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気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第四章 悪徳宗教団体から子供達を守れ
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武器商人ハマーンの要求


「カシワ、あなたいつの間にそんなに強くなったのよ。信じられないわ。」


ミワ姉が驚いて俺を見る。別に強くなったわけじゃないんだよね。ただ、無詠唱で魔法を使えるようになったってのと、直接手に触れなくても魔法をかけられるようになったってだけだから。後、無属性魔法っていうマイナーな魔法使えるようになったのもか。まぁそれだけでも、普通の戦闘なら十分強いのかな?実感はあんま無いけどね。


「別にたいしたことじゃないよ。それより、皆怪我とかしてない?さっきの蜘蛛の糸みたいなやつ、多分動きを封じるだけで、毒とかは無いみたいだったし大丈夫だとは思うけど。」


リアが全身を動かして、自分の体に異常がないかを確かめる。


「うん、大丈夫みたい。ありがとう、カシワ。私も驚いたわ。いきなり、すごく遠い人になっちゃったみたい。」


「そんなわけないだろ。俺はいつもリアの近くにいるって。」


「いや、そういう意味じゃなくって。いきなり、あんなに強くなるんだもん。ちょっと嫉妬。」


「ランシアの実験というか拷問のような研究のおかげだよ。他の皆も無事みたいだな。よかったよかった。じゃ、どうする?リア達はハンナさんのとこ行くか?」


「あ、それがね。リリィとルドルフが魔法大学に行ってみたいって言うの。ミス研の部室に連れてってもいいかしら?」


「確か部外者は立ち入り禁止のはずだけど・・別にいいか。じゃ、リリィちゃん、ルドルフ君。皆でお兄ちゃん達の使ってる部室に行こっか。」


リリィとルドルフはさっきの男とのやりとりでまだ怯えてるのか、リアの服を掴んだままだ。


「ほら、リリィちゃん、ルドルフ君。魔法大学行きたいんでしょ。行こうよ。」


だが、二人は動こうとしない。そしてショッキングな言葉が二人から出た。


「お兄ちゃん、怖い。」


え?俺が怖い?どうしてだ?あっ今の聖者の集いのやつを倒したとこ見せて、怖がらせちゃったのか。そういえば、自分を気体にしたり、元に戻したりなんて目の前でやらかしたもんなぁ。ハッサンとかいう男の手足を土に変えたりもしたし。

迂闊だった・・あの時はリアたちを助けるのに夢中だったから、そんなことに気をまわせなかったんだよ。俺はリリィとルドルフに向き直って、なるべく優しく話しかける。


「リリィちゃん、ルドルフ君。ごめんね。怖かったよね。でもお兄ちゃんはリリィちゃんもルドルフ君も、大事な大事な友達だと思ってるんだ。だから、許してくれないかな?この通り。」


俺は両手を合わせて二人の前で祈るようなポーズをとった。ミワ姉やリアも俺に助け舟をだしてくれる。


「カシワお兄ちゃんね、リアお姉ちゃんやリリィちゃん、ルドルフ君に酷い事しようとする悪いやつから皆のこと守るために、戦ってくれたの。だから、全然怖くないよ。」


「そうよ。リリィちゃん、ルドルフ君。あのままだったら、聖者の集いのやつらに捕まっちゃってたんだよ。それにハンナさんの家でお料理作ったときも一緒に遊覧船に乗ったときも、お兄ちゃん、とっても優しかったでしょ。」


リリィとルドルフはお互いに顔を見合わせ、頷き合った後、俺の方を改めて見てくる。


「ごめんなさい、カシワお兄ちゃん。そうだよね。カシワお兄ちゃんはリリィたちのこと守ってくれたんだよね。ありがとう、カシワお兄ちゃん。」


「僕もごめんなさい。カシワ兄さん、助けてくれて、ありがとうございました。」


俺はそんな二人の頭をなでて、抱き寄せた。二人も俺に抱きついてくる。何にせよ、二人が無事でほっとしたよ。俺たちは皆でそろって我がミス研の部室へと戻って行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なぁニーナ、ハマーンとかいうやつの居場所は分かってんのかよ?」


カルロスがニーナに尋ねる。ハマーンは名うての武器商人という話だ。ということは、おそらく日頃から多忙なんじゃねぇのか?まずアポをとるとこからスタートしねぇと。だが、ニーナにはハマーンの居場所には心当たりがあるようだった。


