第29話 広がる異変
アルトの門をくぐったレオンたちは、そのまま冒険者ギルドへ向かった。日はすでに傾き、街の通りには帰宅を急ぐ人の姿が増えている。さっきまでの出来事が嘘のように、アルトはいつも通りだった。
「まずは報告だね。」
「うん。今日のことはちゃんと伝えておこう。」
ギルドの扉を開けると、夕方ということもあって受付には何人かの冒険者が並んでいた。少し待ってから、レオンたちはいつもの受付嬢の前へ進んだ。
「お帰りなさい。今日は集落への物資運搬でしたよね?」
「はい。依頼は無事に終わりました。」
「それならよかったです。」
受付嬢が依頼書を確認する。
「……ただ、何かありました?」
レオンは少し驚いた。
「分かります?」
「皆さん、帰ってきた時と比べて顔が少し硬いので。」
「そんなに分かりやすいかな。」
リリアが小さく笑う。
「かなり分かりやすいと思う。」
「リリアまで……。」
レオンは苦笑して、今日あったことを順番に話した。集落で聞いた魔物の目撃情報。森の鳥が減っていること。夜に妙な音が聞こえるという話。そして帰り道、荷馬車が魔物に襲われたこと。
受付嬢は途中から笑顔を消し、黙って話を聞いていた。
「それで、襲ってきた魔物は?」
「灰色の毛で、狼に似た魔物でした。俺たちも見たことがありません。」
「名前は分からなかったんですね。」
「はい。」
「……少し待ってください。」
受付嬢は後ろを振り返り、別の職員へ声を掛けた。何やら小声で話したあと、すぐにこちらへ戻ってくる。
「実は、今日だけではないんです。」
「え?」
「ここ数日、アルト周辺で魔物の目撃報告が少し増えています。」
レオンは思わずリリアを見る。
「増えてるって、どれくらい?」
「大きな被害が出ているわけではありません。ただ、今まで魔物があまり出なかった場所で目撃されるようになったり、普段より街道に近い場所まで出てきたりしています。」
「今日の魔物も、その一つかもしれないってことですか?」
「その可能性はあります。」
受付嬢は少し迷うように言葉を続ける。
「ただ、現時点では原因までは分かっていません。」
「ですよね。」
レオンは頷いた。
昨日見つけた裂け目と侵食核。今日聞いた異変。そして街道に出てきた魔物。
頭の中では繋がりそうな気がする。
けれど、証拠は何もない。
「それと、古い街道についても聞きました。」
レオンが話すと、受付嬢の表情が変わった。
「古い街道?」
「はい。集落の人から聞きました。森の中を通る昔の街道で、最近は魔物が出るから使う人が減っているって。」
「……それは初めて聞きました。」
受付嬢が眉を寄せる。
「ギルドには、まだ正式な報告が入っていないようです。」
「じゃあ、今日のことと一緒に伝えておいた方がいいですね。」
「お願いします。」
受付嬢は新しい紙を取り出した。
「こちらにも記録しておきます。」
レオンは頷いた。
「お願いします。」
報告を終えると、レオンたちはギルドを出た。
「思ったより色々出てきたね。」
「うん。」
リリアが隣を歩く。
「昨日までは、黒い裂け目のことだけだと思ってたのに。」
「俺も。」
レオンは空を見上げた。夕暮れの空は赤く染まっている。
「でも、今はまだ何も分からない。」
「そうだね。」
「だったら、分かるところから調べていけばいい。」
レオンはそう言って歩き出した。
「明日はどうする?」
「せっかくだし、今日とは違う場所へ行ってみたい。」
「また遠くへ?」
「うん。」
レオンは少し笑う。
「知らない場所へ行けば、知らないものも見つかるかもしれないから。」
「図鑑?」
「それもある。」
レオンにはもう一つ理由があった。
運命ポイントだ。
ポイントが多いほど、ガチャの結果が良くなる。そして100Ptまで貯めれば、あの《SSR確定ガチャ》を使える。
前回、100Ptに到達した時は驚いた。
まさか、そんな機能が隠されているとは思っていなかった。
そしてSSR確定ガチャを使ったことで、運命ポイントは一度0Ptへ戻った。
今はまだ4Pt。
先は長い。
「少しずつ貯めていかないとな。」
「また100Pt?」
「うん。前は大変だったけど、次はもっと早く貯められるかもしれない。」
「確かに。冒険する場所が増えれば、それだけ色々見つかりそう。」
レオンは頷いた。
