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気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第四章 悪徳宗教団体から子供達を守れ
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ハマーンの面談

ハマーンとニーナ、カルロスが冒険者ギルドを訪れてから二日後、ギルドから、依頼人との面談日の通知を受けていたハマーンは再びギルドへと出向いた。受付嬢に書類を渡して、所定の手続きを済ませたハマーンはギルドの待合室で連れの男達と一緒に、依頼人である聖者の集いの人物を待っている。


「お待たせいたしました。お相手の方がお見えになりましたので、こちらへお越しください。」


受付係が待合室に顔を出し、ハマーンを呼びつける。ハマーンは席をたち、受付係の案内に従って、面談場所へと向かう。連れの男達もハマーンと一緒に立ち上がろうとするが、ハマーンはそれを手で制し、ここで待つように伝える。面談場所は個室で、ギルドの係員がそれぞれの席にコーヒーを置いて、

立ち去った。既に相手の依頼人は席に座っており、ハマーンの姿を見かけると立ち上がって握手を求めてきた。ハマーンはその手を握り、依頼人に再び席に座るよう促す。


「この度は私どもの依頼をお引き受けくださり、誠に有り難うございます。私、聖者の集いの教祖ジャーク様より、この度の依頼をさせていただきました聖者の集いで幹部を務めておりますジャミールと申します。以後宜しくお願いします。」


ジャミールね・・ハマーンは目の前のローブを着た男を観察する。着ているものを覗けば、見た目は普通のどこにでもいる男に思える。だが聖者の集いは、武器商人の間でも御法度であるヤクを売りさばいていた。それに今は保護されたが、多くの強制労働者たちを悲惨な目に遭わせ、違法勧誘した信者からは多額の寄付金を無理矢理、集めていた。さらには幼い子供達まで危害を加えている。そんな教団の幹部を務めるという男がまともな男であるはずがない。


「これはこれはご丁寧に。私はハマーン。商人でしてな、この度は縁あってこちらの依頼を引き受ける事になりました。商人と言ってもご安心ください。腕力にはそれなりに自信がありますし、多少の荒事でしたら、さばけますので。」


ハマーンも全部は明かさず、目の前の男との会話を進める。今は探りをいれることが先決だ。なるべく相手にこちらの情報を明かさず、かつ相手の情報を出来るだけ多く習得する。ハマーンにとって、それはもはや日常生活の一環だった。


「あのハマーン様ですか。お噂はかねがね聞いております。これは頼もしい。では早速ですが、本題に入らせていただきます。もう既にご存知かとは思いますが、私どもの優秀な神官アムドと名乗る者が、卑劣な冤罪疑惑をかけられ、投獄されております。エルドォワ支部の同士たちも逮捕され、我が教団は甚大な被害を被っております。このような原因を作った者達に制裁を加えるべく、お力添えをぜひともお願いしたいと思っております。」


目の前の男は、さも遺憾の出来事であるかのように、同情を誘うような声を出してくる。こいつ役者にでもなった方がいいんじゃねぇのか?ハマーンは心の中で毒づく。


「なるほど、それはお困りでしょう。しかし、制裁とは穏やかじゃないですな。仮にも教団であれば、暴力の類いは嫌われるのではありませんかな。」


男はハマーンの返答に一瞬つまりながらも、すぐに笑顔に戻る。


「本来ならば私どもは無関係の方に手荒な真似をするようなことはいたしません。ですが、ここまで教団に悪意をもつものであれば、自衛のため、多少のことには目を瞑るというのが教祖様のご意向でございます。」


よく言うぜ。おまえら、どれだけ多くの人々に強制労働かしたり、拷問かけたりしてたんだよ。ヤクまで売りさばいてて、どの口がほざきやがる。と心の中で思いつつも、そんなことはおくびにも出さず、ハマーンも笑顔で答える。


「おっしゃることはよく分かります。どこの世界にも自分勝手な理由で人様に迷惑をかける連中はいるものです。本当に困った者ですな。」


おまえらのことだよ。ハマーンは心の中でつぶやく。


「ええ、ええ、まさにおっしゃるとおり。いや、さすが名うての武器商人であらせられる。どうです?今回の依頼だけではなく、正式に我が教団に力をお貸しいただけませんかな。もちろん、それなりのお礼はさせていただきます。」


きたな。こういう形で自分の名前が役に立つ事は度々ある。有名であることはデメリットもあるが、メリットも多い。


「ほう、具体的にはどのような手伝いをご所望されているのですかな?」


「実はですな。ここだけの話。最近のエルドォワ王の悪政には多くの民が苦しめられております。実はエルドォワ支部で建設予定だった神殿を強制労働者たちを使って無理矢理、短い納期で建てさせようとしたのもエルドォワ王の命令があってのこと。我が教祖様はこれらの問題に対処すべく、思い切って、王に成り代わり民を自らの手で導くことを検討されているのですよ。」


