↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけ毎日無料10連!~ハズレ職《ガチャ師》は、世界で唯一ガチャが終わらない~  作者: 春野ケイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/65

第63話 竜との再戦・後編

 竜の赤い瞳が、レオンを捉えていた。


「フェン、走れ!」


「ワウッ!」


 フェンが雪を蹴る。


 直後、真上から灼熱の炎が降り注いだ。


 黒い岩が溶け、雪が蒸発し、谷全体が陽炎に揺れる。


「ぐっ……!」


 風走りの靴の加速で、辛うじて直撃を避けた。


 それでも、背中を焼く熱は容赦なく肌を刺す。


 竜は翼を畳み、急降下してきた。


 巨大な爪が、さっきまでいた岩場を抉る。


「速い……!」


 レオンは岩陰に転がり込んだ。


 杭は、あと二本。


 三本目は谷の北側。四本目は、竜の巣の奥だ。


 どちらも、竜が暴れ回る空の下を駆け抜けなければ辿り着けない。


 岩陰から、北側の杭を覗き見る。


 観察眼を向けた瞬間、レオンは眉をひそめた。


────────────────


【解析】


呪縛の杭(残り二本)


呪いが集中し、黒い霧の膜に覆われている


星の力だけでは、膜に弾かれる


穢れを払う力が必要


────────────────


「……弾かれる?」


 一本目も二本目も、手甲を押し当てるだけで砕けた。


 けれど、杭が減るほど、残った杭に呪いが集まっているらしい。


 このまま手甲を叩きつけても、膜に阻まれて終わりだ。


「穢れを払う力……。」


 真っ先に浮かんだのは、リリアの顔だった。


 聖魔導士なら、浄化の魔法が使えるはずだ。


 けれど、リリアは尾根の上にいる。杭に触れられる距離まで、彼女を連れてくる余裕はない。


「どうする……。」


 息が荒い。


 観察眼は、竜の動きを細かく映している。けれど、動きが読めても、体が追いつかなければ意味がない。


 その時、ふと思い出した。


 今日の無料10連は、まだ引いていない。


「……こんな時に頼るのも、変な話だけどな。」


 レオンは岩陰に身を寄せ、画面を開いた。


────────────────


無料10連


READY


────────────────


「一瞬で終わらせる。フェン、守ってくれ。」


「ワウ!」


 フェンがレオンの前に立ちはだかり、頭上を睨んだ。


 白い空間に、黒い本が浮かぶ。


 夜空に十本の光の柱が立ち上る。


 白、白、白、白、白、白、白、白、金、金。


「金が二つ……!」


 光が収まり、カードが姿を現す。


────────────────


【NEW】


《耐熱の外套》(SR)


炎や熱波を和らげる、魔力を帯びた外套。


────────────────


「これは助かる……!」


 レオンは外套を羽織った。


 体を包んでいた熱が、すっと引いていく。


 もう一枚のカードに目を移して、息が止まった。


────────────────


【NEW】


《スキルカード:浄化の光》(SR)