「ハマーンなら、おそらく今頃は新たな武器購入のために、いつも使っている郵送ルートを確認してるはずよ。埠頭で待っていれば、そのうち顔を出すと思うわ。」


なるほど。武器商人ってだけだとイメージがつきにくいが、ハマーンのようなレベルの商人であれば、大々的な貿易商としての仕事もしてるのか。確かに最新で性能のいい武器を仕入れるには、各国の情報をより早く掴み、場合によっては遠方の国に対しても発注をかける必要がある。郵送料や人件費、保持費などが多少高くつくとしても、総合料金や仕入れ商品のクオリティーを考慮すれば、そちらの方が特になる場合もあるだろう。逆に武器を売る場合にも、情報をいち早く掴む事は重要だろうしな。


「それじゃ、埠頭に行くか。なんか持っていくもんとかあるんなら、今のうちに用意しておかねぇとな。ニーナ、これは必要ってもん、何かあるか?」


「とりあえずは何もいらないと思うわよ。菓子折りなんか持って行っても、逆に困らせるだろうしね。」


ま、そりゃそうだな。ハマーンとかいうやつの事務所にでも行くってんなら、土産も喜ばれるだろうが、埠頭で菓子折りなんざ渡されても荷物になるだけだ。俺とニーナは埠頭近くにあるシーサイドレストランでしばらくハマーンを待つ事にした。この店は全面ガラス張りになっており、埠頭のほぼ全域を見渡す事ができる。俺はうに丼を頼み、ニーナはシーフードグラタンを注文した。なんか上品な店で、それだけに出された料理は俺にはちょっと分量的に物足りなかったが、まぁ我慢するとしよう。別に飯食いにきたわけじゃねぇしな。


「そうだ、ねぇカルロス。今のうちに聞いておきたいんだけど、あなた卒業したらやっぱり冒険者ギルドに登録して生計を立てるつもりなの?」


「なんだ、こんなときに将来の話かよ。まだはっきりとは決めてねぇけどな。だがギルドに登録してもそれだけじゃ、よっぽど名の知れた冒険者とか、幸運に恵まれてお宝一杯のダンジョンにぶちあたったとかってんじゃねぇかぎり生活して行くことはできねぇだろうから、別の仕事も探さなきゃならねぇだろうよ。」


「そうよね。私も商人って言っても、具体的に何を取り扱うかは決めてないのよね。勇者と魔王が戦争してた頃なら武器商売も繁盛してたみたいだけど、今はハマーンぐらいの大物にでもならないかぎり、難しいわよね。もちろん、平和なのはいいことなんだけどさ。私は戦闘は苦手だから、冒険者には向いてないと思うし、最近、将来どうしよっかって、時々不安になるのよ。」


「将来に不安を抱いてねぇやつなんざ、滅多にいねぇよ。ランシアやリッチマンみてぇな頭のいいやつらなら、好きなとこに就職するとか、あるいは自分で仕事作り出して自由に生きて行くってのも出来るんだろうがな。あいつらなら、その気になれば王宮務めも出来るだろうし。カシワもいずれは、元のいた世界に戻る方法が分かれば、戻るんだろうな。」


「いいわよね。私は肉体的にもそんなに強くないし、魔法だって少しは使えるけど、それほど役に立てるわけじゃない。・・と、なんかしんみりしちゃったわね。あ、向こうから人が歩いてくる。あれハマーンじゃないかしら?」


街の方から男が数人の連れを伴って、一隻の船へと歩いて行く。その顔には見覚えがある。間違いなくハマーンだ。


「なんだ、もっと待つことになるかと思ったが、意外に早かったな。んじゃ、行くとするか。」


カルロスとニーナは会計を済ませ、ハマーンの元へと向かう。ハマーンもこちらに気づいたようで手を振ってきた。


「おお、生意気娘じゃねぇか。どうしたんだ、こんなところで?横にいるのは彼氏か?おめぇさんみてぇな気の強い女にほれるたぁ、よっぽど肝が据わってんだろうな。」


「違うわよ、彼は只の友達。何よ失礼ね。私だってこう見えても彼氏の一人や二人くらい・・そのうち出来るわよ。もう毎日毎日いろんな男から言いよられて、断り文句考えるのに苦労してるってくらい。」


「がはははは。すぐばれる嘘はやめとけって。で、生意気娘とそのお友達さんよ。こんなとこに来たって事は俺に何か用があるんだろ。聞いてやるから話してみな。」


ハマーンはパイプをふかし、俺たちの前に立った。なんだ、死の武器商人なんて言ってたから、もっと悪どいやつを想像してたんだが、そんなに悪いやつじゃなさそうだ。最も、商売となれば損得勘定を最優先させるんだろうが、普通に話してる分には気が合うかもしれねぇな。少なくとも俺はこういうおっさん嫌いじゃない。


