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気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第四章 悪徳宗教団体から子供達を守れ
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カシワとリアとミワ姉

ランシアとリッチマンはニーナ達より一足先に冒険者ギルドに行き、聖者の集いのだした案件について受付嬢から情報を聞いていた。他に依頼を受けた人物はなんとあのオーディーンだったのだ。オーディーンは依頼を受けた後、神官アムドに面会に行ったという。


「これはちょっと厄介な事になったわね。オーディーンなら大丈夫だとは思うけど、もし万が一聖者の集いの依頼引受人として私達と衝突するようなことになれば、対策を練らなくちゃいけないわ。」


ランシアがつぶやく。リッチマンはいくらなんでもそれは考え過ぎだろうと言うが、ランシアは常に最悪の事態を想定した上で、それを回避する策を考えるようにしている。もし、オーディーンが何らかの理由で聖者の集いの連中に取り込まれでもしてたら、大変な事になる。

歴戦の英雄なのだから、そんなことはありえないというのは、少し甘い考えだ。どんな分野であるにしろ、偉業を成し遂げた人物というのは多かれ少なかれ、人とは異なる考え方をする。それは時として、一般の人間から見た場合、奇異な行動に見える事もある。

一般の人間には思いもつかないような考えを、本人は自然の考えとして実行しているだけなのだが、どうしてもずれが生じてしまうのだ。故に人から理解されない苦しみなどを抱く事がある。

オーディーンの場合、皆から人気のある英雄なので、そんな悩みなどあるはずがないと思われがちだが、実際には本人にしか分からないような悩みを抱いているかもしれない。もしも、聖者の集いのような悪徳宗教団体の中にそういった心の隙間のようなものを見つけ、利用する事に長けている人物がいるとしたら、それはとても危険なことだ。


「ねぇリッチマン、私達もアムドの面会に行ってみましょうよ。」


リッチマンは驚く。なんでそんな危険人物と直に接触する必要があるのか。特にリッチマンはアムドを捕まえたとき、姿隠しの魔法を使ってたとは言え、カルロスやカシワと一緒に直接神官アムドに接触している。アムドほどの魔法の使い手なら姿隠しの魔法をかけた状態でも、普通に目で見るのと同じように、対象物を感覚で捉えることが可能なはずだ。当然、リッチマンの姿も目撃されていると考えるのが自然だろう。


「出来れば遠慮したいんだよなぁ。いくらなんでも神官アムドと直に接触するのは危険だし。」


それを聞いてランシアは笑い出した。リッチマンの肩をポンポンと叩く。


「ごめん言い方が悪かったわね。面会に行くというのは誤り。正確にはアムドのこれまでの面会記録を役所の方に見せてもらいに行きましょうって話よ。役所の方に事情を説明して、頼めばおそらく可能だと思うわ。ふふふ、リッチマンって案外臆病なとこもあるのね。でも、そういうとこ、ちょっと可愛いかも。よしよし、お姉さんがついてますからねぇ、大丈夫でちゅよ〜」


ランシアは調子に乗って、リッチマンにいい子いい子して頭をなでる。


「おい、ランシア、からかうなって。全くお前本当、正確悪いよな。そんなんじゃいくら美人でも、男できないぜ。」


するとランシアは何故か突然むくれる。そして、そっぽを向いて一言つぶやく。


「何よ、鈍感。」


リッチマンにはランシアの発した言葉の意味が全く検討がつかない。だがランシアの考えが読めないのはいつものことだ。だから深くは考えない。リッチマンはそんなランシアの思いの込められたつぶやきを無視して、ランシアと一緒にアムドとの面会を取り扱っている役所へと向かう。


役所につくと、受付担当者の指示に従って、アムドの面会記録を見せてもらいたい理由を書類に記入した。別にここで嘘をつく必要はないだろう。そもそも捕らえたアムドを役所に突き出したのはリッチマンなのだ。役所の担当者もその事を覚えていて、リッチマンに対して好意的に話しかける。


