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気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第五章 極悪貴族と姉妹の幸せ
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カジノでひと騒動


俺とミワ姉は一足先にミス研メンバーとの待ち合わせ場所に向かっていた。旅行鞄には衣服の他、グラ爺が作ってくれた手作りサンドイッチやオムレツなどの詰まった弁当箱も入っている。飛空挺に乗ったら空を眺めながら、のんびり食べる予定だ。


「おっ、早いじゃねぇか、二人とも。俺が一番乗りだと思ってたんだがなぁ。」


カルロスが到着する。カルロスもまた、かなり大きな旅行鞄を持っていた。それはいい。だが、何故、なんで背中に剣を担いでるんだよ?これは旅行だぞ。どっかに攻め込む気でもあるのか?


「お、もう皆来てたのか。なんだよ、カルロス、剣なんか担いで、戦争でもする気なのか?」


「あら、お揃いで早いわね。皆、けっこう荷物持ってきてるのね。かさばるかと思って、そんなに持ってこなかったんだけど。」


リッチマンとランシアも姿を現した。ランシアはカルロスとは逆にかなりの軽装だ。最低限の着替えとタオル、歯ブラシくらいしか、持ってきてないんだろうな。ランシアらしいや。


「ニーナはまだなのか?」


俺が尋ねるとリッチマンが答えてくれた。


「あいつは先に飛空挺乗り場に行って、皆の分の手続きしてくれてるよ。あんまり待たせちゃ悪いし、俺らもそろそろ行こうか。」


へぇ、さすがニーナだ。段取りいいな。旅行に行くときにニーナみたいな人が一人いてくれると、心強い。俺たちは皆が揃ってる事を確認した後、揃って飛空挺乗り場の受付場へと向かった。


「ここが飛空挺乗り場かぁ。やっぱ、広いなぁ。世界中の色んなとこに行く便がでてるんだから、当たり前って言えば当たり前なんだけど。」


俺たちが受付に着くと、ニーナが既に準備を一通り済ませてくれており、俺たち一人一人に切符を渡した。


「はい、これ。無くさないでね。再発行の手続き効かないんだから。もし不安なら飛空挺乗った後、また私が預かってもいいから。」


俺はニーナに渡された切符をひとまず財布のなかに入れた。発着時刻までは、まだ少し時間があるため、俺たちは土産物売り場へと向かった。さすが交通の要となっているだけあって、中々色々なものが売っているようだ。漬け物やチョコレート、雑誌に置物。傘なんかも置いてある。旅行先で雨が降ったときのために買う人がいるのかな。


「ねぇ、リア、見て見て。これ可愛くない?」


ニーナがリアに置物の一つをさす。・・なんだありゃ?ぬいぐるみのようだが、目玉が片方飛び出ている。よく見ると色々な箇所がつぎはぎだらけだ。わざとそういう作りにしてるんだろうが、あれは新品って呼んでもよいのだろうか?

だがリアとニーナはそのぬいぐるみを抱き合い、喜んでいる。女の子の”可愛い”は時として理解に苦しむな。そういえば元の世界にいたときも蛇を見て可愛いとか言ってた同級生の女がいたっけ。


「なんで飛空挺に乗るのに剣を預けなきゃいけねぇんだよ。」


後ろを振り返るとカルロスが係員となにやら揉めているようだ。どうやらハイジャック防止のため、飛空挺内への武器の持ち込みは禁じられているらしい。ま、そりゃだめだろ。当然だな。

だが、カルロスは納得してないようで、係員に食ってかかってる。可哀想に係員の人、まだ新入社員みたいですっかり怯えてるじゃないようだ。しょうがない、助けてやるとするか。


「カルロス、その辺にしとけって。別に一時的に預けるだけで、向こうに着いたら、また渡してもらえるんだろ。係員の人も困ってるじゃないか。」


俺はカルロスの肩に手をかけた。係員の人がほっとしている。お疲れさま。


「でもよぉ、カシワ。俺に取っては剣ってのは自分の体の一部みてぇなものなんだよ。あれがねぇと落ち着かねぇんだ。」


「なにを自分の枕じゃなきゃ眠れないみたいなこと言ってんだよ。子供じゃないんだから。それよりほら、カルロスもこっちこいよ。この青菜の漬け物やいかの塩辛なんかお前の好物じゃないのか?」


