↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/7

第4章 道具と友人


「利用し合うことは、最も正直な愛の形である。」——アオイ

【前回のあらすじ】 聖女アオイは、相談に来た女性の本音を、言葉になる前に言い当てる。頭に流れ込む、無数の心の声。それを彼女は「神のざわめき」と呼んだ。

夜更け、キョウカはアオイの部屋を訪ねた。手には、薄いファイルを抱えている。

「今日の面談の方々の資料です。家族構成、職歴、SNSの履歴。目を通しておいてください」

アオイは、差し出されたファイルを見なかった。

「いらないわ。聞こえるもの」

「保険です。本物のあなたを、私は信じています。でも、信者は疑う生き物ですから」

キョウカは、アオイの前に膝をついた。

「あなたは本物。だから私は、嘘をつけるんです。あなたがいてくれるから、私の作り話にも魂が宿る」

アオイは小さく笑った。

「キョウカさんは、私を道具だと思っているのね」

「はい」

キョウカは迷わず答えた。

「そして私は、あなたを一番大切にしています。道具としても、友人としても」

矛盾を矛盾のまま抱えられるのが、藤堂キョウカという人間だった。アオイはその歪さを、嫌いではなかった。

「利用し合うのは、いちばん正直な愛の形かもしれないわね」

アオイは目を閉じたまま、そう言った。

「互いに、嘘をつかなくて済むもの」

「あなたの嘘も、私には全部聞こえているのよ」

アオイは目を閉じたまま言った。

「あなたの中には、ずっと同じ人の名前が流れている。リオさんの前でだけ、あなたの声は震える」

キョウカの呼吸が止まった。

「……やめてください」

「責めてなんかいないわ。私にも、あなたが必要なの。あなたが作る舞台がなければ、私の超越は誰にも見えないもの」

二人は、同じ部屋で、互いの利用価値を測り合っていた。それは奇妙なほど静かな、共依存だった。キョウカはアオイの力を借りなければ神輿を担げず、アオイはキョウカの野心を借りなければ、最期の舞台を得られない。

キョウカはファイルを置き、立ち上がった。

「いつか、この関係が壊れる日が来ても——」

「来るわ」

アオイが遮った。

「それも、ちゃんと聞こえているから」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。