魔力に絡みついた呪いや穢れを、光で洗い流す。


由来職業:聖魔導士


────────────────


「由来……職業?」


 これまでのスキルカードに、そんな項目はなかった。


 観察眼が★3になって、カードの出自まで見えるようになったのだろう。


 それよりも。


「聖魔導士って……リリアの職業だ。」


 頭の中で、いくつかの断片がつながりかけた。


 けれど、竜の咆哮が、思考を断ち切った。


「考えるのは、後だ!」


 カードが光の粒になって、体の中へ溶けていく。


────────────────


【スキル習得】


《浄化の光》 ★1


────────────────


 体の奥に、温かな光の感覚が灯った。


 使い方が、そのまま頭に流れ込んでくる。


 レオンは、岩陰から飛び出した。


 竜が炎を吐く。


 外套が熱を受け止めた。完全には防げないが、それでも動ける。


 三本目の杭は、すぐそこだった。


「頼む……効いてくれ!」


 杭に向けて、手のひらを突き出す。


「浄化の光!」


 柔らかな白い光が、掌から溢れた。


 杭を覆う黒い霧の膜が、氷が溶けるように薄れていく。


 露わになった黒い結晶へ、右手の手甲を叩きつけた。


 青い光が走る。


 杭は音もなく砕け散った。


「やった……!」


 その瞬間、竜が苦悶の声を上げ、空中でぐらりと傾いた。


◇◆◇


 尾根の上では、リリアが息を呑んでいた。


「杭が、三本目……!」


「ホゥ!」


 ミラが翼を広げて警告する。


 竜が、進路を変えた。


 谷の底ではなく、尾根のほうへ、真っ直ぐ向かってくる。


「こっちに来る!?」


 リリアは杖を構えた。


 赤い瞳が、真っ直ぐに自分を捉えている。


 恐怖で足が竦みそうになった。


 それでも、逃げなかった。


「ウィンドウォール!」


 風の壁が、尾根に立ち上がる。


 炎が壁に叩きつけられた。


 轟音。熱風。


 リリアの体が、後ろへ吹き飛ばされた。


「きゃ……っ!」


 岩に背中を打ちつける。


 息が詰まった。


 それでも、杖は離さなかった。


 竜が、もう一度、大きく息を吸い込む。


「リリア!」


 谷の底から、レオンの叫びが響いた。


 その時、東の斜面から、黒い影が跳び上がった。


「はああああッ!」


 アレスだった。


 魔物の群れを抜けてきたのだろう。全身に火傷と傷を負いながら、竜の頭上へ跳躍する。


 大剣が、竜の翼の付け根に叩き込まれた。


 竜が体勢を崩す。


「今だ、リリア!」


「うん! ウィンドランス!」


 リリアの風の槍が、同じ場所を貫いた。


 翼の付け根が、びくりと揺れる。


 巨体が、ゆっくりと傾いていった。


「もう一押し……!」


 レオンは、氷晶の短剣を抜いた。


 高度を落とした竜の後ろ脚へ、斬撃を叩き込む。


 冷気が、竜の脚を這い上がっていった。


 動きが鈍る。


「グオオオオッ!」


 竜が、地響きとともに地面に叩きつけられた。


 岩場が割れ、雪煙が舞い上がる。


 竜は地面に伏したまま、藻掻いた。


「降りたぞ!」


 アレスが、竜の翼を押さえつける。


「レオン! 残りは!」


「四本目! あっちだ!」


 レオンは、竜の巣の奥を指差した。


 竜の巨体の向こう、岩場の最奥に、最後の杭がそびえている。


 黒い霧の膜が、さらに濃くなっていた。


「そこまで、道を作る!」


「お願い!」


 リリアが、尾根から滑り降りてきた。


 息が荒く、頬には煤がついている。


 けれど、杖を握る手は、しっかりと前を向いていた。


「ライトランス!」


 光の槍が、竜の巨体の脇を駆け抜け、行く手の魔物を貫く。


 竜が咆哮した。


「行け、レオン!」


 アレスの叫びを背に、レオンは走った。


 竜の尾が振り下ろされる。


 フェンが飛び込み、尾に噛みついて軌道を逸らした。


「ワウッ!」


 道が開く。


 レオンは、全力で駆け抜けた。


 四本目の杭が、目の前にある。


「これで……最後だ!」


 左手の浄化の光で、膜を剥ぐ。


 右手の手甲を、露わになった結晶へ叩きつける。


「はああああっ!」


 黒い結晶に、強烈な光が走った。


 亀裂が、杭全体に広がる。


 そして、轟音とともに砕け散った。


────────────────


【黒い杭の破壊(二本)】


+16Pt


【今回の獲得】


+16Pt


【運命ポイント】


69Pt → 85Pt


────────────────


 四本の杭が、全て壊れた。


 竜の首の鎖が、ぎしぎしと軋む。


 黒い糸が、一本、また一本と千切れていった。


「あとは……核だ!」


 レオンは竜の元へ駆け戻った。


 喉元の傷の奥で、黒い結晶が脈打っている。


 拘束の核。


 竜の瞳が、レオンを見た。


 赤く濁っていた瞳が、少しずつ澄んでいく。


「俺は、お前を解放しに来た。」


 レオンは、ゆっくりと手を伸ばした。


「少しだけ、痛むかもしれない。」


 竜は動かなかった。


 低く、喉を鳴らしただけだった。


 その巨大な瞳が、静かに、レオンの手を受け入れていた。


「いくぞ……!」


 手甲を、核に押し当てる。


 同時に、浄化の光を重ねた。


 白と青の光が、竜の喉元で弾ける。


 黒い結晶が、悲鳴のような音を立てて砕け散った。


 鎖が、完全に消える。


 谷を満たしていた重い気配が、霧のように晴れていった。


◇◆◇


 静寂が戻ってきた。


 竜は、ゆっくりと巨体を起こした。


 赤かった瞳は、深く、静かな金色に変わっている。