何?今の発言にはさすがのハマーンも驚いた。王を倒して自分がその座につく。要するにエルドォワ王国に革命を起こそうと考えているってことだ。何ともまあ、阿呆というか、身の丈知らずというか。しかしこういう悪徳教団の連中ってのは、それがどんなに荒唐無稽なことであろうと、正しいと信じ込み、思い切った行動に出てしまうことがある。実際にそんなことが起きれば、一番迷惑を被るのは、普通に暮らす人々だろう。


「それはまた随分大胆なお考えですな。それでその計画を実行されるお日にちなどは目処がついているのですかな?」


「今はまだ十分な準備が整っておらず、まだ先の事になるかとは思いますが、今回有力な戦力を加える事に成功しましてな。これは捕らえられた神官アムドのおかげなのですが、なんとあのオーディーンが味方についてくれることになったのです。最初は教団に不信感を抱いていたオーディーン様ですが、教祖様のお言葉に耳をお傾けになり、エルドォワ王をこのまま放っておくことは出来ないという我々の考えをご理解くださったのです。いや、英雄となられる方だけのことあって、誠に賢いお方です。」


何だと?それはさすがにまずいだろ。オーディーンが戦力についたとなれば状況は一変する。一人で軍勢並みの働きをする男が敵にまわれば、とんでもないことになる。英雄となられる方がなんでそんな頭わりぃことしてんだよ。


「あのオーディーン様がですか。それは驚きました。先ほどまだ十分な準備が整っていないとおっしゃられてましたが、もう十分すぎるほど整ってるではありませんか。」


「いえいえ、これからですよ。一時期は裁判所からの不当な通知により、せっかく集めた寄付金を返却することになったのですが、我々の方も商売を手がけておりまして、もうすぐまとまった資金も手に入る予定でしてな。そうだ。そしたら、あなたからさらに多くの武器を購入させてください。」


商売・・ヤクの密売のことだろ?残念ながら、それが成功する事はもはやない。この前捕まえた連中から洗いざらい吐き出させたからな。俺はミス研の連中と違って、役所に突き出すなんざお優しい措置はとらねぇ。ヤクの取引に関わった連中はこれから地獄を見る事になる。もちろん教団には今後銅貨一枚だって入ることはねぇだろう。


「それはありがたいお言葉。たとえ相手が誰であれ、お金をいただけるのであれば、それは大切なお客様。誠意を持ってご対応させていただきますとも。」


「いやいや、オーディーン殿に続いて、ハマーン殿まで協力を頂けるとは、これは我が教団にも風が吹いてまいりましたな。」


その風はエルドォワ王ではなく、あんたらの方を吹っ飛ばすだろうがな。


「さてと、お話はだいたい承知いたしました。依頼案件の方、確かに引き受けました。近いうちにこちらからご連絡させていただきますので、宜しければ、あなたのご在宅されている宿を教えていただけますかな。」


「もちろんですとも。といっても、エルドォワ支部がこのような事態に陥ってからというもの、私どもは本部の置いてある集落の方に普段滞在しております。ここからですと、少々お時間がかかりますが、どうです?このまま我が教団の方にお越しになりますか?歓迎いたしますよ。」


「いや、それが中々自由のとれない身でしてな。今日のところはこれでお暇させていただくことにします。」


「ほう?そのような忙しい身で、本来商人の仕事とは関係のうすい冒険者ギルドのお仕事をお引き受けに?」


・・こいつ、なかなかやるじゃねぇか。まぁ探りを入れてたのはお互い様ってわけだ。これもいつものことだがな。


「ええ、たまには気分を変えて、普段とは違う仕事をやってみたくなりましてな。もちろん、だからといって手を抜くような真似はいたしません。どうぞご安心ください。」


「その点は心配しておりませんよ。天下の大商人ハマーン様が只の口約束で終わらせるような事があれば、それは面子に関わりますものね。では、ご連絡お待ちしております。今日はありがとうございました。」


「こちらこそ、貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。」


俺たちは最後にまた、握手をかわし、面談室をでた。待合所に居る連れの連中に今の話を伝え、ギルドを後にする。しかし、教団の連中だけなら対処の使用はあるだろうが、オーディーンは厄介だ。オーディーンがどういう意図を持って、教団の連中とつるんだのかは分からねぇが、ここは慎重に対応しねぇとな。俺はとりあえずニーナのところに行き、このことを伝えといた。ニーナは俺の話を聞き、目を丸くする。


「なんて事なの。ランシアとリッチマンの思いつき、あたってたんだ。まさか、本当に革命を考えているなんてね。どうやら最悪の事態になったみたいね。」


ほう?連中の意図を、あてずっぽうながら考えついてたやつらがいるのか。ランシアにリッチマンね。どうやらミス研のやつら、ただの学生のお遊戯集団かと思いきや、なかなか切れるやつらがいるみてぇだな。そういや、聖者の集いのエルドォワ支部を壊滅に追い込んだ黒幕はミス研の連中だったな。本当かどうかわからねぇが、エルドォワとリンガイアの間で起こりそうだった戦争まで回避したって話だ。ニーナといい、中々面白いやつらが揃ってるみてぇじゃねぇか。