俺はカルロスを連れて土産物店へと戻って行った。カルロスが俺の指差した漬け物を手に取る。


「おお、こりゃ焼酎にもあいそうじゃねぇか。やべぇな。向こうに着いたらとことん飲むしかねぇ。」


どうやら、好物をみたら、さっきまでの揉め事は忘れたようだ。単純なやつ。決して悪いやつじゃないんだが、どうしてもトラブルメーカーとしての素養を持ってるみたいなんだよな。ちなみにいつもはトラブルシューター役はリッチマンが担ってくれている。


「ねぇニーナ、そろそろ搭乗手続きに行った方がいいんじゃないかしら?」


ミワ姉がニーナに尋ねる。俺も時計を見てみる。確かにそろそろ、乗り場まで行った方がいいかもしれないな。俺たちは受付で切符をみせ、タラップを登った。いよいよ、念願の飛空挺に乗るときがきた。

外見からでは分からなかったが、飛空挺の中は意外に広く、遊技場やカジノ、カウンターバーなどが備わっていた。上部に登れば、あたりの景色を一望する事も出来る。もうすぐ離陸だ。プロペラが廻る音がここからでも聞こえる。


「ご登乗の皆様に申し上げます。これより本機は離陸しますので、しばらくの間、席にお座りください。これより本機は半日程かけてヨーロ大陸中央部にある王都フランへと向かいます。尚、ただいまの時間は晴天となっておりますが、もし天候が荒れることがありましたら、室内にお戻りくださいますようお願いします。それでは、空の旅をお楽しみくださいませ。」


係員のアナウンスが流れた後、飛空挺はついに空へと旅立った。皆一斉に窓の外を見る。すごいな、雲が自分より下の高さにあるって光景はやっぱり絶景だ。いいかんじに太陽の光が反射していて、遠くには海面がきらめいてみえる。

リアやニーナ、ミワ姉は特にはしゃいでいるようで、色々な方向を指差しては、そちらの方角に首を傾け景色を眺めている。ランシアやリッチマンは、それほど景色に驚くということはないようだ。特にランシアは家が金持ちのお嬢様のため、飛空挺にも乗り馴れているのだろう。研究書類をリッチマンから借りて読みふけっているようだ。


「ご協力いただき有り難うございました。もう席をお立ちになっていただいて結構です。本飛空挺内には様々な娯楽施設も用意されておりますので、宜しければ、ご利用ください。」


また、アナウンスが流れた。もう飛空挺内を行動してもいいようなので、俺たちはしばらくの間ばらけて、各自好きな場所で過ごすことにした。俺はリアと一緒にカジノに行ってみることにした。

入り口でドリンクを受け取り、ニーナから、銅貨五枚だけもらって一番格安のチップ五枚に交換した。元々がミス研が生徒会から得た費用やニーナが稼いだ金で旅行に参加させてもらっているため、これだけでも十分な贅沢だ。

最適金額の価値のチップとはいえ、俺にはたった五枚しかない貴重なチップだ。無駄に張るわけにはいかない。リアはカジノ自体に参加する気はないらしく、俺と一緒についてきて、カジノの様子を見学している。

ルーレットやバカラ、ポーカー、ブラックジャック、スロットの他にもバックギャモンやチェスでの勝負、クラップス(ダイスを用いたカジノのゲーム)など色々用意されていた。店員は皆バニーガールの衣装を身に着けており、俺が見とれていると、リアに足を踏まれた。しかし、ルールもよく分からないようなゲームは参加しても面白くなさそうだし、どれにしようか。

しばらく迷って、あたりをうろついていると、ブラックジャックの台にひとだかりができていた。俺とリアも覗き込んでいると、一人の帽子をかぶった、あまりよい身なりとは言えない少年が、脇に大量のチップを置いてテーブルに座っていた。

