第48話 禁書庫への道
アレスから連絡が来たのは、数日後のことだった。
あの夜の酒場での会話から、お互いに水面下で動いていたのだろう。
「禁書庫への立ち入り許可、取れそうだ。」
王都ギルド本部の一室で、アレスが報告する。
その表情には、どこか緊張したような硬さがあった。
「正式な許可ではなく、俺の立場を使った特例だ。王家の記録管理官に直接話を通した。」
「ありがとう、助かる。」
「礼はまだ早い。管理官からは、一つ条件を出されてる。」
アレスは少し渋い顔をした。
「禁書庫の入口には、古い封印が施されているらしい。普通の鍵じゃ開かない。管理官自身も、長年開けられずにいるそうだ。」
「封印……。」
レオンの脳裏に、片眼鏡越しに見た数々の紋章が浮かぶ。
「もしかして、それも星の紋章絡みか?」
「おそらくな。だからこそ、お前に頼みたいんだ。」
◇◆◇
王城の地下深く、何重もの通路と階段を抜けた先に、その場所はあった。
空気がひんやりと重く、灯りも最低限しかない。
案内されたのは重厚な石扉の前だった。
扉の表面には、見覚えのある星の紋様が、複雑に組み合わさって刻まれている。
長い年月を経てなお、紋様の輪郭ははっきりと残っていた。
傍らに立つ初老の男性が、深く頭を下げた。
「記録管理官のフォードと申します。アレス様からお話は伺っております。」
「レオンです。」
「噂のガチャ師殿ですな。」
フォードは興味深そうにレオンを見つめた。
「この封印、代々の管理官が調べてきましたが、未だに解除方法が分かっておりません。もし何か分かれば……。」
「見てみます。」
レオンは星継ぎの手甲を構え、扉に触れた。
触れた瞬間、紋様が淡く輝き始める。
「……ッ!」
フォードが息を呑んだ。
「反応している……!? 何百年も、何の反応もなかったというのに……!」
フォードの声は、興奮と畏怖の入り混じったものだった。
「代々の管理官が、様々な鍵や魔道具を試しても、うんともすんとも言わなかったのですぞ……!」
アレスも驚いた様子で、扉と手甲を交互に見つめている。
レオンの脳裏に、忘れられた洞窟や星の中枢で見た光景が重なる。
手甲を通して、扉の奥から、かすかな「気配」のようなものが伝わってきた。
「……何か、いる。」
「いる、とは?」
アレスが眉をひそめる。
「封印というより、見張りに近い感じがする。」
レオンは慎重に魔力を込めていった。
紋様の輝きが、扉全体に広がっていく。
やがて、重々しい音を立てて、石扉がゆっくりと開き始めた。
◇◆◇
扉の奥、薄暗い通路の先に、小さな人型の影が浮かび上がる。
高さはレオンの膝ほど。全身が淡く発光する、これまで見たどの番人よりも小さな存在だった。
「……また、番人か。」
レオンは身構えた。
「敵意はなさそうだが……油断するな。」
アレスも剣の柄に手をかける。
フォードは扉の外で、顔面蒼白のまま立ち尽くしていた。
「ば、番人……? そのようなもの、記録のどこにも……!」
小さな番人は、三人をじっと見つめたあと、ゆっくりと手甲へ向けて頭を下げるような仕草を見せた。
「……挨拶、なのかな?」
リリアが戸惑いながら呟く。
番人は踵を返すと、通路の奥へとすうっと消えていった。
「通れ、ということらしいな。」
レオンは片眼鏡を構えた。
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【封印の番人・解除】
+6Pt
【禁書庫への到達】
+5Pt
【今回の獲得】
+11Pt
【運命ポイント】
89Pt → 100Pt
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「……100!」
レオンは思わず声を上げた。
「ついに、来たんだね……。」
リリアの顔にも緊張が走る。
「どうした?」
事情を知らないアレスが怪訝そうに尋ねる。
「いや、こっちの話だ。」
レオンはとぼけながら、目の前に浮かんだ新しい選択肢を見つめた。
――SSR確定ガチャ。
ここで使っていいものか、一瞬迷う。
それでも、せっかくの節目だ。
「少しだけ、待ってくれ。」
「構わないが……?」
アレスが首をかしげる中、レオンは静かに画面へ触れた。
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SSR確定ガチャ
READY
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白い空間に、黒い本が浮かぶ。
夜空に十本の光の柱が立ち上り、虹色に輝いていく。
だが、これまでとは何かが違った。
光の柱の一つが、これまで見たことのない形に変化していく。
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【NEW】
《スキル》ガチャ機能が解放されました
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「……スキル?」
聞き慣れない言葉に、レオンは戸惑った。
続けて、画面にもう一つの表示が浮かぶ。
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【NEW・初回習得】
《観察眼》(スキル・★1)
対象の弱点・急所を、より鮮明に把握できるようになる。
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「これは……。」
レオンは思わず自分の手を見つめた。
片眼鏡を使わずとも、目の前の石壁に刻まれた紋様の、わずかな凹凸の違いまでが、やけにはっきりと見える気がした。
試しに、通路の奥に転がっていた小石を見つめてみる。
これまでなら気にも留めなかったであろう、ごくわずかな傷の模様まで、はっきりと視界に浮かび上がった。
「これが、スキルの力……。」
道具を介さずに発揮される力を実感し、レオンは思わず息を呑んだ。
「新しいスキル、覚えたの?」
リリアが覗き込む。
「ああ。観察眼、ってスキルらしい。」
「便利そうだね。」
「ああ。しかも、これ、図鑑にも新しい項目ができてる。」
レオンは図鑑を開いた。
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【NEW図鑑カテゴリ】
《スキル》が追加されました
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「アイテムや魔物だけじゃなくて、スキルまで……。」
レオンは素直に感心した。
同時に、新しい図鑑の枠が増えたことへの喜びも、いつも通り湧き上がってくる。
(スキルの図鑑も、埋めがいがありそうだな。)
我ながら、こんな状況でも変わらない自分に、少し笑ってしまう。
「お前、また何かあったな?」
アレスが怪訝そうな顔で尋ねてくる。
「まあ、ちょっとした収穫があった、ってことで。」
レオンは曖昧に誤魔化しながら、通路の奥へと視線を向けた。
禁書庫は、まだその先に広がっている。
(第49話へ続く)
【あとがき】
第48話を読んでいただき、ありがとうございました!
ついに禁書庫への扉が開き、運命ポイントは100に到達。そして3回目のSSR確定ガチャから飛び出したのは、まさかの新機能――《スキル》ガチャでした。
最初のスキルは「観察眼」。地味ながらも、レオンの戦い方をさらに底上げしてくれそうです。
そして、禁書庫の奥には、まだ見ぬ真実が眠っています。次回、いよいよその中身に迫ります。お楽しみに!