「おや、あなたでしたか?そうですか、アムドを巡って、そのような依頼が冒険者ギルドに提出されていたのですね。分かりました。普通なら面会記録を見せるにあたっては、所定の手続きが必要となるのですが、あなたでしたら問題ないでしょう。特別に許可いたします。こちらの資料室へどうぞ。」


担当者に連れられ、資料室に足を踏み入れたランシアとリッチマンは、アムドの面会記録を見せてもらう。そこにはオーディーンとアムドの面会内容が一字一句正確に記述されていた。ランシアとリッチマンは互いに顔を見合わせ、ため息をつく。


「アムドのやつ、よくもまぁ、こんなデタラメ話をスラスラと思いつくもんだ。神殿を建設したのは実はエルドォワ王の命令で、自分たちは仕方なくやっただけだって?じゃあ、あの拷問はなんだったんだって話だよな。まさかオーディーンともあろう人物が、こんな話真に受けたりしないよな。」


リッチマンはいかにも馬鹿馬鹿しいといった感じで資料を元に戻す。だがランシアは浮かない顔をする。


「いや、それはどうかしら。確かに私達から見れば、こんな話デタラメだってすぐに分かる。実際にカシワやリアが捕まって拷問にかけられる寸前だったんだから、当たり前よね。でも全く何も知らない第三者から見たら、何が善で何が悪かなんて、簡単には見分けつかないんじゃないかしら。アムドの言う事は確かにデタラメだけど、じゃあ、それがデタラメである証拠を見せろって言われたら、見せられる?」


「何言ってるんだよ、ランシア。あんな聖者の集いの連中の言うことなんか信じるやついないだろ?」


「それは私達が聖者の集いが異常行動を繰り返す、悪徳宗教団体だって知ってるからよ。聖者の集いは新興宗教団体よ。まだそんなに知名度が高いわけじゃない。全く聖者の集いのことを知らない人物がこの供述を見た場合、どちらが正しいかなんて、優れた観察眼や推理力のある人でもない限り、普通は分からないんじゃないかしら?」


リッチマンは考え込む。オーディーンは確かに歴戦の英雄だ。戦闘力という意味でなら、他を圧倒する実力者なのは間違いない。数々の修羅場をくぐり抜けてきているのだから、胡散臭い人物の相手もそれなりにこなしてきただろう。それでも、オーディーンが全く聖者の集いの連中のことを知らないとしたら、どうだろうか?さすがにオーディーンが神官アムドの言う事をそのまま鵜呑みにするなんてことはあり得ないだろうが、エルドォワ王に疑惑の目を向けるくらいのことはあるかもしれない。


「でもさ、仮にオーディーンがエルドォワ王に疑いを持ったとしてだよ、それで連中は一体何の特があるんだ?」


そう、それだ。おそらくアムドという人物は、邪悪だが、損得勘定で物事を判断し、行動に移すタイプだ。だとすればアムドのデタラメ話はアムドまたは聖者の集いにとって、何らかの利となる部分が含まれているはず。連中の企み。連中の利。

ランシアとリッチマンは考える。そういえば、聖者の集いの連中はニーナから大量の武器を購入したって話だった。何のためにそんなことをしたのだろうか?大量の武器の購入に用いた金額は決して安くはないはずだ。

それでも武器を購入するという行為が連中にとって得となる理由。誰かを攻め込む?いや、個人が相手なら、いかに対象人物が強敵と言えど大量の武器など必要ないだろう。つまり何かしらの団体をターゲットにして、攻め込むか、あるいは逆に何かから自分たちを守るために購入したということだ。

オーディーンにエルドォワ王へ疑いの目を向けさせ、何かしらの団体をターゲットにして攻め込もうとしている。そこまで考えついたとき、リッチマンとランシアはハッとして互いの顔を見合わせた。


