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気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第四章 悪徳宗教団体から子供達を守れ
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ミス研の旅行計画


「それでは、お世話になりました。」


俺とリアはエルフの長老さん夫妻に礼を言って、身支度を整えた。


「何をおっしゃいますか。お礼を言うのはこちらの方です。帰り際にはぜひリリィとルドルフに会ってやってくだされ。」


「ええ、もちろんです。今は二人とも家ですか?」


「いや、広場の方に皆と一緒にいるはずですよ。」


「分かりました。では、そちらに伺ってみます。」


俺とリアはエルフの村の中央部にある広場へと向かう。リリィとルドルフはそれぞれのご両親の一緒に無邪気に遊んでいた。


「あっカシワお兄ちゃん、リア姉ちゃん。見て見て。リリィね、こんなのが出来るようになったんだよ。ルドルフ、やろうよ。」


リリィは長い木のつたを持ってきて、端を両手で持って、振り回す。縄跳びだな、こりゃ。だが見てると二重飛びやはやぶさ飛びなど、けっこう高度な飛び方をしている。ルドルフも負けじとリリィと同じ飛び方をする。いや、待て。張り合ってるんじゃない・・合わせてるんだ!二人は全く同時に同じ動きをしている。これって一見ただ飛んでるだけに見えるけど、相当すごい技術なんじゃないのか?


「すごいよ、リリィちゃん、ルドルフ君。これならジェンキンスさんもビックリだ。あ、ジェンキンスさんって言うのは昨日宴でお兄ちゃんがやった手品を教えてくれた人なんだけどね。大道芸をやってる人なんだ。」


「大道芸って何?」


「えっと、大きな玉に乗ったり、色んなものを同時に投げたり、他にも色々凄いことやって皆を楽しませてくれる人なんだよ。」


「へぇ〜リリィ、みたいな。その大道芸。」


「僕もそのジェンキンスさんっていう人に会ってみたいです。」


「ジェンキンスさんは奥さんのアリシアさんっていう人と一緒にサーカスっていうのをやる予定なんだ。まだ色々準備とかあって先の事になるんだけど、いつかさ、リリィちゃんとルドルフ君もサーカス見に行ってみるといいよ。」


「サーカスって言うのも大道芸?」


「うんとね、なんて言えばいいのかな・・大道芸を一人じゃなくて色々な人たちがやるってかんじかな。動物達も登場して、いろんな芸をしたりもするんだよ。」


「へぇ、面白そう!見たい見たい。」


「うん。いつか見に行くといいよ。サーカスをやってるジェンキンスさんとアリシアさんていう人達はね、彼らの仲間と一緒に、今、皆をどうやって楽しませようかっていう案を一所懸命考えて、準備したり練習したりしてるんだ。きっと近いうちに素敵なショーを見せてくれるはずさ。」


俺はジェンキンスさんたちがサーカスの準備してたときの様子を思い出した。ジェンキンスさんやアリシアさんだけじゃなく、黒子役をしていたお弟子さんたちも含め、皆、活き活きとしたいい表情をしていたと思う。上からの命令で働いてるっていう人は一人もいなかった。皆が一丸となって、夢と希望を持って、働いていた。疲れきった日本のサラリーマンさんたちにぜひ見せてあげたい光景だ。


「さて、そろそろ行かなくちゃ。リア、準備はいいか?」


「うん。大丈夫。じゃ、またね。リリィちゃん、ルドルフ君。」


俺とリアはリリィ、ルドルフとそれぞれ順番に抱きしめあった。二人のご両親も俺たちに頭をさげる。最後に俺とリアは長老さん夫妻に握手をかわす。長老さんが俺とリアの手を握ると、俺たちは一瞬だけ緑色の煙幕に包まれた。煙幕が発生したのは、ほんのわずかな間の事で、煙はすぐに消えていった。


「あの、長老さん、今のは一体?」


長老さん夫妻は笑いかけてくる。リリィとルドルフも嬉しそうだ。一体何をしたんだろう?