「それで、どうすんだこれから?まずはオーディーンの対策練るのが先決だろうがよ。これは一筋なわじゃいかねぇぞ。」


「あ、それについてはもう大丈夫。ランシアが既に最悪の事態を想定して、策を考えてくれてたから。と言っても、今回は策なんて大げさなものじゃなく、普通にちょこっと話して解決したんだけどね。」


「何だと?馬鹿言ってんじゃねぇ。仮にも相手は英雄オーディーンだぞ。まともに戦えば、俺ら商人仲間とミス研のメンバーを加えても、手も足もでねぇでやられるだろう。ま、さすがに正面からぶつかるような真似はしねぇだろうがよ。それがなんで、ちょっと話しただけで解決すんだよ?」


「ふふふ。大商人ハマーンでも分からないことってあるのね。なんか少し安心しちゃった。何なら今から会いに行く?私達の仲間が働いている喫茶店に彼もいるはずだから。場所は喫茶満腹亭っていうところよ。そんなに遠くはないから、歩いてもいいけど、行くんなら電車がおすすめ。」


俺は連れの連中を、仕事場に戻した後、ニーナについて喫茶満腹亭とやらに行ってみることにした。そこにはさっき話にでてたばかりのオーディーンが、コーヒー飲んでくつろいでいた。周りにいるのは学生連中のようだ。おそらく、あいつらがニーナの仲間のミス研メンバーだろう。


「おかえり、ニーナ。あなたがハマーンね。私はミワ。ここで働きながら大学に通い、ミス研の活動もやってる者です。どうぞ、宜しく。ご注文が決まったら声をかけてください。」


ミワと名乗る女性が、水の入ったグラスとおしぼりを俺の元に持ってきて、挨拶してきた。


「ああ、宜しく。それより、これは一体どうなってんだ?なんでオーディーンがここにいるんだよ?」


「あ、彼ね。実は私達の仲間のカルロスっていうんだけど、カルロスの師匠でもあるの。さっきまでカルロスに稽古つけてて、今は休憩中ってわけ。」


カルロスって前に埠頭でニーナと一緒にいたやつか。オーディーンから直々に稽古うけるなんざ、只者じゃねぇ。なんか驚かされてばっかだが、一番の驚きは聖者の集いに協力してるはずのオーディーンが普通にカルロス君に稽古をつけて、今はここでコーヒー飲んでくつろいでいるってことだ。


「ちょっと待て。そもそもオーディーンは今、聖者の集いの連中に協力して集落にある連中の本部とやらにいるんじゃねぇのかよ?」


ニーナはそんな俺の驚いている様子をみて、愉快そうに笑いかけてくる。


「ふふ、オーディーンにはキューちゃんを通じて、カルロスが直に念話で話しかけてね。教団のことを洗いざらい話して、オーディーンの目を覚ましたってわけ。今オーディーンは逆に連中にだまされたふりして、教団の動向を探ってくれてるのよ。」


何を言ってるのかさっぱり分からねぇ・・なんだ、そのキューちゃんってのは?念話ってのも聞いた事ねぇが新手の魔法かなんかなのか?


「キューちゃんは私達の仲間の一人・・っていうか一物よ。キューちゃんは凄いんだから。遠くにいる人通しが、キューちゃんを通じて会話することが出来るのよ。キューちゃんに伝えたい相手と伝えたい事柄を念話で示せば、キューちゃんはその相手に話の内容を念話で伝えてくれるの。」


「・・頼むから分かるように説明してくれ。そもそも念話ってのはなんなんだ?」


「あ、ハマーンも体験してみる?説明するより、それが一番手っ取り早いだろうし。」


?なんなんだよ、一体。まさかもう聖者の集いの連中に洗脳されているのか?いや、それ以上にまさかとは思うがヤクをやってるんじゃねぇだろうな?俺は何が起こっているのか整理しようと頭を冷やしていると、突然脳裏に声が響いてきた。どう聞こえる?って声がする。まさか、これニーナか?だがニーナは口を開いてないぞ。


「ふふ、聞こえた?今のが念話よ。心で思った事を相手の脳裏に伝える事ができるの。すごいでしょ?」


・・そんなことが可能なのか。しかし、確かに今ニーナは口を開いてないにも関わらず、俺にメッセージを送ってきた。くっくっく。なんだなんだ。聖者の集いなんかより、こいつらミス研の方がよっぽど得体の知れない連中じゃねぇかよ。この前ニーナから甘ったれた言葉を聞いたときには、只の青二才の集まりかと思ったが、とんでもねぇ。気に入ったぜ、こいつら。


ハマーンはオーディーンと一緒の席につき、その後さっきの冒険者ギルドでの面談も含めて情報交換しだした。また、ミス研連中とは別にオーディーンの持っている剣も見せてもらい、今後はオーディーンの扱う武器についても、紹介させてもらうことにした。オーディーンと直に取引しているとなれば、武器商人としての名声はさらに飛躍的にあがる事だろう。正直これだけでも、今回ニーナの頼みを引き受けた報酬としては十分すぎる程だ。ハマーンはミス研メンバーやオーディーンとともに、喫茶満腹亭でのひと時を、久しぶりに心から笑って過ごした。

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