第37話 星継ぎの証
光が収まっていく。
石像たちの動きが、一瞬完全に止まっていた。
その隙に、レオンは光の中心へ目を凝らす。
そこに立っていたのは――一対の、淡く輝く手甲だった。
星をかたどった紋様が表面に浮かび、まるで生きているかのように脈打っている。
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【NEW】
《星継ぎの手甲》(SSR)
古代のガチャ師文明が遺した証。
星の紋章を持つ存在と共鳴する力を宿す。
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「これが……。」
レオンは吸い寄せられるように手を伸ばした。
触れた瞬間、手甲が淡い光を放ちながら、両腕に吸い付くように装着される。
「レオン! 右!」
リリアの声で我に返る。
石像の腕が、すぐそこまで迫っていた。
「くっ……!」
咄嗟に手甲を構えると、石像の一撃を受け止めた腕から、意外なほど力強い反発が返ってくる。
「防げた……?」
石像が怯んだように後ずさる。
その胸元の紋章が、レオンの手甲と同じ色に淡く光っていた。
「まさか……同調してるのか?」
レオンは咄嗟に手甲へ魔力を込めた。
全身に、これまで感じたことのない感覚が駆け抜ける。
まるで、目の前の石像たちと、心のどこかで繋がったような――そんな不思議な感覚だった。
「止まれ。」
小さく、けれどはっきりと呟く。
その瞬間、周囲の石像たちの動きが、ぴたりと止まった。
「……嘘だろ。」
ガレスが呆然と剣を下ろす。
「本当に、止まった……。」
リリアも目を丸くしている。
フェンだけが、どこか誇らしげに尻尾を振っていた。
張り詰めていた空気が、少しずつ緩んでいく。
「レオン、その手甲……。」
リリアがそっと近づいてくる。
「たぶん、これのおかげだと思う。」
レオンは自分の両腕を見下ろした。
手甲に触れてから今まで、色々なことが起こりすぎて、まだ実感が追いついていない。
それでも、石像たちが静かに立ち尽くす光景を見れば、何が起きたのかは嫌でも分かった。
◇◆◇
石像たちは動きを止めたまま、静かにその場に立ち尽くしている。
敵意はもう感じられない。
まるで、本来の主人を認めたかのようだった。
「……台座に行ってみよう。」
レオンは静まり返った広間を、中央の台座へと歩いていく。
足音だけが、やけに大きく響いた。
台座の上には、これまで見てきたどの石版よりも大きな一枚が置かれていた。
全体を覆うように、細かい古代文字が刻み込まれている。
片眼鏡に、これまでにない量の魔力を込める。
視界が眩むほどの負荷を感じたが、レオンは歯を食いしばって集中を続けた。
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【解析】
古代の石版・完全版
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文字が、ゆっくりと浮かび上がっていく。
「――星を継ぐ者、迷いし道を照らす。」
「――番人は眠り、記録は消えても、真実は残る。」
「――かつて、星の力を宿す者たちは、世界を守る要であった。」
「――されど、力を恐れた者たちが、その名を貶め、歴史から消し去った。」
「――今、再びこの証に触れる者よ。汝の歩む道が、忘れられた真実を照らさんことを。」
沈黙が広間を包んだ。
「……そういうことか。」
レオンは静かに呟いた。
ガチャ師が歴代最弱と呼ばれてきたのは、偶然でも、単なる無理解でもなかった。
かつて力を恐れられ、意図的に貶められた結果だったのだ。
「レオン……。」
リリアが心配そうに顔を覗き込む。
「大丈夫か?」
ガレスも静かに声をかけた。
「……ああ、大丈夫です。」
レオンは首を横に振った。
正直に言えば、衝撃はある。
けれど、それ以上に強かったのは――
「むしろ、燃えてきました。」
「……は?」
ガレスが拍子抜けしたような顔をする。
「隠された真実がある、ってことは、まだ図鑑に載ってない歴史がある、ってことですよね。」
「お前、そこかよ。」
ガレスが呆れたように笑った。
リリアも、こらえきれずに噴き出す。
「レオンらしいね、本当に。」
フェンも二人に合わせるように、機嫌よく尻尾を振っていた。
◇◆◇
その場でレオンの前に、見慣れた表示が浮かんだ。
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【「星の中枢」完全踏破】
+40Pt
【石版・完全解読】
+20Pt
【今回の獲得】
+60Pt
【運命ポイント】
0Pt → 60Pt
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SSR確定ガチャを使ったことで、一度0に戻った運命ポイントは、この日の成果だけで一気に60Ptまで積み上がっていた。
「今日だけで、これか……。」
レオンは思わず苦笑した。
次の100Ptも、そう遠くないかもしれない。
◇◆◇
アルトへ戻る道すがら、フェンが再び淡い光に包まれた。
「わふ……?」
「また成長したのか。」
図鑑を開くと、フェンの項目が更新されていた。
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【フェン】
召喚獣・ウルフ系
成長段階:若年体 → 成体(予兆)
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「成体の、予兆……?」
リリアが覗き込む。
「まだ完全じゃない、ってことか。」
レオンは首をかしげながらも、フェンの頭を撫でた。
この分だと、そう遠くないうちに、また新しい姿を見せてくれそうだ。
◇◆◇
数日後。
アルトのギルドに、一台の豪華な馬車が到着した。
街ゆく人々が足を止めて振り返るほど、目立つ装飾の施された馬車だった。
降りてきたのは、上質な装束に身を包んだ、若い女性だった。
「冒険者ギルド・アルト支部の方ですね。王都より参りました。」
バロンに案内され、レオンたちの前に現れたその使者は、静かに一礼した。
「星の紋章を持つ遺構の発見、そして先日の《星の中枢》踏破の件、王都にも報告が届いております。」
「……俺たちのことも、ですか。」
レオンが尋ねると、使者は小さく頷いた。
「もちろんです。これほどの発見をなさったパーティを、王都が放っておくはずがありません。」
「はい。ぜひ、王都まで足をお運びいただきたく。」
その言葉に、レオンとリリアは顔を見合わせた。
ついに、この時が来たのだ。
「行きます。」
レオンは、はっきりと答えた。
王都には、まだ見ぬ図鑑の枠がある。
そして、まだ明らかになっていない、古代ガチャ師の真実がある。
その両方に、レオンの心は静かに逸っていた。
(第38話・第4章「王都への道」へ続く)
【あとがき】
第37話を読んでいただき、ありがとうございました!
SSR確定ガチャで手に入ったのは、古代の証《星継ぎの手甲》。石像たちを鎮め、ついに古代の石版の全文が明らかになりました。
ガチャ師が最弱職と呼ばれてきた本当の理由。それは、かつて力を恐れられ、意図的に貶められた結果でした。
そして、王都からついに正式な使者が到着。レオンたちの物語は、次章「王都への道」へと続いていきます。
第3章「新たな仲間、そして広がる異変」を読んでいただき、本当にありがとうございました!
次回、第38話・第4章スタートです。お楽しみに!