「はは。今のは、エルフの森に自由に行き来出来るよう、お主らにかけた代々エルフ一族だけに伝わる魔法じゃ。いわば迷いの森の通行許可証みたいなもんじゃな。これでお主らは、いつでも好きなときにエルフの森を訪れる事が出来る。たまにはリリィとルドルフの所に遊びにきてやってくだされ。」


へぇ、そんな効果だったのか。俺たちはエルフの方々に友好関係にあるって認められたんだな。なんか嬉しいや。


「ありがとうございます。また必ず遊びにきます。リリィとルドルフもいつでも俺たちのところに遊びにきていいからね。」


俺とリアはエルフの人達に手を振った後、エルフの村を出た。迷いの森から少しはずれた所に予め呼んでおいた馬車に乗り、ペガサス列車の走っている駅へと向かう。俺は確信している。またいつか、リリィとルドルフに会うことはあるだろうって。だって、リリィもルドルフも外の世界をあんなに楽しんでくれたんだから。聖者の集いのような馬鹿どものことなんて忘れて、俺たちやハンナさん、リカルたちと築いた思い出の方をずっと大事にしてくれればいい。きっとリリィやルドルフならそうしてくれるはず。俺たちを乗せた馬車は、いつも見慣れたエルドォワ街に向かって、悠々と走って行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ねぇリッチマン、今回のミス研旅行どこにしよっか?」


ニーナとリッチマンは図書館で部の慰安旅行をどこにするか相談している。この旅行は年に一度か二度、各部ごとに決められるのだが、今年はカシワやミワが加わった事で、ミス研メンバーが総勢七名になったため、学内の生徒会から旅行用の予算がおりることになった。

今までは旅行は全て自費だったため、電車でいける距離にある、温泉旅館程度が精一杯だったのだが、今年は違う。もう少し規模の大きな旅行を楽しむ事が出来る。そこで部の会計役を担っているニーナは、同じく部の中では一番常識を持ち合わせているリッチマンに旅行についての相談をしていた。

何しろミス研メンバーはそれぞれの得意な分野では優秀なのだが、性格的に個性が強いやつらが多いので、最初から皆で集まって会議を開くと、意見がいつまでたっても、まとまらなくなるのだ。

去年もカルロスは全国武道大会巡りか、美人水着コンテスト巡りを提案し、ランシアは廃墟の館巡りコース3泊4日の旅を推していた。

そのときは予算はおりることができず自費での負担だったのに、皆好き勝手な提案をし、会計係であるニーナを随分困らせたものだ。旅行先を巡って意見が対立し、無駄に長い時間会議した後、結局リアの提案した勇者が営む温泉旅館に旅行に行く事で落ち着いたのだが、正直慰安旅行を決める会議であんなに疲れるとは思ってなかった。だから、ニーナは前回の反省を踏まえて、予め会議を開く前に部内一の常識人であるリッチマンに相談したのである。


「そうだな。今年は生徒会からの予算もおりるんだし、思い切ってちょっとぐらいなら遠出してもいいかもね。いっそ飛空挺にでも乗ってみるか?」


「えっ、それって海外旅行ってこと?さすがにちょっと高くないかしら?」


「団体応募だったら割引にしてもらえるところか、けっこうあるから案外安い値段でいけるかもよ。ちょっと調べてみるか。」


ニーナとリッチマンはキャンパス内の事務局に行き、学生向け旅行のパンフレットをもらってきた。再び図書館に帰り、もらってきたパンフレットを机に広げる。


「ほらほら、これなんかいいんじゃない?ヨーロ大陸に一週間の自由旅行で、一人当たり銀貨一枚だってさ。」


「え、でも安すぎないかしら?宿とか大丈夫なの?」


「パンフレットには立派な宿の絵が書いてあるけど、実際に行ってみないと分からないね。不安なら別のにしよっか。」


うーん・・ニーナは考える。せっかくの機会だ。ニーナ自身、飛空挺に乗って、海外旅行に行ってみたい。それに卒業後はハマーンの弟子として、どうせ各国を行き来することになるのだろうから、今のうちに遠国に行く経験を積むのも悪くない。銀貨一枚か・・値段的には悪くないし、ミス研の人数分合わせても生徒会からの予算で賄える額だ。問題はカシワやミワが一週間も喫茶満腹亭の仕事を休めるかどうかだが、提案するだけしてみるのもいいかもしれない。


「そうね、皆の意見も聞いて、カシワやミワも参加出来るようなら、応募してみましょうか。私も行ってみたいし。」


「あの二人行けるといいな。ここのところ戦争危機だの悪徳宗教だの物騒なことも多かったし、のんびり羽休めするのもいいかもしれないな。」


ニーナとリッチマンはその後も旅行プランなどを大まかに話し合った。もうすぐカシワとリアはエルフの森から帰ってくる頃だろう。最後には皆の意見を取り入れることになるが、もし皆行ければ楽しい旅行になりそうだ。ニーナは内心ワクワクしながら、残りのパンフレットの頁を捲っていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふぅ、少しの間しか空けてなかったはずなのに、随分久しぶりに部室にきたって感じするな、リア。」


