第61話 クリムゾンドラゴン
「あとの課題としましては元ダスクレア領の騎士団となります。あちらも税収が下がったおかげで領民の生活はよくなっておりますが、人材が少し不足しておりますので、こちらの騎士団の一部を派遣することも考えております。もしも可能でございましたら、数か月に一度ほどこちらの領地と同じように聖女であるミラ様の治療を褒美として与えていただけますと、騎士団の者はより奮起するかと思います」
「ふむ、考えておこう」
「ありがとうございます! 麗しき聖女であるミラ様を一目見るために騎士団へ入った者もいるほど、ミラ様はとても人気があるのですよ」
「そうですか」
どうでもいいといった様子でミラが答える。ミラらしいといえばミラらしい。ふむ、人族の基準で言えば、ミラの容姿は非常に好まれるようだ。
この副団長も随分と有能であるな。実力は少し足りていないかもしれぬが、こういった者が組織にいると円滑に回るものだ。ユルグもそうだったが、そういった人材を無駄に扱うほど愚かなことはない。
「それと別件となりますが、ひとつご相談したいことがございます」
「なんだ?」
「実はカルヴァドス領のとある街付近にクリムゾンドラゴンが住み着いたという報告が上がっております」
「ほう、ドラゴンか」
「はい。クリムゾンドラゴンと言えば、その深紅の鱗はとても強固で魔法に耐性のある素材となり、血や心臓に至るまで希少な素材となる魔物でございますが、とても獰猛で危険な魔物としても知られております。周囲に被害が出ないうちに遠征班を回して討伐したいと思います」
我へクリムゾンドラゴンの説明をしつつ、今後の方針を示す副団長。
「ふむ、それに加えてドラゴンの肉は美味であったな。討伐は許可するゆえ、肉の一部はこちらにも回せ」
「か、かしこまりました。討伐を優先させていただきますが、可能な限り食用の部分を献上できるよう努めます。それにしても、クリムゾンドラゴンと聞いてまず肉を希望されるとは、さすがは領主様ですね!」
ドラゴンの肉は魔物の中でも最上位の味だ。適当に焼くだけの魔族の料理であっても美味に感じるので、人族が料理をすればそれ以上に美味となるだろう。
クリムゾンドラゴン程度であればそれほど大した魔物ではないはずなのだが、人族にとってはそこそこの脅威となるのか?
「……もしかするとクリムゾンドラゴンを倒せれば力のある者として認められるのか?」
「ええ、もちろんでございます。特にドラゴン種を一人で討伐した者にはドラゴンスレイヤ―という称号が与えられるほど名誉なことなのですよ!」
「そうなのか。……ふむ、ちょうどいい。クリムゾンドラゴンを討伐する際には我も同行しよう。その際、騎士団に入りたいという者を一人連れていく。その者が騎士団に入れるほどの実力があるかを見てもらうとしよう。むろん、我からの紹介であっても他の者と同様に実力だけで考えるといい」
ちょうどアルテリアが騎士団に入りたいと言っていたことだし、あの者の実力を見るのにちょうどいい。さすがにドラゴンの相手は厳しいかもしれぬが、我もついていけば問題ないだろう。
「領主様自ら参加していただけるとは光栄でございます。……もしかすると、ゼノン様がこの国へ呼ばれた客人の方でしょうか?」
「そうだ。相変わらず察しが良いな。勇者の孫であるが、多少の実力はあり、騎士団へ入ることを希望している。騎士団としては問題はないか?」
「はい、それについては問題ございません。そもそも団長は平民ですし、私が副団長を務めている時点で家柄や身分などは関係ございませんからね。ゼノン様のおかげで実力重視の雇用となりまして、賄賂や不正を行う者も今ではおりません。本当に感謝しております! ですが、入団に関しましてはその方の実力をしっかりと見極めさせていただきたいと思います」
「うむ、それでいい」
あとはアルテリア次第といったところか。
ユルグやこの者のようにたとえ我相手であっても、しっかりと自分の意見を言えることも組織としては必要なことだ。団長のルーカスと副団長のこの者は相性が良さそうであるな。




