第57話 四度目の虹
崩れ落ちた番人の氷が、光の粒となって天井へ昇っていく。
その余韻の残る広間の隅で、レオンは足を止めていた。
目の前に浮かぶ、一つの選択肢。
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SSR確定ガチャ
READY
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アレスは入口の方へ背を向け、見張りに立っている。
リリアは、レオンの隣で静かに待っていた。
「……行くぞ。」
「うん。」
レオンは画面に触れた。
白い空間に、これまでで最も大きな黒い本が浮かぶ。
夜空に十本の光の柱が立ち上り、そのすべてが、虹色に染まっていく。
広間全体が、まばゆい光に包まれた。
「わあ……。」
リリアが、思わず目を細める。
入口の方で、アレスが肩をぴくりと揺らした。
背を向けたままだが、広間に溢れた光には、気づいているはずだった。
やがて、光の中心で、小さな何かが、ふわりと羽ばたいた。
それは、手のひらに収まるほどの、小さな梟だった。
ふわふわとした白い羽毛には、星屑のような金色の斑点が散っていて、大きな丸い瞳は、夜空のような深い藍色をしている。
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【NEW】
《星梟》(SSR)
召喚獣・星霊系・幼体
星の紋章の気配を読み取り、瞳に星図を映し出す。
星を継ぐ者を追う存在が近づくと、羽根の先が赤く染まって警告する。
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「ホゥ。」
小さな梟は、レオンの肩にちょこんと止まり、首をかしげた。
「召喚獣……! ガチャから、また仲間が出たんだ!」
リリアが目を輝かせる。
「フェンの時以来だな。」
レオンは肩の上の小さな重みに、そっと指を伸ばした。
星梟は、くすぐったそうに目を細めて、指先に頭をすり寄せてくる。
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図鑑更新
《召喚獣》
「星梟・幼体」が新規登録されました
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「名前、つけてあげなきゃ。」
「そうだな……。」
レオンは少し考えてから言った。
「ミラ、でどうだ。」
「ホゥ!」
梟は、気に入ったと言わんばかりに、翼を広げた。
「ミラ、よろしくね。」
リリアが微笑みながら、指先でそっと羽毛を撫でる。
足元で、フェンが鼻先を近づけた。
「ワウ……?」
フェンとミラが、鼻先と嘴を、ちょんと触れ合わせる。
そのまま、ミラはひょいとフェンの頭の上に飛び移って、ちょこんと座り込んだ。
「ワウッ!?」
フェンは驚いたように固まったが、すぐに、まんざらでもなさそうに尻尾を振り始める。
「仲良くやれそうだね。」
「ああ。」
レオンは笑った。
その時、ミラの大きな瞳が、ふっと淡い金色に輝いた。
空中に、光の粒が舞い上がり、手のひらほどの小さな星図を描き出す。
「……星図?」
光の中心で、一つの銀の点が、ひときわ強く瞬いた。
「ここだ。氷瀑の祠。」
その周りに、他の銀の点が、一つ、また一つと浮かび上がっていく。
忘れられた洞窟。旧採掘場。廃教会。石橋。そして、星の中枢。
これまで訪れた遺構が、星図の中で、一つの形を描き始めていた。
そして、最後に。
星図の西の端、遠く離れた場所に、まだ輪郭の定まらない、かすかな光が灯った。
「……西。」
「エヴァンスさんが言っていた、見つかってない点……!」
リリアが息を呑む。
「ああ。本当にあるんだ。まだ、誰も見つけてない場所が。」
レオンの鼓動が、速くなった。
図鑑の空白。そして、星の紋章が描く、巨大な図形の最後の頂点。
その位置が、今、目の前の光の中で、はっきりと示されている。
その時、星図の北東の端で、赤い点が、ちかりと瞬いた。
銀の点とは違う、ひどく不穏な明滅。
同時に、ミラの羽根の先が、わずかに赤く染まる。
「ホゥ……。」
ミラが、低く、警戒するように鳴いた。
「……あっちが、竜の巣か。」
「それに、影も。」
赤い点は、瞬くたびに、ほんの少しずつ、こちらの方へ寄ってきているように見えた。
まだ、遠い。
だが、確実に、こちらへ向かっている気配があった。
「アレスに、見せておこう。」
レオンはミラを肩に乗せ、入口へ向かった。
◇◆◇
「……できたのか。」
戻ってきたレオンを見て、アレスが振り返る。
その視線が、レオンの肩の上で止まった。
「……梟?」
「ああ。ガチャから出た。ミラって名前にした。」
「ホゥ。」
ミラが小さく鳴いて、首をかしげる。
アレスはしばらく、無言でその小さな梟を見つめていた。
「……また、増えたな。」
「また、増えた。」
レオンは悪びれずに頷く。
「星の紋章の気配を読んで、星図を見せてくれる。それに、追ってくる存在が近づくと、羽根の先が赤くなる。」
レオンは、ミラが映した星図の内容を、手短に説明した。
「今は、北東の山の向こうだ。まだ遠いけど、少しずつ近づいてる。」
「つまり、影はお前を探して、こっちへ来てるってことか。」
「たぶん。」
「そうか。」
アレスは短く息を吐いた。
「便利な相棒だな。居場所が分かれば、先に備えられる。」
「それに、西にも反応があった。」
「西?」
「エヴァンスさんが探してた、最後の点だ。」