「本当よね。エルフの森って、どこか幻想的っていうか、不思議な感じがする場所だったからね。」


俺とリアはミス研の部室のドアをあける。なつかしの我が家に帰ってきた気分だ。いつも通り、大量の菓子とお茶が置いてある。この風景を見ると落ち着くな。


「あ、カシワにリア。おかえり〜 待ってたのよ。早速実験を・・」


開口一番で俺を悪魔の実験に連れて行こうとしたランシアの頭を、リッチマンがこづく。


「いった〜い。だから、髪型が乱れるから頭はやめてって言ったじゃない。」


リッチマンはため息をついた後、話しかけてくる。


「まったく。なんで帰ってくるなり、実験なんだよ。それは後でもいいだろ。カシワ、リア、おかえり。遠くまでお疲れだったね。まずはお茶でも飲みなよ。」


リッチマンが俺たちのために、ダージリンの紅茶を入れてくれた。リッチマンのやつ、意外にお茶を入れるのうまいんだよな。特に紅茶に関しては、グラ爺が喫茶満腹亭で入れる紅茶と同じくらいにうまい。


「ふぅ、落ち着く。サンキュー、リッチマン。リリィとルドルフは無事エルフの森の両親の元に帰してきたよ。そうそう、エルフの人たち宴を開いてくれてさ、リリィとルドルフ踊りを踊ってたんだぜ。」


俺とリアは皆にエルフの森での出来事を話した。俺たちがエルフの森の通行許可証のような魔法をかけてもらったことや宴での出来事を話すと、皆口々に羨ましがる。


「なんだよ、だったら、俺が二人を連れて行けばよかったぜ。」


「しょうがないじゃない、カルロス。リリィとルドルフが一番なついてたのはカシワとリアなんだから。」


「ちぇっ、何か役得だよな。俺だって、あいつら助けるとき活躍したってのによ。まぁしょうがねぇか。それよりよ、お前らに話があんだよ。なぁニーナ。」


ん?何だろう、改まって。俺とリアは首をかしげる。


「ねぇ、カシワ。ミワにはもう話したんだけどさ、あなたとミワ、喫茶満腹亭の仕事、一週間程休めるかしら?実はね、ミス研で旅行行こうって計画があるのよ。ミワには今、一足先に喫茶満腹亭のグラ爺のところに行ってもらって、このこと話してもらってるの。」


「旅行?いきたいけど、俺もミワも働きながら魔法大学通ってる身だからなぁ。悪いけど金ならそんなに余裕ないんだよね。」


「それなら大丈夫。ミス研にも生徒会から予算がおりることになってね。あなたとミワは旅費の心配しなくていいの。それに前にハマーンの武器を誤って聖者の集いに売っちゃったときのお金も残ってるしね。」


へぇ〜、そうなのか。だったら、行きたいな。ランシアの実験サポートされたときには無料ほど高いものはないって身に染みたけど、こういうのだったら大丈夫だろう。


「それで、どこ行くんだ?また勇者が経営している温泉旅館とかか?」


「へっへー。驚かないでよ、カシワ、リア。じゃじゃーん、なんと今回は飛空挺に乗って、ヨーロ大陸に行こうって話なのよ。」


じゃじゃーんって・・今時死語だろ。ニーナって意外とセンスが古いのかな。え、飛空挺?それって海外旅行ってことだよな。結構高つくんじゃ?


「あ、値段のこと、やっぱ気になる?それがね、なんと一人当たり銀貨一枚で行けるらしいのよ。」


そりゃ安いな。この世界で銀貨一枚って言ったら、一人暮らしの一ヶ月の食費よりちょっと多いくらいだ。日本円だとだいたい三万円くらいだろうか。それで海外旅行に一週間なら悪くない金額だ。


「分かった、とりあえずミワ姉と一緒にグラ爺に相談してみるよ。」


「宜しくね。せっかくだから、やっぱり皆で一緒に行きたいし。」


海外旅行か、いいな、ぜひ俺も行きたい。何とかしてグラ爺を説得しなくちゃな。


「とりあえず俺も今から満腹亭行って、グラ爺に聞いてみるよ。キューちゃんの念話で聞いてもいいんだけど、こういうのは直接話した方がいいだろうし。ミワ姉はもう先に行ってるんだよな。」


俺は一旦、喫茶満腹亭に帰る事にした。グラ爺をどうやって説得しようか。頭の中で色々考える。

なるべくグラ爺を説得するのに効果的な方法を考えながら、俺はグラ爺の元へと向かった。

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