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気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第四章 悪徳宗教団体から子供達を守れ
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ミス研流のギルド依頼の受け方


冒険者ギルドに出された聖者の集いの連中の依頼を俺たちが受ける?ランシアの突拍子もない提案に一同が目を丸くし、ランシアの方を見返す。


「どういうことだ、まさか連中にエルドォワ支部を壊滅させる原因を作ったのは俺たちでしたって名乗り出るのか?」


カルロスがランシアに尋ねると、ランシアは笑い出した。


「バカ、違うわよ。そんなことするわけないじゃない。それに第一私たちは学生よ。冒険者ギルドに正式登録できる身分じゃないわ。カルロスはこっそりギルドの仕事してたこともあったみたいだけど、まぁそれは別の問題よね。」


すると、今度はニーナがランシアに尋ねてくる。


「じゃあ、仮にこのギルドの依頼を引き受けたとして、何が目的なのよ?」


「そうね、主な目的は二つ。まず一つ目、この依頼を出したのが本当に聖者の集いの連中なのかどうかを確かめる事。確率は低いけど、誰かがいたずらで依頼を出したって可能性が全くないわけじゃないからね。そして、二つ目。こっちの方が重要なんだけど、依頼を出した相手に直接交渉出来る権利が得られる。ギルドで依頼を引き受けた場合、依頼人との間に要求内容の相違がないかどうかを確認するため、依頼する側と依頼を受ける側で直に相談する事が許されるの。」


これは今まで冒険者ギルドで起きたトラブルが少なくなかったため、適用された措置だ。例えば、ある特殊な薬草をとってきて欲しいって依頼があったとして、せっかくダンジョンの奥まで行って強敵を倒し、苦労してとってきた薬草が、依頼人の要求してた薬草とは外見がよく似てるだけの別物だったら、両者の間でトラブルが起こる。

依頼人からすれば、要求してたものじゃないので、料金を支払う義務はない。だが、引き受けた側からすれば、事前に詳細を記述してなかった依頼人に非があるとして納得しない。特に冒険中に死傷者が出るような危険な任務だったら、いくら依頼人の要求内容を満たしてないとは言っても、簡単には引き下がらないだろう。こうしたトラブルを避けるために、ギルド側では、冒険者側からの要求があれば、予め依頼人と依頼を受ける側で、要求内容について詳細に相談する機会を設ける事にしている。


「でもそれって依頼人・・つまり聖者の集いの連中と直に顔を合わせるってことよね。危険なんじゃないかしら?」


ミワ姉が不安そうな顔を覗かせる。確かにミワ姉の言う通り、聖者の集いの連中と直に交渉するとなれば、相手の素性は把握出来るが、こちらの素性もばれる可能性が高い。まして、依頼を出した人物が教団内でも高い地位のある人物、もしかしたら教祖本人かもしれないとなれば、危険度は相当高いと言える。


「ええ、その通りよ。だから私達が直に会うようなことはしない。こちらも代理を立てるのよ。」


代理人か・・でもそれって、代わりにその人が危なくなるってことだよな。俺もミワ姉に続いてランシアに質問する。


「それだったら代理に立てた人が危険にさらされるんじゃないか?」


「ふふ。うってつけの人がいるじゃない。幾度となく危険をくぐり抜け、こういった得体の知れない連中とも渡り合える人。ねぇそう思わない、ニーナ?」


え、ニーナの知り合いにそんなすごい人がいたのか?だが、ニーナは突然話を降られて狼狽しているようだ。


「何言ってるのよ、ニーナ?私の知り合いにそんな修羅場経験の豊富な人なんていないわよ。」


「いいえ、いるわよ。思い出して、戦争回避事件のときのこと。あなた、武器商人ハマーンに随分気に入られたって言ってたじゃない。彼なら聖者の集いの連中とも対等以上に交渉できるはずよ。」