 レオンたちを一人ずつ見渡し、それから、長い首をゆっくりと垂れた。


「……礼を、言う。」


 低く、地鳴りのような声が谷に響いた。


「星を継ぐ者よ。」


「喋った……。」


 リリアが息を呑む。


「我は、長き時の中で、縛られていた。思い出せぬほどの、長き時を。」


 竜の瞳が、ゆっくりと瞬く。


「お前の手甲の光を、覚えている。かつて、同じ光を持つ者たちが、我をここに連れてきた。」


「古代の、星を継ぐ者たち……。」


 レオンは呟いた。


「そうだ。彼らは、我に『扉の番』を頼んだ。」


「扉の……番。」


 竜の瞳が、遠い西の空を見た。


「影の主は、その番を奪い、扉を欲した。我を鎖で縛り、意のままに動く獣に変えた。」


 竜は、そこで言葉を切った。


 焼け落ちた谷の彼方、遠い北の集落の方角へ、金色の瞳が向けられる。


「……我の炎が、多くを焼いた。それは、消えぬ。」


「あなたのせいじゃ、ない。」


 リリアが、小さく首を振った。


「縛られていたんでしょう?」


「それでも、焼いたのは我だ。」


 竜は静かに言った。


 アレスが、何か言いかけて、口を閉じた。


 拳を握ったまま、黙って竜を見つめている。


「西だ。扉は、西にある。」


 竜は、レオンを見た。


「影の主は、お前を待っている。だが、お前ひとりでは行くな。……星の力は、仲間と共にあってこそ、環を成す。」


「……分かった。」


「少しだけ、眠らせてくれ。話の続きは、目覚めてから。」


 金色の瞳が、静かに閉じる。


 大きな胸が、穏やかに上下し始めた。


「……終わったな。」


 アレスが、大剣を地面に突き立て、その場にどさりと座り込んだ。


 全身が火傷だらけで、肩で息をしている。


「アレスさん! すぐ治しますから!」


 リリアが駆け寄り、回復魔法をかけ始めた。


「ホゥ。」


 ミラが、レオンの肩に降りてくる。


 フェンが、足元にぐったりと座り込んだ。


 レオンは竜を見上げた。


 その寝顔は、長い悪夢から解き放たれた子供のように、穏やかだった。


 その時、目の前に、見慣れた表示が浮かぶ。


────────────────


【古の竜の解放】


+20Pt


【今回の獲得】


+20Pt


【運命ポイント】


85Pt → 105Pt


────────────────


「……105。」


 レオンは、小さく息を呑んだ。


 100を超えた。SSR確定ガチャが、また使えるようになったのだ。


 けれど、今は、それよりも気になることがあった。


◇◆◇


 しばらくして、傷の手当てを終えたリリアが、レオンの隣に腰を下ろした。


 アレスは少し離れた岩に背を預け、目を閉じている。眠っているのか、考えているのか、分からない。


「ねえ、レオン。」


 リリアが声を落とした。


「さっきの光、私の浄化魔法に、よく似てた。」


「……ああ。似てて当然だ。」


 レオンは右手を開いた。


 掌には、まだ温かな光の余韻が残っている。


「あれは、ガチャから出たスキルだ。由来職業は、聖魔導士。……リリアの、職業だ。」


「え……?」


 リリアの目が、丸くなった。


「私の職業の、スキルを? レオンが?」


「ああ。観察眼が★3になって、カードの出どころまで見えるようになった。だから、間違いない。」


 レオンは、そこで言葉を切った。


 頭の中で、断片が一つずつ噛み合っていく。


 観察眼、気配察知、耐寒、隠密。


 これまで引いたスキルは、誰にでも使えそうなものばかりだった。


 そこに今日、聖魔導士の力が混ざった。


 どの職業のスキルなのかなんて、これまでは気にしたこともなかった。


「ガチャ師って、さ。」


 レオンは、ゆっくりと口を開いた。


「剣士の技も、魔導士の魔法も、聖職者の祈りも、全部、引ける職業なのか?」


「それって……。」


 リリアが息を呑む。


「石版にあった。『星を継ぐ者は、すべての力の源に触れる』って。」


「うん……。」


「影も言ってた。お前は、その意味をまだ理解していない、って。」


「じゃあ、それが……。」


「ああ。」


 レオンは、自分の掌を見つめた。


「外れ職なんかじゃ、ない。……逆かもしれない。」


 離れた岩の上で、アレスが、ゆっくりと目を開けた。


「……やっと、気づいたか。」


 低い声が、風に混じって届く。


「俺は、ずっとそう思っていた。」


 レオンは、苦笑するしかなかった。


「先に言ってくれよ。」


「確証がなかった。お前自身が、気づくべきことだった。」


 アレスは、それだけ言って、また目を閉じた。


 リリアが、くすりと笑う。


 レオンは、空を見上げた。


 雲の切れ間から、朝の光が差し込んでいる。


 その光の中で、竜の黒い鱗が、うっすらと青く輝いていた。


 全職業のスキルを引ける。


 その意味を、すべて理解するには、まだ時間が足りない。


 けれど、ひとつだけ、確かなことがあった。


「……ガチャは、まだまだ終わらないな。」


 レオンは、小さく呟いた。


 その口元は、自然と、笑みの形になっていた。


(第64話へ続く)


【あとがき】


第63話を読んでいただき、ありがとうございました!


四本の杭を破壊し、ついに竜を解放しました。土壇場で引いたスキルカードは、リリアと同じ聖魔導士の《浄化の光》。ここでレオン自身が、「ガチャ師はあらゆる職業のスキルを引ける」可能性に気づきます。


運命ポイントは69Ptから105Pt。再びSSR確定ガチャが使える状態になりました。


次回、第64話は「最強の証明」です。お楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。