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俺だけ毎日無料10連!~ハズレ職《ガチャ師》は、世界で唯一ガチャが終わらない~  作者: 春野ケイ


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第25話 小さな相棒

 宿の食堂を出ると、アルトの街はすでにいつもの賑わいを見せていた。


 行き交う人々。


 荷車を引く商人。


 冒険者らしき男たちの笑い声。


 昨日までと変わらない景色。


 ただ一つ違うのは。


「わふっ」


 レオンの足元を、小さな幼狼がついて歩いていることだった。


「……やっぱり目立つな」


 レオンが振り返る。


 フェンは何事もなかったように、とことこと歩いている。


 大きな耳がぴくぴく動くたび、周囲の視線が集まった。


「しょうがないよ」


 リリアが笑う。


「こんな子、街ではあまり見ないもん」


「召喚獣って、普通はこんなに人目を引くものなのかな」


「私に聞かれても分からないよ」


「だよな」


 レオンは苦笑した。


 昨日まで、召喚獣なんて考えたこともなかった。


 そもそも、ガチャから生き物が出てくるなんて思っていなかったのだから当然だ。


 フェンはそんな二人の会話など気にせず、道端に落ちている木の枝へ駆け寄った。


 鼻を近づける。


 くんくん。


 そして。


 ぱくっ。


「おい」


 レオンが慌てて近づく。


「それ食べるな」


「わふ?」


 フェンが枝をくわえたまま、首を傾げた。


「……。」


「……。」


 リリアが吹き出した。


「ふふっ」


「笑ってないで助けてくれよ」


「だって、かわいいんだもん」


 リリアがしゃがみ込む。


「フェン、それは食べ物じゃないよ」


「わふ」


 フェンは素直に枝を吐き出した。


「賢いじゃん」


 レオンが頭を撫でる。


 フェンは嬉しそうに尻尾を振った。


「もう仲良しだね」


「そうかな」


「そうだよ」


 レオンは少し照れくさくなり、視線を逸らした。


 昨日出会ったばかりなのに。


 妙なものだ。


 もう、ずっと一緒にいたような気がする。


◇◇◇


 二人は街の外れにある広場までやってきた。


 人通りが少なく、周囲にも十分なスペースがある。


「ここなら、少し試せそうだな」


「何を?」


「フェンのこと」


 レオンはフェンを見る。


「まだ何ができるのか、全然分からないから」


「そうだね」


 レオンは少し考える。


「まずは走らせてみるか」


「普通だね」


「他に何をすればいいんだよ」


「さあ?」


「……。」


 二人で顔を見合わせる。


「とりあえず、フェン」


 レオンが呼ぶ。


「おいで」


「わふっ!」


 フェンが走ってくる。


 小さな身体が軽やかに地面を蹴った。


「速い!」


 リリアが驚く。


 フェンはレオンの周りを一周し、そのまま少し離れた場所まで走っていく。


「お座り」


「わふ」


 ぺたん。


「……。」


「ちゃんとできた」


 リリアが笑う。


「すごいすごい」


 フェンの尻尾が激しく揺れる。


「これだけ見ると普通の犬だな」


「でも、狼なんでしょ?」


「表示ではウルフ系だった」


 レオンは腕を組む。


「せっかくだし、もう少し見てみよう」


 レオンはフェンを連れて、広場の端にある木へ向かった。


「フェン。あの木まで行って戻ってこられるか?」


「わふっ!」


 フェンが走り出す。


 木の手前で急に方向を変えた。


 そのままレオンのところへ戻ってくる。


「おお」


 思ったより速い。


 しかも、方向転換が上手い。


「これなら戦いでも使えるかもな」


「でも、まだ小さいよ」


「そこなんだよな」


 レオンはフェンを見つめる。


 幼体。


 昨日の表示にも、そう出ていた。


 まだ成長途中なのだろう。


「無理はさせない方がいいね」


「ああ」


 レオンも頷く。


「まずは簡単な依頼からだな」


 その言葉に、フェンが顔を上げた。


「わふ?」


「冒険に行くんだよ」


「わふっ!」


 意味が分かっているのかいないのか。


 フェンは嬉しそうに尻尾を振った。


「……楽しみにしてるみたい」


「そうだな」


 レオンは笑った。


 その時だった。


 フェンの耳がぴくりと動いた。


「ん?」


 レオンが振り返る。


 フェンは広場の外、街道の方をじっと見ていた。


「どうした?」


「わふ……。」


 フェンが少しだけ唸る。


「何かいるのかな?」


 リリアが周囲を見る。


 けれど、特に変わったものはない。


 しばらくすると、フェンの耳が元に戻った。


「……気のせいかな」


 レオンはそう呟いた。


 まだ、フェンのことは何も分からない。


 それでも。


 昨日までにはなかった感覚が、少しずつ増えている。


 新しい仲間がいる。


 それだけで、見える景色まで少し変わった気がした。


◇◇◇


 その後、二人は冒険者ギルドへ向かった。


 扉を開ける。


 受付へ向かおうとしたところで、昨日の受付嬢がこちらに気付いた。


「あ、お二人とも!」


 笑顔で手を振る。


 その視線が、レオンの足元へ移った。


「……?」


 フェンと目が合う。


「……。」


「……。」


 受付嬢が固まった。


「えっと……。」


 フェンが尻尾を振る。


「わふっ」


「きゃっ……!」


 受付嬢が思わず一歩下がる。


 レオンは慌ててフェンを抱き上げた。


「すみません!」


「い、いえ! こちらこそ!」


 受付嬢はフェンを見つめる。


「その子……昨日はいませんでしたよね?」


「昨日、ガチャから出ました」


「……。」


 受付嬢の動きが止まった。


「ガチャから?」


「はい」


 レオンは少し困ったように笑う。