ポイントを貯めるためだけに冒険するつもりはない。
けれど、知らない場所へ行って、新しいものを見つけることが結果的にポイントにも繋がる。
なら、今までより少しだけ遠くへ行ってみるのも悪くない。
「フェンも行きたい?」
「わふっ!」
後ろを歩いていたフェンが尻尾を振った。
「決まりだな。」
宿へ戻ると、レオンは荷物を置いてベッドへ腰を下ろした。今日も朝から歩き続けたせいで、さすがに疲れている。
「……そういえば。」
「どうしたの?」
「今日の分、まだ引いてない。」
「あ。」
リリアが笑う。
「忘れるところだったね。」
「危なかった。」
レオンは手をかざした。
「無料十連。」
白い光が広がる。
いつもの白い空間。
いつもの巨大な本。
レオンはページをめくっていく。
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【無料10連】
《登録済》
・保存食
・回復薬
・火打石
・薬草
・水袋
・小型ナイフ
・魔石(小)
・携帯食器
・丈夫なロープ
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最後の一枚。
青い光が弾けた。
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★★★☆☆
《簡易地図》
周辺地域の地形を確認できる。
街道や主要な集落などが記録されている。
【NEW】
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「地図か。」
「ちょうどいいじゃん。」
リリアが覗き込む。
「明日、どこへ行くか決めるのに使えそう。」
「確かに。」
レオンは簡易地図を広げた。
アルトを中心に、周辺の街道や集落が表示される。
その中に一つだけ目につく場所があった。
「ここ……。」
「どうしたの?」
レオンが指を止める。
アルトから少し離れた場所。
森の奥に、小さな印が付いている。
「何か書いてある。」
レオンが地図を覗き込む。
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【旧採掘場】
現在は使用されていません。
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「旧採掘場……。」
リリアも地図を見る。
「古い街道の近くじゃない?」
「……本当だ。」
レオンは地図と今日聞いた話を見比べた。
魔物が増えている場所。
古い街道。
そして、その近くにある使われなくなった採掘場。
偶然なのかもしれない。
でも、少しだけ気になる。
「明日、ここへ行ってみようか。」
「うん。」
フェンが地図を覗き込む。
「わふ?」
「明日はここだ。」
レオンが指差す。
「わふっ!」
フェンが嬉しそうに尻尾を振った。
レオンは地図を閉じた。
今日も色々あった。
けれど、まだ何も終わっていない。
むしろ、アルトの周辺で起きていることが少しずつ見えてきたところだった。
明日は旧採掘場へ向かう。
そこに何があるのか。
そして、最近増えている魔物と何か関係があるのか。
今はまだ分からない。
レオンはそんなことを考えながら、明日の準備を始めた。
◇◆◇
【運命ポイント】
4Pt → 6Pt
【今回の獲得】
+2Pt
獲得理由
・魔物の情報提供
・街道を利用する人々への貢献
◇◆◇
【あとがき】
第29話を読んでいただき、ありがとうございました!
今回は、集落や帰り道で起きたことをギルドへ報告しました。
アルト周辺では、ここ数日で魔物の目撃が少しずつ増えていることも判明。
まだ黒い魔力との関係は分かりませんが、レオンたちの身近な場所でも異変が起き始めています。
そして今回の無料10連では《簡易地図》を入手。
その地図から見つかったのが、使われなくなった《旧採掘場》。
次にレオンたちが向かう場所が決まりました。
運命ポイントも4Ptから6Ptへ。
前回のSSR確定ガチャで一度0Ptに戻った運命ポイントを、また少しずつ貯めていきます。
100Ptまで貯めれば、再びSSR確定ガチャを使える。
そう考えると、これからの冒険もますます楽しみになりそうです。
次回、第30話もお楽しみに!




