↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけ毎日無料10連!~ハズレ職《ガチャ師》は、世界で唯一ガチャが終わらない~  作者: 春野ケイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/59

第52話 臨時パーティ、出発

 出発の朝、王都アルカディアの北門には、薄い霧が立ち込めていた。


 レオンは魔導収納鞄の中身を最後に確認し、リリアは杖の紐を締め直す。フェンは成体になった大きな体で、落ち着かなそうに門の周りを歩き回っていた。


「ワウ。」


「分かってる、もうすぐ行くから。」


 フェンの頭を撫でていると、門の向こうからアレスが歩いてきた。


 背中には、見慣れた大剣。その後ろには、包帯を巻いた男女が三人ほど付き添っている。


「見送りは要らないと言ったんだがな。」


「そういうわけにいくか、アレス様。」


 腕を吊った剣士が、苦笑いを浮かべた。


「回復したらすぐ追いかける。それまで、無茶はしないでくださいよ。」


「分かってる。お前たちこそ、ちゃんと休め。」


 アレスは短く答えてから、レオンたちに向き直る。


「待たせたな。行こう。」


「ああ。」


 レオンは頷いた。


 見送りに立つ三人の視線が、レオンとリリアにも向けられる。


「うちの勇者様を、どうかお願いします。」


「いえ、こちらこそ。」


 リリアが丁寧に頭を下げた。


「アレスさんには、昨日もたくさん助けていただきました。」


「……そういう挨拶は、帰ってきてからにしろ。」


 アレスが妙に居心地悪そうに言って、先に歩き出した。


 門をくぐると、石畳の道が土の街道に変わる。


 ここから先が、北部へ続く道だった。


◇◆◇


 王都を発って半日。


 街道の両脇には、背の低い針葉樹が増え始めていた。


 空気も、少しずつ冷たくなっている。


「……会話がないな。」


 最初に口を開いたのは、アレスだった。


「そうか?」


「そうだろ。出発してから、ほとんど喋ってない。」


「必要なことは言ってるぞ。『右に曲がる』とか、『水を飲もう』とか。」


「それは会話って言わない。」


 アレスが小さく溜息をついた。


 リリアが、くすりと笑う。


「レオンは、歩きながら図鑑のことを考えてるんだよ。だから、ほとんど返事が来ないの。」


「リリア。人の頭の中を勝手に説明するな。」


「でも、間違ってないでしょ?」


「……間違ってない。」


 認めたレオンに、アレスは呆れ顔を向けた。


「お前、本当に変わってないな。同じ村にいた頃から、そういうところあったか?」


「どうだったかな。あまり意識したことなかった。」


 レオンは曖昧に答えた。


「そうか。まあ、俺もお前のことを詳しく知ってるわけじゃない。同じ村の出身ってだけだしな。」


「そうだな。」


 あっさりとした、けれど居心地の悪くないやり取りだった。


 勇者と最弱職が、今こうして並んで北を目指している。


 それを不思議に思う気持ちが、少しだけ胸の隅にあった。


「ワウッ!」


 先を歩いていたフェンが、突然低く唸った。


 耳が前を向き、尻尾が真っ直ぐに伸びている。


「敵か。」


 アレスの顔つきが変わる。


「数は?」


「待って、見る。」


 レオンは片眼鏡に魔力を込めた。


────────────────


【解析】


霜牙ウルフ(群れ)


数:四


状態:飢餓、警戒中


弱点:額の氷結晶


────────────────


「四体。額の氷結晶が弱点だ。」


「分かった。俺が正面を押さえる。リリアは後ろから援護、レオンは全体の指示を頼む。」


「了解!」


 アレスの指示は簡潔で、無駄がなかった。


 街道脇の茂みから、白い毛並みの狼たちが飛び出してくる。


 アレスの大剣が、先頭の一体を弾き飛ばした。


「ウィンドカッター!」


 リリアの風の刃が、二体目の足を止める。


「フェン、左の二体を引きつけてくれ!」


「ワウッ!」


 フェンが《導きの遠吠え》を響かせると、狼たちの額の結晶が、ほのかに青く光った。


「見えた!」


 アレスの剣先が、迷いなく額を貫く。


 残りの三体も、フェンの牙とリリアの魔法、レオンのナイフで次々と倒れていった。


 戦いは、あっという間に終わった。


「……悪くないな。」


 剣を収めながら、アレスがぽつりと言った。


「光らせたら、狙う場所がすぐに分かる。普段なら、一匹ずつ探すところだ。」


「ワウ。」


 フェンが得意げに胸を張る。


「お前のそれ、本当に便利だな。」


 アレスが、フェンの頭をぎこちなく撫でた。


 フェンは少し驚いた顔をしたが、すぐに尻尾を振った。


 その時、レオンの前に、見慣れた表示が浮かぶ。


────────────────


【霜牙ウルフ・討伐】


+3Pt


【新種登録】


+5Pt


【今回の獲得】


+8Pt


【運命ポイント】


60Pt → 68Pt


────────────────


(霜牙ウルフ、図鑑登録完了。)