「まさかとは思うけれど。」


「まさかよね。」


聖者の集いのターゲットとはエルドォワ王なのだろうか?だからオーディーンにエルドォワ王への疑いの目を向けさせ、大量の武器を購入した。突拍子もない話だ。まだ単なる思いつきで、推理どころか推測ですらない。だが、だからと言って、捨て去ってしまっていい考えとも思えなかった。


「どうやらもう少し詳しく、連中の企みについて調べてみる必要がありそうね。」


「そうだな。いくらなんでも、さすがにそれは無いとは思うけど。でもこのまま放っておくことも出来ない。」


ランシアとリッチマンは資料室を片し、部屋の電気を消して担当者に鍵を返した。礼を言った後、役所をでて、聖者の集いについての調査に向かう。ランシアは思う。全く得体の知れない連中のせいで、実験に集中出来ないじゃない。もっとのんびりゆっくり研究に没頭したいものだわ。だが、当分の間は忙しい日々が続きそうだ。ランシアはそっと天を仰いだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ねぇカシワお兄ちゃん、リア姉ちゃん。なんでこの部室、こんなにいっぱいお菓子があるの?リリィもう食べられないよ。」


「僕も。しばらくは何にもいらないや。こんなにお腹が脹れちゃってるよ。」


カシワとリアはリリィ、ルドルフをミス研の部室に連れてきていた。まだ他のメンバーは全員外出で、他に部員はいない。さっきまでミワ姉も一緒にいたのだが、今、ミワ姉は講義に出席しており、今日は模擬戦授業も含まれているため、帰りが遅くなるだろうということだった。


カシワとリアはまだ幼い二人のエルフが食べた菓子の空き袋の量を見て逆に驚いていた。エルフって小柄なのに随分食うんだな。今まで食った分はあの小さな体のどこに入っていったのだろうか。まぁそのエルフの食欲よりも、ミス研に置いてある菓子の量の方が多いってのは、それはそれで問題だとは思うが。


「二人ともよく食べたわね。あら、リリィちゃん、お口の周り汚れてるわよ。ほら、お姉ちゃんが拭いてあげる。」


リアがリリィの口の周りをナプキンで拭う。リリィはそんなリアに甘えて、リアに抱きつき、そのまま眠ってしまった。どうやらお腹いっぱいになって睡魔に襲われたようだ。ルドルフの方もうつらうつらしている。


「ルドルフ君も眠たかったら、寝てていいよ。ただ、今の時間にあんまり寝ちゃうと、夜眠れなくなっちゃうから、適当なところで起こすね。」


俺はルドルフに声をかける。ルドルフはミス研の部室に置いてあった長椅子に横になり、そのまま目を閉じた。俺はルドルフに毛布がわりに、部室に置いてあったタオルをかけてやった。


「二人とも、すごく可愛い寝顔。ねぇカシワ、もしもだよ。もしも私とカシワの子供が生まれたら、リリィちゃんやルドルフ君、一緒に遊んでくれるかなぁ。」


リアが頬を赤らめて尋ねてくる。リアと俺の子供・・やばい、俺も照れてきた。


「うん。きっと一緒に遊んでくれると思うよ。二人ともとってもいい子だし、仲良くなれると思う。」


「そっか、そうだよね。えへへ。あ、私お茶入れるね。カシワも飲むでしょ?」


リアは話しているうちに照れが大きくなったのか、席をたって、お茶の用意をする。ミス研の部室というか学内の部室は基本的に火気類は厳禁なので、部室にコンロなどは、文化祭などの特別なイベント時以外は普通置いてない。だから、ミス研の部室ではお茶をいれるとき、やかんなどは使えないので、代わりにコーヒーメーカーを使う。普段は挽いたコービー豆をいれるところに、代わりにお茶の葉を入れるのだ。後は普通にコーヒーを沸かすときと同じ要領でコーヒーメーカーでお湯をわかせば、お茶の出来上がりだ。リアがそうして入れたお茶を二つ分テーブルに持ってきた。


