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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第58話 人族のこの前


「まったく、本当になんなのですか、あのメスブタは! 早くアデレア国に送り返してやりたいです!」


 屋敷へと戻ってきたが、まだミラはアルテリアに腹を立てているようだ。


「アルテリアたちが戻りたいと言えばすぐに返すが、そうでなければある程度面倒を見るつもりであるからしばらくは我慢してくれ」


「はい……」


 我がそう言うとしぶしぶながらも頷くミラ。セレネもアルテリアのことをそれほど良く思っていないようなので、先が少し思いやられる。


「……ゼノン様、アルテリア様の様子を見に行っただけなのに、なぜミラ様はあれほどお怒りなのでしょうか?」


 ミラの様子を見てユルグが我にこっそりと耳打ちしてくる。ユルグには向こうの屋敷での詳細までは話していなかったからな。


「……アルテリアが修道女や孤児たちの面倒を見る代わりに我へ身体を差し出す必要があるのか聞いてきた。そんなものはいらぬと一蹴したのだが、それでもなおミラがアルテリアに険悪な様子で突っかかってな……」


「……左様ですか。なるほど、理解しました」


 今の説明だけでユルグは一瞬で理解したらしい。さすが執事として優秀である。


「……そういえばユルグにひとつ聞きたいのだが、人族の大人は女の胸の大きさを気にしたりするのか? ミラに胸が貧相だと言われて、なぜかアルテリアも必要以上にミラを挑発していたな」


「……そうですね、一般的にはないよりもある方がよいという理由で大きな女性の方が好まれる傾向にありかもしれません。もちろんそれは個人の好みにもよりまして、細身の女性や小柄で小さな女性を好む男性もおります」


「……そうか」


 アルテリアの方もミラの胸を駄肉と言っていたし、人族の異性の好みなどはよくわからんな。その者の容姿や体型よりもその者自身のことが大切であると思うのだが……。


「あとはアデレア国の返事待ちではあるが、こちらは問題ないだろう」


「そうですね、すでにあちらの国ではそのような話で進めているようなので、こちらの要求には従うつもりなのでしょう」


 ユルグとの話は終わったので、声の大きさを元へ戻す。


 使者はアデレア国へ帰るが、アルテリアの話ではすでにカルヴァドス領と協力関係にあると国民には伝えているようだし問題はないだろう。もしもアデレア国に同胞である魔族がいるのならば、こちらの要求通りにすぐ引き渡されるはずだ。こちらに引き渡され次第、同胞たちのいるルシアルガの森へ連れて行く。


「それとゼノン様、こちらからご報告なのですが、元ダスクレア領を含めたカルヴァドス領につきまして、ゼノン様が税を下げて不要な税を廃止し、犯罪者をより厳しく処罰するようになったおかげで領民からはかなりの支持を得られております」


「さすがゼノン様です! 領民たちもゼノン様のすばらしさをしっかりと理解しているのですね」


「すごいです!」


 ユルグからの報告によるとこの領地については順調らしい。


 ……というか、適正な税収を設定し、賄賂や金で処罰を免れるような輩を処分しただけなのだが、それで支持を得られるというのはどういうことなのだか。よっぽどこれまではまともな生活ができないほど追い詰められていたのであろうな。


 ふむ、領民たちがある程度まともな生活を送れるようになってきたのであれば、もっと税収を上げてもよいかもしれぬ。これまでは人族から搾り取ろうにも取る物がなかったからな。


「ですがひとつ問題がございまして、最近カルヴァドス領でのすばらしさが周辺の村や街へ広がっていき、付近の領地から人が多く集まってきております」


「むっ、それの何が問題なのだ? 人が集まれば多くのものが集まってくるのではないか?」


 人が集まることは良いことであろう。人が増えた分、物などは集まって仕事は増え、増えた分の食料を補うために新しく田畑が広げられるのは人族も同じではないのか?


「経済的な面で見ればとても良いことです。一時的に食料などが少し足りなくなるかもしれませんが、今の税収であればそれもすぐに収まるでしょう。問題となるのは周囲の領地から人が出ていくので、その領地の領主にとってカルヴァドス領がよく思われないことです」


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