「んじゃ単刀直入に言うわ。今私達、聖者の集いって連中を倒そうと思ってるんだけど、力を貸してほしいのよ。」


「聖者の集いって、あの最近出来た新興宗教か?何考えてんだか分からねぇいけすかねぇ連中だとは思ってたがよ。そういえば、エルドォワ街にあったあの教団の連中、逮捕されたそうじゃねぇか。あれも仕掛けたのはおまえらなのか?」


「まぁね。手短かに言えば、彼らに捕われてたエルフの子供達をひょんなことから助けるはめになっちゃってね。その時連中とひと悶着あって、結局倒すことにしたのよ。」


「ひと悶着って、おめぇ。あそこは何やら危ない事も色々やってるらしいじゃねぇか。俺の知り合いの業者がよ、やつらがヤクを取り扱ってるのを見たって言ってたんだ。ガセかどうかは分からねぇ。だが、ヤクは俺たち武器商人でさえも御法度だ。もしそんなもんにまで手をだしてるってんなら、黙って見逃すわけにもいかねぇ。」


「ヤクって、麻薬のこと?あいつらそんなことまでしてたの。多くの強制労働者たちを酷使して、幼い子供達まで酷い目に遭わせたうえに生け贄にしようとして、大勢の人々を違法勧誘して無理矢理、寄付金を搾り取る。そのうえ麻薬まで手を出してるなんて・・酷すぎる。絶対許せないわ。」


俺も驚いた。聖者の集いの連中、麻薬にまで手をだしてたのか。全く、これじゃミスティア連合の連中の方がまだよっぽど可愛げがあるじゃねぇか。


「まぁ証拠はねぇんだし、デタラメかもしれねぇけどな。だがお前さんが連中とやり合おうってんなら、協力してやってもいいぜ。何か俺にやらせてぇことがあんだろ?遠慮しねぇで言ってみな。」


「助かるわ。実はね、この前逮捕された連中の中に神官アムドってのがいるんだけど、そいつをめぐって、冒険者ギルドに変な依頼が出されてるのよ。逮捕されたのは冤罪で、陥れてやつらを探し出してほしいって依頼。もちろん冤罪なんかじゃないわ。それどころか逮捕された罪状以上にもっと多くの罪を犯していると思う。そこでなんだけどね、あなたに冒険者ギルドでその依頼を引き受けてもらいたいのよ。」


「あん?なに考えてんだ?そんなやつらの依頼なんざ引き受けてどうしよってんだよ。だいたいその陥れたやつってのはお前らのことなんだろ?」


「これはランシア、私の仲間から聞いた話なんだけど、ギルドで依頼を引き受ければ、依頼内容について誤解や要求内容のずれがないかどうかを確認するために、依頼する側と依頼を引き受ける側で直に相談する機会を設ける事が出来るらしいの。そこで、ギルドで依頼を引き受けて、連中と直談判し、連中の意図を探ってほしいのよ。」


ハマーンはニーナの提案に考え込む。だがそれも少しの間のことですぐに顔をあげた。


「なるほどな、考えたもんだ。そこで俺の出番ってわけか。どうせお前らが直にやつらに合いに行くのは面倒くせぇことになるから、代わりに連中と直に会ってくれるやつを探してたってことだろ。

まぁいいぜ。頼みを聞いてやらん事も無い。だが条件がある。」


「ええ、分かってるわ。あなたにもメリットが出るようにしろってんでしょ。実は前にあなたから購入した武器ね、売ったの連中なのよ。そのときは聖者の集いがこんな危険な連中だって知らなくてね。だから、連中を倒したときは、連中が持ってる武器を頂いて、そっくりそのままお渡しするわ。どう?これならあなたにも利益あるでしょ。」


だが、ハマーンの反応はニーナやカルロスの予期しないものだった。ハマーンはそれまでの笑顔をやめ、突然ニーナとカルロスを怒鳴りつけた。


「馬鹿野郎!!そんな後日払いの依頼が俺に通じると本当に思ってんのか?確かにおめぇさんの事は多少なりとも気に入っているぜ。だがそれとこれとは別問題だ。俺はな、商売に関しちゃ、目の前の現金、目の前のブツ、これ以外は信用しねぇんだ。どんなに貴重なサインや印鑑の入った契約書があろうとそれは只の紙切れになる可能性をはらんでいる。どんなに高い地位の人物の口添えがあろうと、そいつは突然失墜するかもしれねぇ。ガキが甘い考えで俺を見くびるんじゃねぇ!」


ニーナは唇を噛み締める。だが悔しいがハマーンの言う通りだ。ハマーンはこれまで幾多の商売人としての修羅場をくぐり抜けてきている商売のプロ中のプロだ。ニーナは自分の考えが甘かった事を今更ながらに悔いた。ハマーンは落ち込んだニーナを見て、ニーナの肩をたたく。


