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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第64話 アルテリアの戦い方


「ほ、本当に俺が使っていいのかよ……?」


「言っておくが、貸すだけだ。クリムゾンドラゴンとの戦闘が終われば返すのだぞ」


「も、もちろんだ……」


 街へ戻ったらまずはこの者の武器と防具を新調しなければな……。素材は良い物を使っているようだが、確かに身に着けている防具は歪であった。事前に武器や防具にまで気は回らなかったか。


「受け取れ」


「あ、ああ……」


 聖剣の鞘を持ち、柄をアルテリアの方へ向ける。


「……っ! これがじいさんの使っていた剣……」


「おおっ!」


「聖剣が!?」


 アルテリアが聖剣の柄を手に持つと、聖剣全体がうっすらと光を帯びた。なるほど、これが聖騎士という祝福の力か。


 魔と闇を滅する聖剣。今世では人族の身体である我にとっては害にはならなかったが、魔龍族のセレネが持とうとしただけで弾かれた。おそらく前世の姿では我もこの剣を持とうとしただけで負傷していたであろうな。


「……すげえ、力が溢れてくるぜ!」


 アルテリアが自身の両手に持った聖剣を見つめる。先ほどよりも明らかにアルテリアの力が上昇している。


「ふむ、これなら問題なさそうだな。だが、無茶はするなよ」


「おう、行ってくるぜ!」


 自信に満ちた表情でクリムゾンドラゴンの方を向くアルテリア。そしてそちらへ向けて一気に駆けだした。騎士団と我もアルテリアのあとを追い、クリムゾンドラゴンの方へ向かう。


『GRUUUU!』


「うぐっ……」


「ぐっ!?」


 急速に近付くアルテリアに早くもクリムゾンドラゴンが気付いた。突如として巨大な咆哮を上げると、周囲が震えて騎士団員の一部の足が止まる。だがアルテリアはクリムゾンドラゴンの咆哮を意にも介さず駆け抜けた。


 そしてそのままクリムゾンドラゴンに突撃する。


「おらあああ!」


『GUUU……』


 ドラゴンが慌てて飛翔しようとするが、それよりも早くアルテリアの聖剣がドラゴンの片翼を切り裂く。見事に奇襲が決まり、これで空を高速で飛び回ることができなくなった。


「し、身体能力強化魔法もなしであの速度とは……」


「ちっ……ただの木偶の棒ではないようですね」


 アルテリアの動きに驚くルーカスと、なぜか残念そうにしているミラ。


 あのアデレア国最強の剣士であるルシアスとまではいかないが、そこいらの者よりよほど強い。聖剣の力もあるとはいえ、なかなかの動きであるな。これまでたった一人で魔物を狩り続けてきただけのことはある。


 勇者の子は戦闘の才能がないと聞いていたが、孫にはその能力の一端が引き継がれていたようだ。


「遅え!」


 アルテリアは俊敏に動くドラゴンの鋭い爪や牙を華麗にかわす。ドラゴンもその巨体の割に俊敏には動くが、それよりも聖剣を手にしたアルテリアの方が遥かに速い。


 聖剣によって強固な鱗をまるで布切れのように軽々と切り裂き、ドラゴンの身体から紅の鮮血が宙に舞う。

 

『GYUU!』


「むっ、ブレスだ! 離れろ!」


 ドラゴンの口元が光輝き、ルーカスが叫ぶ。ドラゴンがアルテリアの剣戟を受けつつも片方の翼で空へと浮かびあがり、空から切り札であるブレスを吐き、周囲一帯を焼き払うつもりだ。


「しゃらくせえええ!」


「馬鹿、無茶だ!」


 ルーカスは叫ぶが、アルテリアはブレスを吐こうとするドラゴンへそのまま突っ込んでいく。


『GYAAAAAA!』


 クリムゾンドラゴンの口元から灼熱のブレスが吐き出された。


「くたばりやがれ!」


「なっ!?」


 力なき者ならば灰すら残らぬ灼熱のブレス。だが、アルテリアは聖剣を前に出し、ブレスを切り裂くようにドラゴンへ向けて突き進む。


 アルテリアの身体が灼熱の炎に包まれるが、先ほどの聖剣と同様にアルテリアの身体が光に包まれる。そしてブレスを突き抜け、クリムゾンドラゴンの首を一刀両断した。首と胴体が分かれたクリムゾンドラゴンは地に落ち、そのまま動かなくなった。


「「「おおおおおお!」」」


 騎士団員の者たちが驚きの声を上げる。


「まったく、まともな防具を身に着けていないのになんて無茶を! ミラ殿、彼女の傷を!」


「……仕方ないですね。ヒール」


「……助かった。あんがとよ」


 ルーカスに言われて苦々しい顔をしながら、ミラがアルテリアの怪我を治療する。アルテリアもミラを嫌っていいるようだが、治療をしたことに対しては素直に礼を言う。


 ……自身の危険を顧みず、敵を倒すためにあえて死地へと踏み込む。アルテリアの姿はかつての勇者の戦い方によく似ていた。ミラが苦々しい顔をしていたのは我と同じで勇者のことを思い出しているのかもしれぬな。


いつも拙作をお読みいただき、誠にありがとうございます(*ᴗˬᴗ)⁾⁾


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