「SSR確定ガチャっていうのが解放されて。それを引いたら……」


 受付嬢はフェンを見る。


「……この子が?」


「そうです」


「……。」


 受付嬢はしばらく黙っていた。


「私、ガチャ師について少し勉強し直した方がいいかもしれません」


「俺もまだ勉強中です」


「そうですよね……。」


 妙に真剣な顔で頷かれてしまった。


 リリアが横で笑っている。


「レオン、すごいことになってるね」


「俺のせいじゃないだろ」


 受付嬢がようやく我に返る。


「それで、今日はどうされましたか?」


「フェンと一緒に受けられる依頼を探そうと思って」


「なるほど」


 受付嬢は依頼板へ目を向けた。


「それでしたら……」


 いくつかの依頼書を確認する。


「採取依頼なら、比較的安全ですね」


「採取か」


「はい。魔物との戦闘が必須ではありません」


 レオンは少し考えた。


 最初の依頼としては悪くない。


 フェンがどんなことができるのか分からない状態で、いきなり強い魔物と戦わせるつもりはない。


「これにしよう」


 レオンが一枚の依頼書を指差す。


「近くの森で薬草を採取する依頼ですか」


「うん」


 リリアも依頼書を見る。


「昨日の回復草とは違う種類だね」


「そうだな」


 レオンは依頼書を受け取った。


「これならフェンも一緒に行けそうだ」


「わふっ!」


 まるで自分のことを言われたと分かったように、フェンが鳴いた。


「本当に分かってるのかな」


 レオンが笑う。


 フェンは尻尾を振る。


 明日。


 初めて、三人で依頼へ行く。


 そう決まった。


◇◇◇


 宿へ戻る頃には、空が少しずつ赤くなっていた。


 フェンは一日歩き回ったせいか、レオンの足元で眠そうにしている。


「疲れたみたいだね」


「ああ」


 レオンがしゃがむと、フェンがその足元へ丸くなった。


「今日は色々あったからな」


 レオンはフェンの頭を撫でる。


 小さな身体。


 柔らかな毛。


 昨日まで、自分の人生には存在しなかった。


 それなのに。


 もう、いない方が不自然に感じる。


「明日から、よろしくな」


「わふ……。」


 眠そうな返事。


「寝るの早いな」


 リリアが笑った。


「子どもだからね」


「俺より寝るの早いぞ」


「レオンも昨日はすぐ寝たじゃん」


「……。」


 言い返せなかった。


◇◇◇


 夕食を終え、部屋へ戻る。


 フェンはベッドの横で丸くなっていた。


 レオンは椅子へ腰掛ける。


 そして。


「あ。」


「どうしたの?」


「今日の無料十連」


「あっ!」


 リリアが手を叩く。


「忘れてた!」


「危ないところだった」


 レオンは笑った。


 毎日一回。


 それだけは変わらない。


「じゃあ、引こう」


「うん!」


 レオンが手をかざす。


「無料十連、開始」


 視界が白く染まった。


 次の瞬間。


 いつもの白い空間。


 巨大な本が現れる。


 昨日とは違う。


 今日は特別なガチャではない。


 いつもの無料十連だ。


 本が開く。


 ページが次々とめくられていく。


 白。


 白。


 青。


 白。


 青。


 白。


 青。


 白。


 白。


 そして最後の一枚。


 青い光が広がった。


────────────────


【無料10連】


《登録済》


・保存食

・火打石

・丈夫なロープ

・回復薬

・魔石(小)

・水袋

・薬草

・革の手袋

・木のコップ


────────────────


 最後のページが開く。


────────────────


★★★☆☆


《小型ランタン》


暗所を照らすための携帯用ランタン。


【NEW】


────────────────


「ランタンか」


「明日、森に行くなら使えるかも」


「そうだな」


 レオンは小型ランタンを手に取る。


 大当たりというほどではない。


 でも、こういう道具があるだけで冒険は少し楽になる。


「無駄じゃないな」


 レオンが笑う。


 ガチャの本が静かに閉じていく。


 そして。


 白い空間が消えた。


◇◇◇


 宿の部屋へ戻る。


 フェンはまだ眠っていた。


「……明日は初依頼か」


 レオンはベッドへ腰掛ける。


 隣ではリリアも明日の準備をしている。


「忘れ物ない?」


「大丈夫」


「回復薬は?」


「ある」


「水は?」


「ある」


「じゃあ大丈夫だね」


 レオンは頷く。


 フェンを見る。


 小さな身体が、静かに上下している。


「こいつが一緒だと、今までと少し違う冒険になりそうだな」


「うん」


 リリアが笑う。


「楽しみだね」


「ああ」


 レオンは明日の依頼書を机の上へ置いた。


 薬草採取。


 簡単な依頼。


 でも。


 レオンにとっては、初めてフェンと一緒に受ける依頼だ。


 どんなことができるのか。


 どれくらい戦えるのか。


 まだ何も分からない。


 だからこそ。


「明日、試してみよう」


 レオンは小さく呟いた。


 フェンが眠ったまま、尻尾を一度だけ振った。


「……聞こえてるのか?」


 レオンは笑った。


 明日。


 三人で、初めての依頼へ向かう。


◇◆◇


【あとがき】


第25話を読んでいただき、ありがとうございました!


今回は、SSR確定ガチャで仲間になったフェンとの初めての一日でした。


まだまだ小さな幼狼ですが、レオンとの距離も少しずつ縮まってきています。


そして、今日の無料10連では《小型ランタン》を獲得。


派手なアイテムではありませんが、明日の冒険で役に立ってくれそうです。


次回はいよいよ、レオン、リリア、そしてフェンの三人で初めての依頼へ!


フェンがどんな活躍を見せてくれるのか。


次回もお楽しみください!

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