あれ全部少年の勝ち分なのだろうか?一応この世界ではカジノに年齢制限などは設けられていないようだが、ディーラー側も少年も、すでにブラックのスーツを着た複数人の屈強そうな男達に周囲を囲まれている。緊迫した雰囲気が漂っているが、少年は笑みを浮かべている。


「ディーラー、二十、プレイヤー、ナチュラルブラックジャック、お客様の勝ちです。」


少年の元にさらに高額のチップが積まれて行く。俺はこの少年にのることに決めた。少年はチップを袋にいれ席をたち、今度はルーレットの方へと向かう。少年は赤の十八、黒の五、黒の二十四の三点に高額チップをそれぞれ十枚ずつ置いた。俺も同じマス目に一番最低額のチップを一枚ずつ置いて行く。

ディーラーがまわしたルーレットは黒の五で止まった。やった!少年にのって大正解だ。

俺はその後もしばらく少年と同じマス目に張る方法を繰り返し、元々一番安いチップ五枚だったものが、いつの間にかミドル金額チップ八枚になっていた。ミドル金額チップは一枚あたり、銀貨一枚分。もうこれだけで、今回の旅費分を十分に補える。そろそろ頃合いだと思い、俺はチップを換金した。

換金した銀貨を受け取ると、テーブルの上から激しい物音が聞こえた。何事かと思い振り返ると、先ほどの少年が屈強そうな男達に腕をつかまれ取り押さえられている。少年はしきりに手足をジタバタさせている。


「ちくしょう、離せ、ボクが何したってんだよ。」


随分高い声だな。まぁ、あのくらいの年頃なら声変わりもしてないだろうし、そんなもんか。それより、何のトラブルだろう。俺とリアは野次馬根性をだして、近くに駆け寄ってみた。


「いいから、ちょっと来て頂けますかな。お客様はあまりにも勝ちすぎています。申し訳ないのですが、ボディチェックをさせてください。」


男が少年の胸ぐらを掴もうとすると、少年はさらに激しく抵抗した。


「やめろ、離せよ、変態。ボクに触るな。」


イカサマの疑惑がかけられているのか。まぁ無理もないか。あの少年の勝ちっぷりはあきらかに、異常に思えた。しかし、単にすごく運に恵まれたとも言えるし、もしくは相当鋭い読みのできる人物なのかもしれない。どちらにしろ、俺にはカジノのイカサマなんて見分けつかないからなぁ。でも、あの少年のおかげで稼がせてもらったんだよな。助けてやりたい気もするが、どうしようか。


「いいから来い、このクソガキ!」


男の一人が少年の顔を殴りつけた。おいおい、ちょっとやり過ぎじゃないか?リアも不安そうに見ている。しょうがない、袖すり合うも他生の縁、銀貨8枚分くらいの恩返しはしてやるか。俺は少年を押さえつけていた男の一人に話しかける。


「あの、すみません。ちょっと宜しいでしょうか?」


男は振り返り俺を睨みつけてきた。なんか怖いな・・まぁでも別にいいや。俺は構わず続ける。


「実はですね。その少年私の方で預かっている子でして、今回彼の両親のたっての願いでヨーロ大陸の方へ連れて行く事になったんですよ。彼の父親っていうのが実はあのオーディーン様でしてね、私はオーディーン様の命令によりどうしてもその子を、ヨーロ大陸にある彼の実家の方へと届ける義務があるんです。見たところ、この子随分大勝ちしてたようですが、この子は人様に嘘をつくような子じゃありません。どうかお見逃しいただけないでしょうか?」


俺はひとしきり話し終わった後、男に向かって頭をさげた。我ながらよくこんなデマカセをスラスラ言えたもんだ。ミス研に入って様々なトラブルに関わっているうちに変なスキルまで身に付いちゃったのかも。


