↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけ毎日無料10連!~ハズレ職《ガチャ師》は、世界で唯一ガチャが終わらない~  作者: 春野ケイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/60

第57話 四度目の虹

 崩れ落ちた番人の氷が、光の粒となって天井へ昇っていく。


 その余韻の残る広間の隅で、レオンは足を止めていた。


 目の前に浮かぶ、一つの選択肢。


────────────────


SSR確定ガチャ


READY


────────────────


 アレスは入口の方へ背を向け、見張りに立っている。


 リリアは、レオンの隣で静かに待っていた。


「……行くぞ。」


「うん。」


 レオンは画面に触れた。


 白い空間に、これまでで最も大きな黒い本が浮かぶ。


 夜空に十本の光の柱が立ち上り、そのすべてが、虹色に染まっていく。


 広間全体が、まばゆい光に包まれた。


「わあ……。」


 リリアが、思わず目を細める。


 入口の方で、アレスが肩をぴくりと揺らした。


 背を向けたままだが、広間に溢れた光には、気づいているはずだった。


 やがて、光の中心で、小さな何かが、ふわりと羽ばたいた。


 それは、手のひらに収まるほどの、小さな梟だった。


 ふわふわとした白い羽毛には、星屑のような金色の斑点が散っていて、大きな丸い瞳は、夜空のような深い藍色をしている。


────────────────


【NEW】


《星梟(ほしふくろう)》(SSR)