武器商人ハマーン。前にエルドォワ王国とランガイア王国が戦争になるかもしれないという事件があったとき、ニーナが戦争回避の手段のひとつとして、交渉した武器商人だ。エルドォワ王のお抱え武器商人にさえ選ばれるほどの人物。確かに彼なら幾多の修羅場をくぐりぬけているだろう。聖者の集いのような得体の知れない連中とも、何度も商いをしているはずだ。


「でもランシア。彼が私達の言う事を聞いてくれるとは思えないけど。」


ニーナがランシアに再度問い合わせる。


「あなたハマーンに気に入られたそうじゃない。それに彼はあくまで商人。つまりこの交渉が彼に取って利になることであれば、協力してくれる可能性は高いと思うわよ。」


「利って、どうするのよ?」


「聖者の集いは、理由は分からないけど武器の購入を検討していた。それも大量にね。」


確かにそうだったな。ニーナはそのときは聖者の集いのことをよく知らなかったため、誤ってハマーンから成り行きで購入してしまった武器を聖者の集いの連中に売ってしまったのだ。


「でも、それがどうしたの?まさか、また大量の武器の取引ができます・・なんてハマーンに連中を紹介するわけじゃないわよね?」


「そんなことするわけないじゃない。いい?聖者の集いの連中はそのとき購入した武器をどこかに保存してあるはずよ。私達は聖者の集いを倒す。そのとき連中が所持している武器を頂く。その武器をハマーンに譲渡するって言えば、それはハマーンにとって大きなメリットになるんじゃないかしら?」


なるほど。元々はハマーンのものだった武器をニーナが買い、ニーナはその武器を聖者の集いに売った。その武器をハマーンに再び返すとなれば、武器商人であるハマーンにとっては、確かに利益になる話だ。だが、それは俺たちが確実に連中を倒すということ。さらに連中の所持している武器を奪い取るという前提で成り立っている。そううまくいくのだろうか?


「ランシア、あなたの話のとおりに出来れば、確かにハマーンに利益を提供出来る。でも、そもそもの前提として、連中から武器を奪うなんてこと簡単に出来るとは思えないんだけど。」


「そこはあなたの交渉次第ね。確かにハマーンに前金代わりという形で武器を渡すのは難しいと思うわ。だからどうしても後払いという形になる。だけどハマーンはあなたのことを気に入っている。やってみる価値はあると思わない?」


ニーナは考える。確かにどういうわけかハマーンは私のことを気に入ってくれたみたいだ。だが、商売となれば、個人の感情とは別の話になる。ましてハマーンは幾度となく修羅場をくぐり抜けてきた海千山千の商人だ。ただ気に入られているというだけでは、話はまとまるまい。しかしランシアの言う通りやってみる価値はある。聖者の集いはどちらにしろ、自分たちの身を守るためにも倒す必要があるし、それとは別にニーナ自身の今後を考えた場合、ハマーンのような経験豊富な商人相手に交渉するのであれば、それはニーナの商人としての経験の大きな糧となるであろう。


「分かったわ、ランシア。私やってみる。上手くいくかどうかは保証出来ないけど、チャレンジしてみたいの。」


「ありがとう、ニーナ。あなたならそう言ってくれると思っていたわ。大丈夫。あなたならきっとやり遂げられるわよ。」


ニーナはそうと決まれば早速行動開始ということで、早々にハマーンの所へ向かった。念のため護衛としてカルロスが一緒にニーナについていくことになった。ハマーンとの交渉だけならニーナ一人でも大丈夫だろう。だが、念のため聖者の集いを警戒し、単独行動は避けるべきだとの結論だ。冒険者ギルドに出されたおかしな依頼については、とりあえずニーナに任せる事になる。その他に俺たちに何か今のうちに出来る事はあるのだろうか?それに連中がもう動き出しているのなら、まさかとは思うがリアやリリィ、ルドルフも安全な場所に移した方がいいかもしれない。


「なぁ皆。俺はちょっとリア達を迎えにいってくるよ。昨日の今日でもう連中が行動を起こすなんて思わなくて、安心しきっていたんだけど、こうなるとリア達を保護しといた方がいい気がするし。」


