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気まぐれ異世界遊戯  作者: yoshi
第三章 戦争騒動と魔物使いの美女と大道芸人
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新たな門出


戦争回避を成し遂げた勝利と文化祭、エルドォワ祭での商品完売を祝い、我がミス研メンバーはアリシアさん、ジェンキンスさんを連れて、いつも通り居酒屋権兵衛で祝杯をあげていた。


「お待たせいたしました〜」


店員が大皿を持ってやってくる。お、きたきた。今回の功労者のひとり焼き鳥君。君のおかげでミス研の部費は想像以上に潤ってくれたよ。心から礼をいう。ありがとう。どこぞのバカ王よりも、よっぽど人の役に立っているんじゃないか?


「皆さん。この度は本当に有り難うございました。まだ信じられません。戦争を本当に回避してしまうなんて、それもこんな短期間で・・以前のミスティア連合の件といい、一体皆様はどういう方達なのですか?」


アリシアさんは先ほどから何度も繰り返しお礼を述べている。そんなに恐縮されるとかえってこっちが緊張するよ。別に大した事はして・・なくもないか。でも、普段通りにしてもらった方がこっちも落ち着くんだけどなぁ。


「別に只の学生ですよ。どこにでもいる普通のね。だから、そんなに畏まらないでください。それより、アリシアさんもジェンキンスさんもぜひ焼き鳥食べてみてください。美味しいですよ。」


「普通の学生は武器商人や王を相手にあんなこと・・あら、本当。美味しいわね。これ。すごいお酒とよく合いそう。ねぇ、ジェンキンス、これ本当に美味しいわよ。」


ランシアが焼き鳥を頬張りながらジョッキを手にする。なんだ、ランシアさん。見かけによらず酒強い人なのか。ジェンキンスさんの方は酒には口をつけていない。もしかして下戸なのかな。


「おお、確かに旨いな。酒が飲めればもっと旨くなるんだろうが、ちょっと自分の体質が憎いな。」


焼き鳥を食べているうちに、どんどん追加料理が運ばれてくる。ここの定番の鹿肉鍋にほうれん草の炒め物、コーンバターにシーフードお好み焼き。なかなか皿が片付かず、新しい皿が来るたびに、まだ料理が残っている皿を脇にどかしてテーブルの中央部分を空け、新規できた皿を真ん中に置いていく。食べているうちに暑くなってきたのか、アリシアさんが羽織っていたカーディガンを脱いで、たたんで横に置く。おおっアリシアさん着やせ美人だったんだな。カーディガンの上からでは見えづらかった二つの山が見事に存在を強調している。俺は現れたお山に見とれていると、リアが肘をつねってきた。


「痛いって、リア。悪かったよ。ほら、このコーンバターやるから許してくれって。」


「まったく、変態なのはカルロスだけだって思ってたけど、結局男は皆同じなのよね。」


俺はリアの機嫌をとりながら、小皿にいくつか料理をとりリアに差し出した。リアも別に本気で怒ってるわけじゃない。なんだかんだ言いながら肩に顔を乗せてくるリアが可愛い。


「ほら、そこ。人前でイチャつかないの。まったく見てる私のストレスのこともちょっとは考えなさいよね。」


ニーナはそんな俺とリアを見て絡んでくる。なんだかご機嫌斜めだな。


「どうした、ニーナ?腹へってんだったら、もっと料理追加してやろうか?」


カルロスがそんなニーナの様子を見て尋ねる。


「カルロス・・いいわよ。あんまり食べて太ったら、ますます彼氏が・・いや、やっぱり食べるわ。すいません、この明太子サラダお願いしまーす。」


リッチマンとランシアは二人で小型の鹿肉鍋を注文し、いくつかのサラダとともに食べている。さっきまで来ていた魔導士のローブは実は文化祭からの借り物で、明日洗濯して返すことになっている。そのローブが想像以上に来てて暑かったらしく、こちらも今は薄手のシャツ一枚になってくつろいでいた。ランシアも同じく着やせ美人だったらしい。細身ながらくっきりとした体が隣の席に座っている客から注目を集めている。


「あ、リッチマン。そろそろこの肉いい頃合いみたいよ。私がとってあげる。」


お?珍しいな。ランシアが人の皿に気を配るなんてどういう風の吹き回しだろう。リッチマンはランシアに礼をいって黙々と鹿肉を食べる。脇にはすでに6本の空になった大ジョッキが並んでいる。相変わらず強いな。


「あ、そうだミワ姉。満腹亭のメニューなんだけどさ、焼き鳥も加えてみないか?グラ爺に頼んでさ。」


俺は思いついたことをミワ姉に提案してみた。別に以前から考えてたとかじゃない。目の前の料理を見て、思いついただけだ。


「カシワ。別に悪くはないと思うけど。うちの店は元々喫茶店だってこと忘れてない?」


だが、カルロスが横から口を挟んでくる。


「別にいいじゃねぇか。グラ爺さんの出す料理だったら何でも旨いんだし、あそこで今後も焼き鳥が食えるようになるなら、俺ももっと店に顔出すぜ。」


「そうね。私も悪くないと思うわ。飲食店なんだから、美味しいものならどんどんメニューに加えるべきよ。」


ニーナも追随して助け舟をだしてくれた。


「もう、皆して。分かったわよ。帰ったらグラ爺に提案だけしてみるわ。」


「せっかくだから、ここの焼き鳥を何本かおみやにしてグラ爺のところに持っていって試食してもらったら?」


リアがナイスな提案をする。そういえばグラ爺自身はまだ焼き鳥食べた事無いもんな。百聞は一見にしかずだ。実際に食べてもらうのが一番感覚をつかみやすいだろう。俺は店員さんを呼んで焼き鳥の何本かを持って帰れるように包んでもらうよう御願いする。店員さんも今日は祭りのおかげで売り上げが相当良かったらしく機嫌がよかった。おかげで俺の申し出にも快く応じてくれた。


