第15話 冒険者ギルド
夕日に照らされた石畳を、レオンとリリアはゆっくりと歩いていた。
街へ入ってからというもの、二人は何度も足を止めてしまう。
「見て、あの剣。」
リリアが指差した先では、武器屋の店先に大剣や槍がずらりと並んでいた。
店主が大きな金槌を振るうたび、甲高い金属音が街へ響く。
「防具屋もある。」
「魔道具屋まで……。」
見たこともない店ばかりだった。
屋台から漂う香ばしい匂い。
荷馬車を引く商人。
鎧姿の冒険者たち。
ベルン村では見ることのなかった景色が、目の前いっぱいに広がっている。
「一日あっても見て回れなさそうだな。」
レオンが苦笑すると、リリアも頷いた。
「でも今日は我慢だね。」
「ああ。」
「まずは宿を探そう。」
日もだいぶ傾いている。
初めての街で、宿も決めずに暗くなるのは避けたかった。
◇ ◇ ◇
二人は街の入口近くにある宿へ荷物を預けた。
「登録だけ済ませられたら行こう。」
レオンがそう言うと、リリアも賛成する。
「明日の朝、慌てなくて済むもんね。」
宿を出た二人は、昨日ガチャで手に入れた携帯地図を広げた。
「ギルドは……こっちだ。」
「本当に便利。」
「これがなかったら迷ってたかも。」
地図を頼りに歩くこと数分。
一際大きな建物が見えてきた。
入口には剣と盾を組み合わせた紋章。
その下には大きく、
『冒険者ギルド・アルト支部』
と刻まれている。
「ここか。」
レオンは静かに扉を押した。
ギィッ……。
重い音とともに扉が開く。
中から賑やかな声が一気に聞こえてきた。
依頼書を眺める冒険者。
仲間と酒を飲みながら笑う者。
受付には数人が列を作っている。
「思ったより人が多い……。」
リリアが小さく呟く。
「みんな冒険者なんだろうな。」
二人は受付の列へ並んだ。
ほどなくして順番が回ってくる。
「ようこそ、冒険者ギルド・アルト支部へ。」
受付嬢は笑顔で頭を下げた。
「本日はどのようなご用件でしょうか。」
「冒険者登録をお願いします。」
「承知いたしました。」
受付嬢は一瞬だけ申し訳なさそうな表情になる。
「ですが、本日の登録受付は間もなく終了となります。」
レオンとリリアは顔を見合わせた。
「間に合いませんでしたか?」
「いえ、ご安心ください。」
「本日は仮登録まで行えます。」
「正式な登録と試験は、明日の朝からになります。」
「よかった……。」
リリアがほっと胸をなで下ろす。
受付嬢は二枚の用紙を差し出した。
「それでは、お名前と職業をお願いします。」
「レオンです。」
「職業は……ガチャ師です。」
さらさらと動いていた受付嬢のペン先が、一瞬だけ止まった。
「ガチャ師……ですか。」
「はい。」
そのやり取りが耳に入ったのか、近くにいた冒険者たちがこちらを見る。
「ガチャ師?」
「初めて聞いたぞ。」
「そんな職業があるのか。」
不思議そうな視線が集まる。
レオンは少し照れくさそうに頭をかいた。
受付嬢はすぐに微笑みを浮かべる。
「失礼しました。珍しい職業でしたので。」
「続いて、こちらの方は。」
「リリアです。」
「職業は聖魔導士です。」
今度は受付嬢の目が少しだけ大きく開かれた。
「聖魔導士……。」
近くの冒険者たちからも、小さなどよめきが起こる。
「若いのに聖魔導士か。」
「将来有望だな。」
そんな声が聞こえてきても、リリアは気にした様子もなく微笑んでいた。
「二人一緒に旅をしてるんです。」
その言葉に、受付嬢も優しく笑みを返す。
「素敵ですね。」
「では、お二人とも仮登録は完了です。」
受付嬢は木製の札を二枚取り出し、それぞれの名前を書き込んだ。
「こちらが仮登録証です。」
「明日の朝、この札をお持ちいただければ、そのまま登録試験をご案内いたします。」
レオンは札を受け取り、小さく息を吐いた。
「いよいよだな。」
「うん。」
リリアも嬉しそうに頷く。
ギルドを出る頃には、空はすっかり茜色に染まっていた。
「お腹空いたね。」
「宿に戻ろうか。」
二人は並んで歩き出す。
明日から始まる、新しい冒険を思い浮かべながら。
宿へ戻ると、一階の食堂は夕食を楽しむ客で賑わっていた。
木のテーブルには冒険者や商人たちが集まり、今日あった出来事を酒の肴に笑い合っている。
「いい匂い……。」
リリアが思わず鼻をくんくんと動かした。
厨房からは焼いた肉の香ばしい香りが漂ってくる。