「行くんなら私も行くわ。ニーナと同様、単独行動は避けるべきよ。ランシア、リッチマン、あなたたちはどうする?」


「私達はもう少しこの依頼について調べてみる事にするわ。もう既に他にもこの依頼を受けた冒険者がいるって話だし、連絡がつけばその人またはそのパーティーにも聖者の集いのこと教えておかないといけないからね。」


「分かったわ。気をつけて、ランシア、リッチマン」


「ミワ、あなたもね。カシワのこと頼んだわよ。」


うーん・・なんでミワ姉が守る側で、俺が守られる側かなぁ・・そりゃ、俺は皆に比べてそんなに強くないけどさ、やっぱり情けないよな。リアのことも守らなきゃならないし、もっと強くならなきゃな。ランシアの遊び道具役もとい実験サポートも頑張ってみるとするか。


「カシワ、いざとなったら戦うことより逃げる事を考えて。あなたは一度連中に捕まっている。二度目に捕まれば、今度は最初から容赦なく連中の拷問を受ける事になるわ。」


ミワ姉が俺の事を心配そうに見てくる。大丈夫だミワ姉。もう二度と捕まるようなヘマはするもんか。リアたちにだって手を出させるような事はしない。だが、警戒は常にしておかないとな。

俺はミワ姉と一緒に、リア達を探しに行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「リア姉ちゃん。今日は色々な所に連れて行ってくれて、本当にありがとう。遊覧船も楽しかったし、ショッピングで可愛いワンピースのお洋服も買ってもらったし、プラネタリウムってとこでお星様いっぱいみせてもらったし、すっごい楽しかったよ。ルドルフもだよね?」


「うん。僕も色んなところに連れてってもらった上に、洋服屋でデニムとポロシャツとジャケット買ってもらって、今日は本当にありがとうございました。」


リアはリリィとルドルフに笑顔を向けてソフトクリームを差し出す。


「お姉ちゃんの方こそ、今日は楽しい一日をありがと。どうリリィちゃん、ルドルフ君。エルフの森の外の世界、けっこう楽しい事もいっぱいあるでしょ?」


「うん。リリィお外の世界、大好きになったよ。もちろん、リア姉ちゃんもカシワお兄ちゃんも皆大好き。」


「僕もです。リアさんのおかげで、エルフの森の外にこんな世界が広がっていたっていうことを知る事ができました。」


「ありがとう、リリィちゃん、ルドルフ君。そろそろハンナさんの所に帰ろっか。」


「リリィ、お姉ちゃんの通っている魔法大学ってとこ行ってみたい。」


「え?そうね、あそこは学生と教職員、必要関係者以外は立ち入り禁止なんだけど・・ま、いっか。リリィちゃんもルドルフ君もお姉ちゃんの関係者だもんね。それじゃ行ってみようか?」


「うん。」


「お願いします。」


リアはリリィとルドルフを連れてミス研の部室に向かおうとした。だが、そのとき向こうの角からフードを被り、ローブを身につけた男が近づいてくる。


「おやおや、これはこれは以前捕らえたサキュバスの女性ではありませんか。エルフの子供達も一緒ですか。これは思わぬ大収穫だ。」


リアは顔が青ざめる。リリィとルドルフも自分の服を掴んで震え始める。聖者の集いだ。エルドォワ支部は壊滅したはずなのに何故?いや、それよりもこの子たちだけでも何とか逃がさなくっちゃ。でも、どうすればいいの?そうだ、キューちゃん。リリィはキューちゃんに念話を通じてミス研メンバーに緊急事態であることを伝え、自分の今いる場所を連絡する。幸い皆にはすぐ連絡をとることができた。ここから一番近くにいるのはカシワとミワらしい。それでも着くまでに10分はかかるようだ。ダメ、このままじゃ捕まっちゃう。リアの心臓の鼓動がどんどん速くなる。どうしたらいいの?