「そうだ、リア。明日一緒に服買いに行かないか?実は俺ずっとグラ爺のところで借りてた服着ててさ。これも悪くはないと思うんだけど、そろそろ自分の服が欲しいんだよな。ちょうど明日は店も定休日だしさ。」


「へぇそうなんだ。いいわよ。私もそろそろ新しい服買いたいって思ってたし。そういえば明日は大学も休みだもんね。丁度いいわね。」


明日はリアとデートがてら、街をぶらついてみるのも悪くないな。今までなんだかんだで忙しかったし、休日はリアと二人でゆっくり過ごしたい。ついでにリアともっと深い仲になれれば言う事無いが、そっちは別に焦るつもりはないんだよな。リアとだったらどこに行っても楽しいし、こういう関係も心地いい。ま、のんびり気楽にいこう。


俺たちがデートの約束をしてた頃、アリシアとジェンキンスは二人でお互いのこれからについて話し合っていた。


「ジェンキンス、私、皆のおかげで戦争回避できてすごく嬉しい。だけど、王都での職を失っちゃったのよね。やっぱり冒険者ギルドに登録するのが地道な手段かな。魔獣使いならそれなりに重宝してもらえるだろうし。」


「そのことなんだけどさ、アリシア、その魔獣使いとしての力、俺たちの大道芸に役立ててみる気はないかな?」


アリシアはジェンキンスの申し出の意味がすぐに飲み込めず、疑問を呈する。


「どういうこと?私、玉乗りなんて出来ないわよ。」


「そんなことさせるつもりはないよ。ニーナから聞いたんだけどさ、カシワの以前住んでいた世界じゃ、サーカスっていうのがあったらしいんだ。イベント興行の一種で、動物に火の輪くぐりをさせたり、芸をさせたりして、客を喜ばせてたらしい。俺の大道芸人としての経験とアリシアの魔獣使いとしての力を合わせればさ、きっと皆が楽しめる素晴らしいショーを開催出来ると思うんだ。まぁ、具体的に何をするかっていうのは、これからじっくり考えるとして、どうかな?」


アリシアはジェンキンスの申し出に驚いていた。今までは自分が魔獣使いであるということで、人々からは魔族の手先何じゃないかと、あらぬ疑いをかけられたり、逆にエルドォワ国王のように自分の力をただ利用しようとする者ばかりだった。ミスティア連合の件では子供達にまで危害を加えている。アリシア自身、そんな魔獣使いとしての自分を恥じたりもしていたのだ。だけど今、ジェンキンスはそんな私の能力を人々の幸せのために提供する方法を示してくれた。嬉しかった。自分が人に利用されるのではなく、人の役にたてる日がくるなんて思ってなかった。


「ジェンキンス、ありがとう。私やるわ。サーカスやってみる。いえ、お願い、やらして。」


ジェンキンスは差し出してきたアリシアの手を両手で包み込み、しっかりと握る。


「俺たちならきっと、世界一のエンターテイナーになるのも夢じゃないさ。アリシア、実はもうひとつお願いがあるんだ。仕事の相棒ってだけじゃなく、俺自身の相棒になって欲しい。これからずっと、年老いて死ぬまで、いや、死んでもずっと。俺のそばにいてくれないか?」


アリシアがジェンキンスの言葉の意味を理解するまで、一瞬間があった。アリシアが意味を理解したとき、涙がこぼれおちる。プロポーズだ。今までたくさんの辛い事があった。ミスティア連合の連中から脅迫を受けて子供達を不本意とはいえ傷つけ、エルドォワ王には戦争を起こすきっかけを与えてしまい、絶望の毎日だった。それが一日にしてこんな幸せにつながるなんて。


「ジェンキンス・・私でいいの?」


「君じゃなきゃダメなんだ。俺はまだまだ大道芸人として修行中の身だ。毎月きまった給金があるわけじゃないから、もしかしたら苦労させる事もあるかもしれない。それでも、俺はアリシア、君と一緒ならどんな事でも乗り越えられると信じている。だから、俺についてきてくれないか?」


アリシアの目から涙が止まらない。いつの間にかミス研のメンバーも、そして全然関係ない周囲の客達や店員までこちらを注目している。


「まったく、プロポーズならもっとムードを考えなさいよね。こんな居酒屋でなんて・・でも、こんなに嬉しい事は人生でも、数回と無いわ。ジェンキンス、ありがとう。謹んで御受けします。これから、宜しくね。」


アリシアとジェンキンスはその場で抱き合い、キスをする。周囲一斉に拍手が起こる。この日、エルドォワ王国に初めてのサーカスの一団と一組の夫婦が誕生した。

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