「オーディーンだと?こいつがオーディーンの息子だというのか?おまえの話が本当なら証拠をみせてみろ。」


男はなおも俺を威圧的に睨みつける。だから怖いって・・はいはい、証拠ね。俺はキューちゃんに頼んでまずオーディーンさんに事情を念話で説明し、協力を仰いだ。続いて、オーディーンから目の前の男にキューちゃんの念話を伝えさせる。オーディーンしか知らないような事実を当たり障りのない範囲で2、3もピックアップして伝えれば十分だろう。男は念話という技術やオーディーンからの話の内容に大層驚いたようで、少年を掴んでいた手を離した。周囲にいた他の男達にも引くように命じる。

おっ、なんだ、こいつが屈強男軍団のリーダーだったのか。こりゃラッキーだ。他の男達に同じ事する手間が省けるじゃないか。何回も同じ事頼むのはオーディーンさんにも悪いしね。


「今回だけは見逃してやる。とっとと行け。」


男は少年をカジノの出口の方に突き飛ばす。多少乱暴だが、無事解放されて何よりだ。俺とリアも一緒にカジノを出て、気分直しに景色をもう一度眺めようと、飛空挺上部にあるデッキの方へと向かった。


「なぁあんた、さっきはありがとよ。一応礼を言っとくぜ。」


唐突に声をかけられ、振り返るとさっきの少年がいた。ポケットに両手を入れて突っ立っている。よく見ると薄着なんだな。なんか寒そうだ。


「気にすんなよ。おまえのおかげで勝たせてもらったしな。とっとと親のところに行けよ。心配してるぜ。」


少年は俺の言葉に反応し、俺を睨みつけてきた。なんだ?何か悪い事言ったか?


「親はいねぇよ。殺されちまった。唯一俺を守ってくれた姉様も今頃は・・ボクは天涯孤独ってやつさ。じゃあな。一応礼は言ったぜ。」


少年はそのまま立ち去ろうとする。そのとき風が吹いて少年の帽子を飛ばそうとした。少年は帽子を飛ばされないように頭をおさえる。しかし、その反動でバランスを崩してしまい、デッキから落ちそうになった。俺は慌てて少年の体を掴んだ。ん?何か妙にやわらかいな。それになんかいい匂いがする。


「どこ触ってんだよ、変態。とっととその手を離せよ。」


「おいおい、おまえが落ちそうになったから支えてやったんじゃないか。これで俺は二回もおまえを助けてやったんだぜ。いくらなんでもその言い方は無いだろう。」


とりあえず、このままの体制ではまたデッキから落ちる心配があるので、俺は少年をデッキの安全な方へと移動させた。まただ。妙に柔らかい。そして気づいてしまった。少年の胸にはまだ小さい者の立派な二つのお山が備わっている事を。


「おまえ、女だったのか?」


少年・・いや少女は顔を真っ赤にして俺を睨みつける。


「誰も男だなんて言ってないだろ、変態。ボクはライラ。正真正銘の女だよ。ボクの体を触って慰みものにしたんだ。責任はとってくれるんだろうな。」


「いや、ちょっと待てって。女だって知らなかったんだって。っていうか、いつ慰みものにしたんだよ。助けを差し出して礼を言われるならまだしも、なんで責任取らなきゃ行けないんだよ。」


リアも何故か俺を睨みつける。いや、違うぞ、リア。なんで俺がこんな目に遭わなきゃ行けないんだ?


「気をつけてね、ライラ。カシワって女たらしだから、警戒しといた方がいいわよ。」


「だから、違うって。俺が何を悪い事したっていうんだ?」


だがまぁリアは俺をからかってただけみたいだ。なんだかんだで腕組みして俺に寄りかかってくる。


「へぇ二人はそういう仲なんだ。どうやらボクはお邪魔みたいだね。ボクの体に触った事は、助けてもらった事と相殺でチャラにしといてあげる。じゃあ、今度こそバイバイ。」


ライラと名乗る少女は俺たちに手を振って、去って行った。結局このハプニングは何だったんだろう・・だが、手元に八枚の銀貨が残っているのは確かだ。一応得したって考えていいのかな。

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