「あきらめなさい。どうせ生け贄にされるにしても、おとなしくしてれば、それまでの間の待遇が少しは改善されるかもしれませんよ。」


男の手が伸びてくる。リアはダメ元で光の矢の魔法を男に向かって放つ。光の矢は男にあたりはしたが、それほどのダメージはないようだ。おそらく男の来ているローブは魔法耐性があるのだろう。男は残忍な笑みを浮かべて、リアの胸元を掴もうとする。リアは思わず目を瞑った。だが、いつまでたっても男の手が自分の元に届く事は無かった。


「うぁぁぁぁぁ!!」


男が叫び声をあげる。リアが目を開けると、男は気体となって消滅した自分の腕を呆然と見ている。


「リアは俺が守るって言ったろ。もう大丈夫。すぐに片付けるから待っててくれ。」


声のする方を振り返るとカシワとミワが男を見下ろすように立っていた。


「え、カシワ、ミワ。どうしてこんなに早く・・それに今のは、もしかしてカシワがやったの?」


「まぁね。ちょいと残酷だが、治療ならこいつを役所に突き出した後で、リッチマンかランシアにやってもらえばいいさ。何せあいつら壊れた城の城壁すら瞬く間に直すからな。人間の腕ぐらい一瞬だろ。」


俺とミワ姉はリアからキューちゃんを通して念話を受けたとき、距離的には走っても10分くらいの場所にいた。だが、場所は正確に知る事ができた。それだけで十分だった。俺は自分自身を気化させ、風となってミワ姉を運び、リアの元へと流されてきた。幸い俺のいた場所がリアから見て風上だったため、リアの元へはすぐにたどり着く事が出来た。気化した自分を元に戻すのも本来なら凄い高等技術なのだろうが無詠唱であれば言葉を発する必要はない。簡単に元の姿に戻ることができた。

・・などと偉そうに言ってるが、これらは全てランシアの家で実験済みだったことだ。ランシアのやつ、気軽に俺を怪しげな薬で気化して、ニッコリ笑って”戻りたかったら自分の力でやってみ”とかほざきやがった。

初めてこの経験したときは本当に焦ったが、あの時の実験体験がこんな形で役立つとは思わなかったよ。人生何が役に立つかわからんもんだ。

ミワ姉は突然俺が無詠唱を使える事になった事や、自分を気化したり元の姿に戻るなんて芸当に、口をパクパクさせて、驚きの言葉も発せなかったようだが、まぁ初めてこんなの見せられれば無理もないわな。


見ると男が怒りの形相でこちらを見てくる。なんだまだ戦うつもりなのか?悪いが今の俺は、ランシアの、そりゃもうえげつない実験と研究のおかげで、無詠唱でしかも相手に直接触れる事無く魔法をかけることができる。以前敗れてしまった神官アムドくらいなら正直一人でも十分倒せると思う。


「俺はハッサン。聖者の集いの大幹部だぞ。貴様のようなわけのわからん若造になめられてたまるか。」


ハッサンとか名乗る男は、何やら詠唱を始める。見るとミワ姉やリア達に蜘蛛の糸が絡み付き始めた。


「くっくっく。どうだ、こいつらを助けたくば、おとなしく・・」


男は最後まで台詞を言う前に自分の残された方の腕と足が土に変わって行くのをみて、再度悲鳴をあげる。はいはい、分かった分かった。後で治療してやるから、もうおとなしくしてろって。

俺はミワ姉に頼んで、近くを巡回しているであろう警備兵か近衛兵を呼んできてもらった。ハッサンとか名乗ってた男はミワ姉が連れてきた役人に連行されて行く。手錠をかけようにも腕がすでにないため、運ぶのは楽だろう。いや、足も無いから逆に大変なのかな。

ちょっと見てて残酷だけど、後で治療してやるから、しばらくの間そのままでいてくれ。リアやリリィ、ルドルフに危害を加えようとしたんだ。そのくらいの罰は受けてもらわなきゃな。


俺は男にそっとつぶやき、リアたちやミワ姉に絡み付いた蜘蛛の糸を取り払ってやった。

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