 レオンは小さく拳を握った。


 アレスの前なので、表情には出さないようにしたが、リリアにはお見通しだったらしい。


「顔、笑ってるよ。」


「出てないはずだぞ。」


「出てる。」


 アレスが首を傾げる。


「何の話だ?」


「こっちの話だよ。」


 レオンは慌てて誤魔化した。


◇◆◇


 日が傾く頃、街道沿いの小さな宿場跡に野営を張った。


 かつては旅人で賑わっていたらしい。今は、屋根が半分崩れた石造りの建物が、風除けにちょうど良かった。


「一番手は俺が見張りに立つ。」


 アレスが焚き火の前に座り込む。


「お前たちは先に休め。」


「いいのか?」


「勇者の仕事だ。」


 不器用な言い方に、リリアがまた笑いを堪えている。


 レオンは天幕の中に入り、静かに画面を開いた。


 毎日この瞬間だけは、どんなに疲れていても外せない。


────────────────


無料10連


READY


────────────────


 白い空間に、黒い本が浮かぶ。


 夜空に十本の光の柱が立ち上る。


 白、白、白、白、青、白、白、青、白、白。


「今日はRが二つ、か。」


 光が収まり、カードが姿を現す。


────────────────


【NEW】


《保温の携行鍋》(R)


少量の魔石で、煮炊きと保温ができる小型の鍋。


野営での食事を、格段に快適にする。


────────────────


────────────────


【NEW】


《雪上歩行の靴底》(R)


靴に取り付ける滑り止めの金具。


凍結した地面や雪面でも、安定して歩ける。


────────────────


「……北部に向かってるって知ってて出してるだろ、これ。」


 思わず呟くと、隣で毛布にくるまっていたリリアが、小さく笑った。


「ガチャも、ちゃんと分かってくれてるのかな。」


「そうだといいんだけどな。」


 残りは食料や薬草、包帯といった、旅を支える補充品。派手さはないが、頼もしい。


 レオンは靴底を取り出し、明日のために自分とリリア、アレスの分の金具を揃えておいた。


「フェンの分は、さすがにないな。」


「ワウ。」


 天幕の入口で丸くなっていたフェンが、問題ないと言うように鼻を鳴らした。


「寒いのも、平気だって。」


「頼もしいな。」


 レオンは笑って、画面を閉じた。


◇◆◇


 見張りを交代したあと、焚き火の前で、レオンはアレスと並んで座った。


 夜の空気は冷たく、星が驚くほど近く見える。


「お前、よくあんな顔で魔物の図鑑登録を喜べるな。」


「顔に出てたか?」


「出てた。ほんの一瞬だけだが。」


 アレスは薪を足しながら、横目でレオンを見る。


「俺は、魔物を倒すたびに『次はもっと強い奴が出る』としか考えない。お前みたいに、倒すことを楽しみにはできない。」


「楽しんでるわけじゃないけどな。」


 レオンは少し考えてから言った。


「知らないものを知るのが、好きなだけだ。」


「それが一番強いのかもしれないな。」


 アレスは小さく笑った。


「お前のそういうところは、嫌いじゃない。」


「そりゃどうも。」


 焚き火がぱちりと弾ける。


 遠くの空、北の山並みの上に、星の群れが瞬いていた。


 あの向こうに、竜がいる。そして、竜を従える何かも。


 不安がないと言えば嘘になる。


 それでも、レオンの胸の奥では、まだ見ぬ遺構と、まだ埋まっていない図鑑の枠が、静かに熱を帯びていた。


「そろそろ寝ろ。明日は、もっと冷える。」


「ああ。おやすみ。」


 レオンは天幕に戻りながら、ふと北の空を見上げた。


 明日から、本当の意味での旅が始まる。


(第53話へ続く)


【あとがき】


第52話を読んでいただき、ありがとうございました!


第5章スタートです。アレスとの臨時パーティで、北部へ向かう旅が始まりました。


連携はまだぎこちないものの、フェンの《導きの遠吠え》とアレスの剣が噛み合い、最初の戦いは無事に勝利。運命ポイントは60Ptから68Ptへ増えました。


次回、第53話もお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。