第62話 相性
「すっげ~空飛ぶ魔物だ!」
「うわあ~格好いいね!」
グリフォンのエリオンに乗ってアルテリアのいる屋敷へ飛んでいくと、そこにいた子供たちが騒いでいる。グリフォンを見たことがないのだろう。
クリムゾンドラゴンの討伐へ行くことは伝えてあり、アルテリアを連れて現地へと向かう。騎士団はすでに現地へと向かっているので、我らはグリフォンに乗って騎士団と合流する。グリフォンならばここから半日もかからず現地へと到着できるであろう。
「気を付けてね、アルテリア」
「お姉ちゃん、気を付けて」
「おう、行ってくるぜ!」
修道女や子供たちの見送りを受けて、アルテリアがやってきた。騎士団への入団試験を受けるということもあってやる気は十分なようだな。
「ゼノン様、騎士団へ入るためのチャンスをくれて感謝する! 俺は絶対に騎士団へ入ってみせるからな!」
「ふむ、頑張るといい。だが、無理はするなよ」
我にとっては別にアルテリアが騎士団に入れずとも別に構わぬがな。
「さて、アルテリアはグリフォンには乗れるのか?」
「……いや、この魔物を見るのも初めてだぜ」
「そうであろうな。騎士団でもグリフォンを導入したのでいずれは騎乗する訓練があるかもしれぬ」
予想通りの答えが返ってきた。人族には馬に乗れるものは多少いてもグリフォンに乗れる者はそういない。以前よりルーカスと副団長から打診のあった騎士団へのグリフォンの導入はすでに行われている。今は騎乗の訓練を行っているので、もうすぐ実際に使われるだろう。
前領主のダリアスは騎士団に力を持たせることを嫌っていたようだが、馬の何倍も早くて便利だ。
「それでは我の後ろへ乗るといい」
「……っ!? ゼ、ゼノン様、それでしたらそのメスブタは私のグリフォンの後ろへ乗せますので!」
「誰がメスブタだ、こら!」
「いや、ミラは荷物の方を頼むぞ」
「……はい」
ミラがしぶしぶながらガルオンへまたがる。
さすがにこれだけ仲の悪いミラとアルテリアを同じグリフォンへは乗せられぬだろうに……。
ちなみに今回セレネは屋敷で留守番をしている。というのも魔龍族であるセレネに対してクリムゾンドラゴンが過剰に反応してしまう可能性があるからだ。四天王のザルファードの時はよほど強大なドラゴンでなければ即座に逃げ出してしまったからな。
「そ、それじゃあ失礼するぜ」
エリオンにまたがり、手綱を取った我の後ろへとアルテリアが乗る。
少なくとも我のことに感謝しているようだし、後ろから刺されるようなことはないだろう。まあ、我の前世が魔王であると知ったらこの者がどういう行動をとるのかは分からぬがな。
「……思っていたよりも身体が大きいんだな」
「ふむ、我も初めて乗った時はそう思ったものだ。名はエリオンだ、立派なグリフォンであろう?」
「そそ、そうだな! うん、でっけえ背中だぜ!」
「キィ!」
「……ぐぬぬぬ」
エリオンもアルテリアに褒められて嬉しそうである。思えばエリオンとも長い付き合いとなったものだ。
……ガルオンの上ではミラがアルテリアを睨んでいる。やはりこの二人の仲はあまりよくないようだな。
「ゼノン様、こちらです!」
エリオンの背に乗り数時間ほど空を駆け、大きな谷のある場所までやってきた。すでに騎士団の者は到着しており、騎士団長のルーカスが我らを見つけて手を振ってくる。
ミラと共に地面へと降りた。
「お待ちしておりました。この度は領主様の手を煩わせてしまい申し訳ございません。それにしてもやはりグリフォンとはすばらしいですね! 私も早く乗りこなせるようになりたいものですな」
「うむ、空を駆けるのは気持ちが良いものだぞ」
ルーカスの他には20人ほどの騎士がいた。クリムゾンドラゴンを倒すために結構な戦力を集めたようだ。
騎士たちの幾人かはミラの方を見ている。そういえば副団長がミラは騎士団の者に人気があると言っていたか。
「おっと、こちらが騎士団へ入団希望の者ですか?」
「うむ、アルテリアだ」
「ア、アルテリアです。この度は騎士団長様とお会いできてこ、光栄です!」
「ルーカスだ。俺は平民上がりだから敬語はいらん。これまでの経緯は聞いたが同情はしないし、たとえ領主様の紹介であっても実力のある者しか騎士団への入団は認めないからな」
「っ! ああ、望むところだぜ!」
ふむ、ミラとの相性は悪いが、ルーカスとの相性は悪くなさそうだ。
勇者の孫ということや、孤児院の者たちと共に追い出されるようにこの領地まで来たことは副団長あたりに聞いたのであろう。おそらくそのことと入団は関係ないと副団長から釘を刺されているのかもしれぬな。仮にアルテリアが騎士団へ入ることとなっても問題はなさそうだ。