空いていた席へ腰を下ろすと、宿の女将が笑顔でやって来た。
「いらっしゃい。旅のお客さんかい?」
「はい。今日、この街に着いたばかりです。」
「それなら歓迎しないとね。」
女将はにっこり笑う。
「おすすめはホーンラビットの香草焼きだよ。」
レオンとリリアは顔を見合わせた。
「今日倒したやつだ。」
「なんだか親近感あるね。」
二人は思わず笑ってしまう。
「じゃあ、それを二人前お願いします。」
しばらくすると、香ばしく焼き上がったホーンラビットの肉が運ばれてきた。
「いただきます。」
一口食べたリリアが目を丸くする。
「おいしい!」
「もっと硬いと思ってた。」
レオンも頷く。
「鶏肉みたいだけど、少し歯ごたえがあるな。」
「これなら人気なのも分かる。」
二人は旅の疲れも忘れ、料理を楽しんだ。
◇ ◇ ◇
食事を終え、自分たちの部屋へ戻る。
二人部屋は決して広くはないが、清潔に掃除されていて居心地は悪くない。
窓の外には、夜のアルトの灯りが見えていた。
「明日は試験か。」
レオンがベッドへ腰掛ける。
「ちょっと緊張する?」
リリアが笑う。
「少しだけ。」
「でも楽しみの方が大きいかな。」
そう言うと、レオンは右手を軽く前へ出した。
「その前に。」
「今日も引くんでしょ?」
リリアはすっかり分かっているように笑う。
「もちろん。」
レオンが意識を集中させる。
目の前へ半透明の画面が静かに浮かび上がった。
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無料10連
READY
運命ポイント 17Pt
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「行くぞ。」
『START』へ指が触れる。
景色が淡い光に包まれ、次の瞬間には満天の星空が広がっていた。
黒い表紙の大きな本が静かに開く。
十本の光が夜空へ打ち上がった。
一本目。
白。
二本目。
白。
三本目。
青。
四本目。
白。
五本目。
白。
六本目。
青。
七本目。
白。
八本目。
白。
九本目。
青。
「今日もRが三つか。」
レオンが小さく呟いた、その時だった。
十本目の光が、ゆっくりと色を変え始める。
白でもない。
青でもない。
眩い金色だった。
「金色……!」
リリアが思わず声を上げる。
夜空いっぱいへ広がる黄金の光。
大きな本の表紙に刻まれた星の紋章が輝き始める。
ゆっくりと本が開き、一枚だけ金色のページが浮かび上がった。
そこへ映し出されたのは、一つの革鞄だった。
「鞄……?」
レオンは首をかしげる。
革鞄へ青い魔法陣が浮かび、金色の文字がゆっくりと刻まれていく。
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NEW
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獲得
No.030
魔導収納鞄
★★★☆☆
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<図鑑>
古代魔導技術によって作られた不思議な鞄。
見た目は普通の革鞄だが、内部には広大な収納空間が広がっている。
重量はほとんど増えず、魔物素材や採取品、日用品まで大量に収納可能。
生き物を入れることはできない。
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「……これ。」
レオンは説明を読み終えると、ゆっくり顔を上げた。
「とんでもない当たりだ。」
リリアも図鑑を覗き込み、驚いたように目を丸くする。
「荷物、全部入るってこと?」
「ああ。」
「旅が一気に楽になる。」
レオンは嬉しそうに革鞄を抱えた。
明日から始まる冒険者としての日々。
その旅を支える、心強い相棒がまた一つ増えた。
(第16話へ続く)
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
アルトでの最初の夜、レオンは三つ目のSR《魔導収納鞄》を手に入れました。
次回はいよいよ冒険者登録試験です。新たな仲間やライバルとの出会いも始まりますので、ぜひお楽しみにしてください!




