2.優雅な朝
「今夜の舞踏会、楽しみですわね。ねぇ、姉様」
美しい薔薇に囲まれた朝の庭園で、優雅な朝のひとときを過ごしていた。
「えぇ、楽しみね。もうドレスは決めたの? 」
「もちろんよ! この日の為に2カ月前から特別に作らせたんだもの。集まるご令嬢達の中で私が一番美しいはずよ」
「ふふ、とても自信があるのね。美しいローズならきっと皆の目を奪うでしょうね」
今夜は私とローズの18の誕生日を祝う舞踏会。
18の誕生日は貴族のご令嬢にとって特別なもので、縁談が決まったりプロポーズを受けて婚約したり……ただ一人の王子様が現れるのを期待している女の子は多い。
私もローズほどではないけれど、特別な夜にいつもより少しだけ、浮き足立っている。
誰より一番でなくていい。ただ一人、恋人のランスに気に入ってもらえればいい、それだけでも私にとっては大変な事。前世では結婚どころか恋愛も出来なかったし、誰かと仲良くなる事さえ許されなかったのだから、何もかもが初めてで、幸せで不安な事ばかり。
愛されていても、選んでもらえる自信はない。
モテるかはわからないけれど、前世に比べれば……私にはもったいないほどの容姿。きめ細かな白肌に紅茶色の髪と瞳、ピンクの薔薇のように色付いた唇。背も高すぎず低すぎず……華やかなローズほどの魅力はないにしても、清楚に見えて気に入っている。
“大人びていて奥ゆかしい清楚なリリーが僕は好きだよ”
特にランスに出逢ってからは、そう思えるようになったけれど。
結婚相手ともなると、家柄や両家の相性もあるからと期待しつつがっかりしないように、心が予防線を張ってしまっていた。
「私はリリー様の方がお美しいと思います! 」
「ありがとう、サラ。あなた達のお手入れのおかげよ」
「そんな……だって今夜はリリー様がランス様からプロポーズを受ける大切な夜ですもの。張り切るのは当然です! 」
「もう、まだそうと決まったわけじゃないわ。サラったらせっかちなんだから」
メイド達の中で最も歳が近いサラと話しながら部屋に戻る。彼女といる時の私は令嬢だという事を気にしないでいられて楽しい。
「リリー様、いってらっしゃいませ」
名残惜しかったけれど制服に着替え、サラに見送られて学園へ向かう。
「ねぇ、お姉様。あそこに青い鳥が見えるわ」
「あら、本当ね。青い鳥は幸福の象徴と言うし、幸せな事が起こるといいわね」
「きっとお姉様がランス様からプロポーズを受けるのね」
「ローズったら気が早すぎるわよ」
「あら、10の時から付き合っているのにこれで別の誰かを選ぶなんてありえないわ。私、ランス様以外は認めないから」
「ローズったら……でも、そうだといいわね」
ちらりとこちらを向いて飛び去った青い鳥に、胸躍らずにはいられなかった。