「まぁそんな顔すんなよ。何もおめえさんの事が嫌いで怒ったわけじゃねえ。むしろさっきも言ったように、個人的にはおめぇさんには商売人としての見所があると思っている。だがいいか?おまえが街の隅にある小さな個人商店を営むだけなら、多少の甘えも許されるだろう。しかし、おめぇさんがこの先、商売人として大成してぇって思ってんなら、それなりの覚悟を持て。下手に弱さを見せれば、同情するより先につけ込まれる。それが俺たちの世界だ。仮にだ。不幸な生い立ちをもったやつが俺の前に現れて、身の上話をうちあけたとして、俺はそいつを助けるような事はしねぇだろう。その場は同情するふりして、さらに情報を聞き出し、いずれはカモとして食い殺す。そんな俺を悪人だと蔑むやつらもいるだろう。だがそれすら出来ねぇようなやつは少なくとも武器商人としては成り上がる事なんざ出来ねぇだろうよ。いいか?俺は別におまえにも悪人になれなんて言ってるわけじゃねぇ。だが、常に相手の心を読み、相手の一歩も二歩も先のことを捉えるようにしろ。切り札があるんなら最後までとっておき、相手が図に乗ってるとき、勝ち誇ったと思って油断してるときに、ここぞというタイミングで使うんだ。」


ニーナはハマーンの顔をまっすぐに見つめる。もう落ち込んでいる様子はない。


「分かったわ。確かに考えが甘かったみたいね。それで教えてくれるかしら?あなたの望む条件って何なのかしら?」


「おおそれだ。つい話が脱線しちまってたな。なぁに俺の言う条件ってのはそんな難しい事じゃねぇよ。実はな、俺は今武器商売以外にも、新たな商売先を色々開拓してんだ。おめぇ魔法大学の学生なんだろ?調べはついてる。それでよ、おめぇんとこの大学の教職員連中にちっと俺の事を宣伝してほしいんだ。」


「宣伝?もしかして大学相手に商売始めるつもりなの?」


「おおよ。と言っても武器商売じゃねぇぜ。大学内で優秀な成績を修めてるやつ、見所のありそうなやつ、そんなやつらの情報が欲しいんだよ。悪用するわけじゃねぇ。そういったやつらの情報を色んな国の王族、貴族連中に売ってやれば、けっこういい金になりそうなんでな。学生連中にとっても就職先候補が増えるんだ。悪い話じゃねぇだろ?」


個人情報の売買。しかしハマーンの言う事を鵜呑みにしてよいのだろうか?確かに就職先候補が増えるなら、学生にとっても大学側にとってもメリットのある話だ。しかし悪用されれば、悪徳商法などの餌食にされかねない。


「ふん。俺のことが信用出来ねぇか?だがそれでいいんだ。俺が悪用しないって聞いて、すぐにほいほいとイェスの返事をするようなら、そんなやつは、それこそカモにしかならねぇからな。合格だ。んじゃ、本当の条件の方を提示するぜ。」


なんだ、今のはテストだったのね。危ないところだ。常に相手の考えを読むか・・言うは容易しだが実戦するのは、なかなか難しいわね。ニーナは心の中で考える。


「今度こそ、俺の本当の要求だ。おまえ、俺の弟子になれ。これが飲めるんなら、手を貸してやろう。」


ニーナはハマーンの言葉に目を見開く。カルロスも驚いているようだ。ハマーンの弟子になる・・それは私に武器商売をさせるってことなのかしら。正直、戦争に介入して利益をあげるような商売はニーナの好みではない。


「武器商売は嫌か?だがな、武器商売が人を救う事もあるんだぜ。それにさっきも言ったように俺は武器の取り扱い以外にも新たな商売先の開拓をしている。おまえが武器商売がどうしても嫌ってんなら、武器取引以外の道を選んでくれても構わねぇ。考えてみな。」


武器商売以外。ハマーンの言う言葉に今度は嘘はないだろう。ハマーン程の大物武器商人であれば、他の商売先にも手を広げるというのは十分に考えられる事だ。それにハマーンの弟子になれば、商売人としての貴重なノウハウを習得することが出来る。いずれ独立するにしても、必ず役にたつはずだ。


「わかったわ。あなたの弟子になる。ただ魔法大学には卒業するまで通わせて。それでもいいかしら?」


「まぁいいだろう。んじゃ話は決まりだ。おい、てめぇら、後の処理は任せるぞ。俺はちっと冒険者ギルドに行ってくるからよ。」


ハマーンは連れ添っていた男達に命じると、ニーナ、カルロスを連れて冒険者ギルドへと歩き出した。

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