アレスの目が、わずかに見開かれる。
「……それは、大きな収穫だな。」
「ああ。」
それから、アレスは、少し間を置いて言った。
「お前のそのガチャは、本当に、俺の想像の斜め上ばかり出してくるな。」
「それは、俺も思ってる。」
レオンは苦笑した。
「でも、毎回楽しみなんだよ。何が出るか分からないから。」
「……そうだろうな。」
アレスの口元が、わずかに緩んだ。
その時、レオンの前に、見慣れた表示が浮かぶ。
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【運命ポイント】
110Pt → 10Pt
SSR確定ガチャを使用しました(消費 100Pt)
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(10は、残るのか。)
レオンは小さく笑った。
また、ここから積み上げていく。それも、悪くない。
◇◆◇
広間を出る前に、レオンは台座の上の氷の石版を回収した。
表面には、薄く、細かい文字がびっしりと刻まれている。
片眼鏡を向けてみたが、解読には時間がかかりそうだった。
「小屋に戻ったら、ゆっくり読もう。」
「ああ。」
三人と二匹は、氷の回廊を引き返した。
行きは慎重に歩いた氷の床も、帰りは、光る紋様を辿るだけで済んだ。
凍った滝の外に出ると、空は、夕焼けに染まり始めていた。
岩場には、ダンカンが、まだ座っていた。
「……戻ったか。」
老人は、ゆっくりと立ち上がった。
「待っていてくださったんですか。」
「決まりを、少しだけ破っただけだ。」
ダンカンは、ぶっきらぼうに言った。
「生きて戻ったなら、それでいい。」
その目尻が、ほんの少しだけ、緩んでいた。
それから、老人は、レオンの肩の上の小さな梟に気づいた。
「……そいつは?」
「ミラです。さっき、仲間になりました。」
「ホゥ。」
「梟か。この山じゃ、夜に鳴くのを聞くだけで縁起がいいと言うんだ。」
ダンカンは、ぶっきらぼうに、けれどどこか嬉しそうに言った。
◇◆◇
小屋に戻ると、ダンカンが、鍋で煮込んだ肉の汁を振る舞ってくれた。
湯気の立つ椀を両手で包み、冷え切った体を温める。
「うまい……。」
「山の獣の汁だ。体が温まる。」
ダンカンは、囲炉裏の火を見つめたまま、ぽつりと言った。
「爺さんがな、よく言っとった。あの滝の裏には、『星の守り』がいると。」
「星の守り……。」
「悪いものじゃない。ただ、触れる資格のない者が近づけば、容赦はしない。そう言っとった。」
ダンカンは、椀の中を見つめる。
「俺は、ずっと、ただの昔話だと思っとった。」
「実際にいましたよ。氷の、大きな番人が。」
リリアが静かに答える。
「そうか。……本当に、いたのか。」
ダンカンは、小さく息を吐いた。
「なら、お前たちは、その資格を認められたってことだな。」
「そうなのかな……。」
レオンは椀を見つめた。
「認められたというより、通してもらった、という感じです。」
「それで、十分だ。」
老人は、わずかに口の端を緩めた。
「爺さんも、喜ぶだろう。」
隣で、アレスが黙って椀を傾けている。
その表情は、いつもより少しだけ、穏やかに見えた。
◇◆◇
その夜、小屋の片隅で、レオンは静かに画面を開いた。
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無料10連
READY
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白い空間に、黒い本が浮かぶ。
夜空に十本の光の柱が立ち上る。
白、白、白、白、青、白、白、白、白、白。
「Rが一つ。」
光が収まり、カードが姿を現す。
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【NEW】
《スキルカード:耐寒》(R)
寒さに強くなる。
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【スキル習得】
《耐寒》 ★1
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カードが光の粒になって、体の中へ溶けていく。
途端に、体の芯に残っていた冷えが、すっと引いていくのが分かった。
「……これ、今日の戦いのあとで出るなんて、ずるいな。」
図鑑の《スキル》の欄に、新しい名前が増えている。
観察眼、気配察知、そして耐寒。
スキルが増えていくのは、素直に楽しい。
残りは、食料や薬草などの補充品。
派手な当たりはないが、それでも十分だった。
レオンは、囲炉裏の火の前で、フェンの背に丸くなって眠るミラを、そっと眺めた。
ミラの羽根は、白く、静かに上下している。
その先が、ほんのわずかだけ、赤みを帯びていた。
「……来るなら、来い。」
レオンは、小さく呟いた。
ミラがいれば、先手を取れる。
そして、西の最後の点が、この手の中にある。
囲炉裏の火が、ぱちりと弾けた。
窓の外では、夜の雪が、静かに降り続けていた。
(第58話へ続く)
【あとがき】
第57話を読んでいただき、ありがとうございました!
四度目のSSR確定ガチャで出たのは、なんと新たな召喚獣・星梟のミラ。瞳に映した星図で西の最後の点を示し、影が近づくと羽根の先が赤く染まって警告してくれます。
運命ポイントは110Ptから10Pt(100Pt消費)に。夜の無料10連では、スキル《耐寒》も習得しました。
次回、第58話もお楽しみに!




