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魔王、極悪国家の領主令息に転生す。~闇魔法で人族を支配するつもりが、名君扱いされる~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第57話 対価


「ふむ? 何をといってもアルテリアに何かをしてもらうつもりはないぞ。以前にも言ったが、我はそなたの祖父である勇者と少し縁があっただけだ。そうだな、あえて言うのならば自らの食い扶持は自分たちで稼げというくらいか」


 確かに我が見たところアルテリアの戦闘能力は普通の人族よりも高いように見えるが、アルテリアを我の領地へ連れてきたのは勇者への義理であり、無理に部下としてその力を使うつもりはない。


 あの国にいたころは魔物を狩って孤児院の生計を立てていたようだし、ここでもそれをやれば自ずとこの領地のためになるであろう。人や田畑を害する魔物を狩ることは領地のためにもなる。有能な人材であることは間違いないだろうし、あの国で使い潰されるのも勿体ないからな。


「こんな立派な屋敷まで用意してくれたってのにそんだけでいいのかよ?」


「別に構わぬぞ。どちらにせよこの屋敷は余っていたものであるしな」


 どうせこの屋敷は我に反する貴族を取り潰した時に得た物だ。そいつらの財産はすべて没収したことだし、使わずにいれば屋敷を維持する費用だけがかかることだし、有意義に使わねばな。


「……ほ、本当に俺の身体を差し出したりしなくてもいいんだな?」


「………………」


 なぜかアルテリアが顔を赤らめながら、そんなことを言う。


 おそらく身体を差し出すとはそういう意味で言っていると思うのだが、いったいこの者は突然何を言っているのだ?


「……むしろなぜそのような話になるのか、我には理解ができぬのだが?」


「ま、前に貴族のじじいどもが言ってたんだ! 俺が身体を差し出せば孤児院のやつらの面倒を見てくれるってよ。俺はてっきりあんたがそういう目的で俺を呼んだのかと思っていた」


 そういえばこのカルヴァドス領の領主であったダレアスも初夜税などといって若い女を侍らしていたな。どうやら人族の貴族はみなそのようなくだらないことを考えているのかもしれない。


 この身体の記憶によるとアルテリアのような容姿の整った女性は人族の男に好まれるらしいが、我はアルテリアにそのような感情は持ち合わせていない。まあ確かにそのような貴族ばかりであれば、わざわざアルテリアを修道女や子供ごと他国まで連れてくるのはそういった目的であると勘違いしても仕方のないことか。


「……黙って聞いていればなんなのですか、このメスブタは? ゼノン様があなたのようなみすぼらしいメスブタなどを相手にするわけがないでしょう! 思い上がるのも甚だしいですね!」


「なっ、誰がメスブタだ!」


 横にいたミラが割り込んできた。


「あなたのことですよ。勇者の孫ということでゼノン様が慈悲を与えられているだけなのに勘違いしないでほしいものです。胸が貧相なだけでなく、頭まで貧相なのですね?」


「て、てめえ!」


 なぜか喧嘩腰になって詰め寄るミラに対してアルテリアも椅子から立ち上がる。


「ゼノン様には私がおります! その証拠に初めてのお相手は私にしてくれると約束してくれました!」


 ……いや、別に約束をしたわけではないぞ。人族の繁殖行為には興味はあったから、この身体が成熟したら試してみてもよいかもしれぬと言っただけなのだが……。


「はんっ、そんだけ近くにいてまだ相手にされてないのかよ。そんな駄肉を胸にぶら下げているあんたの魅力がよっぽどねえんだろうな?」


「……どうやら死にたいようですね」


「へっ、やる気かよ!」


「待て待て待て! 2人とも落ち着け!」


 いきなり魔力を練り始めるミラと、剣に手をかけるアルテリア。


 しかもミラからは本気の殺意を感じる。なぜ唐突にそうなるのだ……。


「我はアルテリアにそのようなことを求めておらぬ。とりあえずしばらくは他の者たちと自由に過ごせ。ミラ、帰るぞ」


「………………はい」


 ミラとアルテリアの間に割り込む。我がそう言うと、ミラは一応気を静めたようで、我の言う通りに部屋から出る。


 本当に危ないところであった。始めからミラはアルテリアのことをそれほど良く思っていなかったし、2人の相性はあまりよくないのかもしれない。


「ゼ、ゼノン様! も、もし私にもご奉仕できることがありましたら、なんなりとお申し付けください!」


「……そのような予定はないから安心するといい」


「ざ、残念です……」


 2人がくだらないことを言うからセレネまでそんなことを言い始めた。まったく、セレネの教育にも悪い。


 本当に先が思いやられるぞ……。


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