「ありがとう、リア。リアも座りなよ。片付けとかは俺がやっとくからさ。」


俺はお茶に口をつけると、リアの代わりに席をたち、リアの使ったコーヒーメーカーを洗浄し、後片付けをして再び席に着いた。


「ねぇカシワ、さっきは本当にありがとう。もしあの時カシワが助けてくれなかったら、私とこの子達また聖者の集いに捕まってたのよね。今頃すごくひどい目に遭わされてたかもしれない。カシワ自分を気化したり、無詠唱で相手に触れずに魔法を使ったり、あっというまに別人みたいに強くなっちゃうんだもん。びっくりしたよ。でも、そのおかげで助かったんだよね、私。」


俺はリアの隣に座り、リアの肩をそっと抱き寄せた。リアも俺に体を傾けて寄りかかってくる。


「まぁ、今回は俺の功績というよりは、ランシアの鬼のような実験のおかげなんだけどね。ごめんなリア。さすがの聖者の集いの連中も昨日の今日で事は起こさないだろうなんてタカをくくってたら大甘だったみたいだ。もっと俺が気をつけていれば、最初からリアもこの子達も危険な目に遭わさずにすんだんだ。本当にごめん。」


「なんでカシワが謝るのよ。カシワは私達をちゃんと助けてくれたじゃない。ねぇカシワ、私今すごく幸せ。小悪魔族だってことで、色んな人から虐められて、迫害されて、でもミス研に入って皆優しくて、カシワが居てくれて。ねぇカシワ、元の世界に戻る方法が分かったら、やっぱり戻っちゃうの?」


「ああ、そうだね。俺に取ってここは異世界だし、やっぱり元の世界に戻って普通に勉強して、仕事して普通の人生送らなきゃ。」


「私もカシワにとって、ただの異世界の住人にすぎない?」


リアが俺を見上げて真剣な表情で見つめてくる。俺はリアを抱きしめて、リアの頭を自分の胸に抱える。


「そんなわけないだろ。リアは俺にとってかけがえのない大切な人だ。俺は確かに元の世界にいずれは戻ることを目指している。でもそれは、この世界のことを見捨てるってわけじゃない。なぁリア、リアさえよければ・・一緒に俺のいた世界にこないか?俺は元の世界に戻る事も大事だけど、リアのことはそれ以上に大事なんだ。仮に元の世界に戻れたとしても、リアがいなければ、それは俺に取って何の意味も無い。俺に取ってはリアが側にいてくれることが何より一番大切な事なんだ。」


俺はリアを抱きしめていたが、リアの方も俺を抱きしめてきた。リアの腕に力が入っている。見るとリアはまた涙目になっているようだ。


「本当にリアは泣き虫だな。ほら、拭きなよ。」


俺はリアにハンカチを渡そうとする。その手をリアが握る。


「何よ、カシワが泣かせたんじゃない。あんな嬉しい事言って。カシワって本当は女たらしなんじゃないの?でももう遅いからね。私、カシワの側を絶対離れないんだから。好きよ、カシワ。大好き。」


「俺も好きだよ、リア。」


俺とリアは二人の子供が寝ていて、他には誰もいないミス研の部室で、ずっと互いの温もりを感じ合っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ミワは講義を終え、ミス研の部室に入ろうとして、その手を止めた。中を覗き込むとカシワとリアが抱きしめ合っている。ミワの鼓動がだんだん早くなっている。何故か急にリアのことが憎くなってくる。何、私嫉妬しているの?ミワは首を横に振る。


「そんなわけないじゃない。邪魔しても悪いし、図書館で勉強でもしてこよっと。」


ミワは部室に来た道をUターンして図書館に向かった。そんなミワの目にもうっすらと涙が浮かんでいた。


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