召喚獣・星霊系・幼体


星の紋章の気配を読み取り、瞳に星図を映し出す。


星を継ぐ者を追う存在が近づくと、羽根の先が赤く染まって警告する。


────────────────


「ホゥ。」


 小さな梟は、レオンの肩にちょこんと止まり、首をかしげた。


「召喚獣……! ガチャから、また仲間が出たんだ!」


 リリアが目を輝かせる。


「フェンの時以来だな。」


 レオンは肩の上の小さな重みに、そっと指を伸ばした。


 星梟は、くすぐったそうに目を細めて、指先に頭をすり寄せてくる。


────────────────


図鑑更新


《召喚獣》


「星梟・幼体」が新規登録されました


────────────────


「名前、つけてあげなきゃ。」


「そうだな……。」


 レオンは少し考えてから言った。


「ミラ、でどうだ。」


「ホゥ!」


 梟は、気に入ったと言わんばかりに、翼を広げた。


「ミラ、よろしくね。」


 リリアが微笑みながら、指先でそっと羽毛を撫でる。


 足元で、フェンが鼻先を近づけた。


「ワウ……?」


 フェンとミラが、鼻先と嘴を、ちょんと触れ合わせる。


 そのまま、ミラはひょいとフェンの頭の上に飛び移って、ちょこんと座り込んだ。


「ワウッ!?」


 フェンは驚いたように固まったが、すぐに、まんざらでもなさそうに尻尾を振り始める。


「仲良くやれそうだね。」


「ああ。」


 レオンは笑った。


 その時、ミラの大きな瞳が、ふっと淡い金色に輝いた。


 空中に、光の粒が舞い上がり、手のひらほどの小さな星図を描き出す。


「……星図?」


 光の中心で、一つの銀の点が、ひときわ強く瞬いた。


「ここだ。氷瀑の祠。」


 その周りに、他の銀の点が、一つ、また一つと浮かび上がっていく。


 忘れられた洞窟。旧採掘場。廃教会。石橋。そして、星の中枢。


 これまで訪れた遺構が、星図の中で、一つの形を描き始めていた。


 そして、最後に。


 星図の西の端、遠く離れた場所に、まだ輪郭の定まらない、かすかな光が灯った。


「……西。」


「エヴァンスさんが言っていた、見つかってない点……!」


 リリアが息を呑む。


「ああ。本当にあるんだ。まだ、誰も見つけてない場所が。」


 レオンの鼓動が、速くなった。


 図鑑の空白。そして、星の紋章が描く、巨大な図形の最後の頂点。


 その位置が、今、目の前の光の中で、はっきりと示されている。


 その時、星図の北東の端で、赤い点が、ちかりと瞬いた。


 銀の点とは違う、ひどく不穏な明滅。


 同時に、ミラの羽根の先が、わずかに赤く染まる。


「ホゥ……。」


 ミラが、低く、警戒するように鳴いた。


「……あっちが、竜の巣か。」


「それに、影も。」


 赤い点は、瞬くたびに、ほんの少しずつ、こちらの方へ寄ってきているように見えた。


 まだ、遠い。


 だが、確実に、こちらへ向かっている気配があった。


「アレスに、見せておこう。」


 レオンはミラを肩に乗せ、入口へ向かった。


◇◆◇


「……できたのか。」


 戻ってきたレオンを見て、アレスが振り返る。


 その視線が、レオンの肩の上で止まった。


「……梟?」


「ああ。ガチャから出た。ミラって名前にした。」


「ホゥ。」


 ミラが小さく鳴いて、首をかしげる。


 アレスはしばらく、無言でその小さな梟を見つめていた。


「……また、増えたな。」


「また、増えた。」


 レオンは悪びれずに頷く。


「星の紋章の気配を読んで、星図を見せてくれる。それに、追ってくる存在が近づくと、羽根の先が赤くなる。」


 レオンは、ミラが映した星図の内容を、手短に説明した。


「今は、北東の山の向こうだ。まだ遠いけど、少しずつ近づいてる。」


「つまり、影はお前を探して、こっちへ来てるってことか。」


「たぶん。」


「そうか。」


 アレスは短く息を吐いた。


「便利な相棒だな。居場所が分かれば、先に備えられる。」


「それに、西にも反応があった。」


「西?」


「エヴァンスさんが探してた、最後の点だ。」


 アレスの目が、わずかに見開かれる。


「……それは、大きな収穫だな。」


「ああ。」


 それから、アレスは、少し間を置いて言った。


「お前のそのガチャは、本当に、俺の想像の斜め上ばかり出してくるな。」


「それは、俺も思ってる。」


 レオンは苦笑した。


「でも、毎回楽しみなんだよ。何が出るか分からないから。」


「……そうだろうな。」


 アレスの口元が、わずかに緩んだ。


 その時、レオンの前に、見慣れた表示が浮かぶ。


────────────────


【運命ポイント】


110Pt → 10Pt


SSR確定ガチャを使用しました(消費 100Pt)


────────────────


(10は、残るのか。)


 レオンは小さく笑った。


 また、ここから積み上げていく。それも、悪くない。


◇◆◇


 広間を出る前に、レオンは台座の上の氷の石版を回収した。


 表面には、薄く、細かい文字がびっしりと刻まれている。


 片眼鏡を向けてみたが、解読には時間がかかりそうだった。


「小屋に戻ったら、ゆっくり読もう。」


「ああ。」


 三人と二匹は、氷の回廊を引き返した。


 行きは慎重に歩いた氷の床も、帰りは、光る紋様を辿るだけで済んだ。


 凍った滝の外に出ると、空は、夕焼けに染まり始めていた。


 岩場には、ダンカンが、まだ座っていた。


「……戻ったか。」


 老人は、ゆっくりと立ち上がった。


「待っていてくださったんですか。」


「決まりを、少しだけ破っただけだ。」


 ダンカンは、ぶっきらぼうに言った。


「生きて戻ったなら、それでいい。」


 その目尻が、ほんの少しだけ、緩んでいた。


 それから、老人は、レオンの肩の上の小さな梟に気づいた。


「……そいつは?」


「ミラです。さっき、仲間になりました。」


「ホゥ。」


「梟か。この山じゃ、夜に鳴くのを聞くだけで縁起がいいと言うんだ。」


 ダンカンは、ぶっきらぼうに、けれどどこか嬉しそうに言った。


◇◆◇


 小屋に戻ると、ダンカンが、鍋で煮込んだ肉の汁を振る舞ってくれた。


 湯気の立つ椀を両手で包み、冷え切った体を温める。


「うまい……。」


「山の獣の汁だ。体が温まる。」


 ダンカンは、囲炉裏の火を見つめたまま、ぽつりと言った。


「爺さんがな、よく言っとった。あの滝の裏には、『星の守り』がいると。」


「星の守り……。」


「悪いものじゃない。ただ、触れる資格のない者が近づけば、容赦はしない。そう言っとった。」


 ダンカンは、椀の中を見つめる。


「俺は、ずっと、ただの昔話だと思っとった。」


「実際にいましたよ。氷の、大きな番人が。」


 リリアが静かに答える。


「そうか。……本当に、いたのか。」


 ダンカンは、小さく息を吐いた。


「なら、お前たちは、その資格を認められたってことだな。」


「そうなのかな……。」


 レオンは椀を見つめた。


「認められたというより、通してもらった、という感じです。」


「それで、十分だ。」


 老人は、わずかに口の端を緩めた。


「爺さんも、喜ぶだろう。」


 隣で、アレスが黙って椀を傾けている。


 その表情は、いつもより少しだけ、穏やかに見えた。


◇◆◇


 その夜、小屋の片隅で、レオンは静かに画面を開いた。


────────────────


無料10連


READY


────────────────


 白い空間に、黒い本が浮かぶ。


 夜空に十本の光の柱が立ち上る。


 白、白、白、白、青、白、白、白、白、白。


「Rが一つ。」


 光が収まり、カードが姿を現す。


────────────────


【NEW】


《スキルカード:耐寒》(R)


寒さに強くなる。


────────────────


────────────────


【スキル習得】


《耐寒》 ★1


────────────────


 カードが光の粒になって、体の中へ溶けていく。


 途端に、体の芯に残っていた冷えが、すっと引いていくのが分かった。


「……これ、今日の戦いのあとで出るなんて、ずるいな。」


 図鑑の《スキル》の欄に、新しい名前が増えている。


 観察眼、気配察知、そして耐寒。


 スキルが増えていくのは、素直に楽しい。


 残りは、食料や薬草などの補充品。


 派手な当たりはないが、それでも十分だった。


 レオンは、囲炉裏の火の前で、フェンの背に丸くなって眠るミラを、そっと眺めた。


 ミラの羽根は、白く、静かに上下している。


 その先が、ほんのわずかだけ、赤みを帯びていた。


「……来るなら、来い。」


 レオンは、小さく呟いた。


 ミラがいれば、先手を取れる。


 そして、西の最後の点が、この手の中にある。


 囲炉裏の火が、ぱちりと弾けた。


 窓の外では、夜の雪が、静かに降り続けていた。


(第58話へ続く)


【あとがき】


第57話を読んでいただき、ありがとうございました!


四度目のSSR確定ガチャで出たのは、なんと新たな召喚獣・星梟のミラ。瞳に映した星図で西の最後の点を示し、影が近づくと羽根の先が赤く染まって警告してくれます。


運命ポイントは110Ptから10Pt(100Pt消費)に。夜の無料10連では、スキル《耐寒》も習得しました。


次回、第58話もお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。