意見に賛同し、気球で行ける場所っていうのを調べてみる事にした。


「うーん・・気球って思ったより遠くには行かないみたいね。交通手段っていうよりは、気球に乗る事自体がひとつの観光目的になってるようだし。でもせっかくだから乗ってみる?これはこれでいい思い出になると思うわよ。」


ニーナが提案する。そうだな。気球に乗るなんて普通じゃなかなか出来ない経験だ。それも悪くないかも。俺たちはとりあえずプランの立て直しは後回しにして、気球に乗ってみる事に決めた。ツアー旅行とかと違って、こういう自由がきくのはミス研の旅行ならではだ。ま、ツアー旅行にはツアー旅行のよさがあると思うけどさ。


俺たちは今度は気球の発着場に行き、それぞれ気球に乗るためのチケットを購入する。金額は銅貨十枚。気球なんて相場が分からないから、高いのか安いのか分からないや。

気球はそれほど大きいものではなく、ひとつのカゴに七名全員が乗る事は難しいようなので、俺たちは三グループに分かれて乗る事にした。俺とリア、ランシアとリッチマン、ミワ姉とカルロスとニーナのグループだ。最初に俺とリアが気球に乗り込む。係員の指示に従って、カゴに入ると、先客がいた。

相乗りか。まぁしょうがない。ん?何か見覚えがある・・こいつもしかして飛空挺で一悶着起こしてたライラじゃないのか?


「おい、少年。おまえライラか?」


俺はライラに話しかけてみた。ライラが俺たちの方を振り返る。彼女も俺たちをみて驚いているようだ。


「おまえら、この気球に乗るのか。奇遇にも程があるだろ・・っていうか、そのまえにボクは女だ。少年じゃない。」


やっぱり間違いなくライラだった。こいつも気球に乗るのか・・いや、考えてみれば不思議という程でもない。まさか同じ気球に乗るとは予想外だったが、同じ飛空挺で王都フランにたどり着いて、列車には乗れないのだから、他の移動手段として、気球を選ぶのは十分考えられる事だ。飛空挺の当日券購入は高いみたいだしな。


「それで少年はどこに行くんだ?やっぱお前も観光か?」


「人の話聞けよ!まったく・・別に行く宛なんかねぇよ。言ったろ、ボクは天涯孤独の身だ。どこに行こうとボクの自由さ。」


「でも、仕事とかどうしてんだ?いくら天涯孤独で自由の身って言っても、働かなきゃ飯食えないだろ?」


「カジノで儲けた分もあるし、その心配はいらないけどね。でも仕事はしてるよ。デザインの仕事さ。主にアクセサリー関係のデッサンを手がけて、工房とかに定周期て提出するんだ。こう見えても評判いいんだぜ。と言っても、つい先日この仕事始めたばかりだけどな。」


へぇ。こんな男女がデッサンねぇ。人は見かけによらないよな。


「何か言ったか?」


「いや、なんでもないよ。あれ?つい先日始めたばかりってことは、その前はどうしてたんだ?」


「・・・姉さんと暮らしてた。ヨーロ大陸のなかでもすっげぇ辺境にある村でさ。楽しい事なんてなんにもない村だったけど、それでも姉さんと支え合ってたんだ・・ってなんでお前にこんな話しなきゃいけねぇんだよ。」


「いや、そんなつもりで聞いたわけじゃないんだけどさ。何か訳ありなのか?だったら聞いて悪かったな。軽い世間話のつもりだったんだ。事情があるなら、これ以上は詮索しないよ。」


俺はライラに謝罪した。別に人のプライベートにまで立ち入るつもりはない。それになんかライラは一瞬だけどすごく辛そうな顔をしていた。まるで涙が出てないのに泣いてるような、そんな見てて心がしめつけられるような感じだ。


「ねぇライラさん、カシワは別に悪気があったわけじゃないよ。許してあげて。」


ライラはリアの方をみて、気まずそうに下をみたあと、俺たちの方に向き直る。


「いや、別にボクも気にしてないけどさ。あんたら観光に来たんだろ。逆に悪かったな、しんみりさせちまって。ボクのことはほっといて、楽しんでくれよ。気球から眺める風景ってのも、飛空挺からの風景とはまたひと味違ったものが味わえるぜ。」


俺とリアはカゴから顔をのぞかせる。うっ・・いい景色だけど、なんか高い位置にいるっていう実感がもろにくるな。俺は高所恐怖症ってわけじゃないけど、今だけは高い位置にいるのが怖いって気持ちが分かる気がする。

でもそれもしばらくの間のことで、慣れると気球からみる景色に圧倒される。かなり遠い位置にある山や村なんかも肉眼で確認出来る。さすがに人々の姿までは小さくなりすぎて見れないが、間違いなく絶景と呼んでいい景色だろう。


「ねぇカシワ、ちょっと風が強くなってきてない?」


リアに言われて、俺は景色に見とれるのを一旦やめる。確かに、さっきまでより少し風が強くなってるようだ。いや、なんかどんどん強さが増してくるぞ。ちょっと待って、今気球に乗ってるんだよな。あんまり強い風が吹くのってまずいんじゃないのか?ポツポツと俺は顔に水があたる感触も感じた。

・・なんてことだ。雨まで降ってきた。さっきまで晴天だったのに、こんなに急激に天気が変わるなんて。


「お客さん、しばらくカゴの中でしゃがんでいてもらえますか?何か天候が急激に崩れてきましたんでUターンして戻ります。」


気球に乗っている添乗員がアナウンスする。俺たちは指示に従って、景色を見るのをやめ、カゴの内側でしゃがみ込む。雨も風もどんどん強くなってくる。やばいぞ。これは本格的にやばい。こんな強風じゃ気球のコントロール出来ないんじゃないのか?

見ると添乗員も焦っている。リアが俺の腕にしがみつく。ライラの方を見ると、震えてるようだ。そっか薄着だから寒さもあるのかも。俺は羽織っていたコートをライラにかけてやった。ライラが驚いて俺を見上げる。


「いいから着てろよ、ライラ。そんな格好じゃ風邪引くぞ。」


「でも、おまえだって寒いんじゃ?」


「俺はリアの温もりがあるから平気さ。なぁリア?」


リアは顔を赤くする。やっぱり照れてるリアは可愛いな。それでもリアは余計に俺にしがみついている力を強めた。


「はいはい、分かったよ。ありがたく着させてもらうよ。えっ?」


それはライラが返答するのと同時に起こった。突風が吹いて、俺たちの乗ってるカゴがあり得ない方向に回転しだしたのだ。やばい、放り出される!俺とリア、ライラと添乗員は揃って、空中に投げ出された。


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