第13話 初めての街道
朝日がベルン村を優しく照らしていた。
村の門の前には、レオンとリリアの姿がある。
二人は昨夜のうちに旅支度を済ませ、予定通り朝早く村を出発することにした。
「じゃあ、行ってきます。」
レオンが頭を下げると、父は力強く頷いた。
「ああ。無事に帰ってこい。」
母は少し寂しそうに笑いながら、小さな布袋を差し出した。
「お弁当、作っておいたから。」
「ありがとう、母さん。」
「リリアちゃんの分も入ってるからね。」
「ありがとうございます。」
リリアも笑顔で頭を下げる。
父はレオンの肩を軽く叩いた。
「世界は広い。」
「迷うことも、失敗することもあるだろう。」
「だが、お前が選んだ道だ。」
「最後まで自分の足で歩いてこい。」
「うん。」
レオンは力強く頷いた。
二人は最後にもう一度手を振ると、ベルン村をあとにした。
◇ ◇ ◇
村を出てしばらく歩く。
見渡す限りの草原。
朝露に濡れた草が風に揺れ、鳥たちのさえずりが静かに響いていた。
「本当に旅が始まったんだね。」
リリアが空を見上げる。
「ああ。」
レオンも大きく息を吸い込んだ。
村では感じたことのない空気。
それだけで胸が高鳴る。
その時。
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図鑑更新
エリア図鑑
No.003
ベルン平原
登録
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<図鑑>
ベルン村の周囲に広がる穏やかな草原。
初心者冒険者が最初に旅へ出る場所として知られ、小型魔物や薬草が多く見られる。
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「また図鑑だ。」
レオンは自然と笑みを浮かべる。
「新しい場所へ来るだけで登録されるんだ。」
「便利な図鑑だね。」
「全部埋めたくなるよ。」
レオンは嬉しそうに画面を見つめた。
すると、ふと何かを思い出したように足を止める。
「あ。」
「どうしたの?」
「今日の無料十連。」
「まだ引いてなかった。」
リリアは思わず吹き出した。
「旅に出ても最初はガチャなんだ。」
「毎日一回だけだからな。」
「これだけは忘れられない。」
レオンは右手を前へかざす。
意識を集中すると、見慣れた半透明の画面が静かに現れた。
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無料10連
READY
運命ポイント 16Pt
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「よし。」
レオンは『START』へ指を伸ばした。
景色が白い光に包まれていく。
リリアは思わず目を見開く。
「えっ……!?」
次の瞬間。
二人は満天の星空の下へ立っていた。
「すごい……。」
リリアは周囲を見回し、息を呑む。
「ここが……ガチャの世界?」
「ああ。」
レオンは慣れた様子で頷く。
「毎日一回だけ、この場所で無料十連が引けるんだ。」
二人の前に、一冊の大きな本が静かに現れる。
黒い表紙には金色の星。
パラリ。
ページがひとりでにめくられ始める。
最後のページへたどり着くと、本全体が淡く輝いた。
その中央から十本の光が夜空へ打ち上がる。
「始まる……。」
レオンは小さく息を吐く。
隣では、リリアも目を輝かせながら夜空を見上げていた。
夜空へ伸びた十本の光が、ゆっくりと色づいていく。
「今回は……。」
レオンは静かに見上げる。
一本目。
白。
二本目。
白。
三本目。
青。
「Rが一つ。」
四本目。
白。
五本目。
白。
六本目。
白。
七本目。
青。
「二つ目。」
八本目。
白。
九本目。
白。
そして、十本目。
青い光が静かに夜空へ昇っていく。
「最後もRか。」
金色ではなかった。
だが、街へ向かう旅の初日としては悪くない。
十本の光はゆっくりと本の中へ吸い込まれ、一枚目のページが開く。
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獲得
No.022
虫除け香
★☆☆☆☆
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<図鑑>
薬草を乾燥させて作られた香。
火をつけることで虫や小型の害獣を遠ざける効果がある。
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「旅では助かりそうだな。」
「夜に使えそう。」
リリアも嬉しそうに頷く。
二枚目。
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獲得
No.023
小型テント
★★☆☆☆
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<図鑑>
二人までなら快適に眠れる軽量テント。
組み立ても簡単で、初心者冒険者にも人気。
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「ちょうど欲しかったやつ!」
レオンが思わず笑顔になる。
「野宿でも安心だね。」
三枚目。
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獲得
No.005
保存食 三日分
登録済み
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「また保存食だ。」
「旅なんだから、あって困らないでしょ。」
「まあ、それはそうだけど。」
苦笑するレオン。
四枚目。
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獲得
No.009
火打石
登録済み
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「今日は野営できそうだな。」
「便利な職業だね。」
リリアが感心したように呟く。
五枚目。
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獲得
No.024
携帯地図
★☆☆☆☆
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<図鑑>
主要街道と近隣の街が記された携帯用の地図。
細かな地形までは分からないが、旅の道しるべとして役立つ。
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「これも当たりだ。」
「道に迷う心配が減るね。」
六枚目。
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獲得
No.010
木の盾
登録済み
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七枚目。
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獲得
No.025
水袋
★★☆☆☆
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<図鑑>
丈夫な革で作られた携帯用の水袋。
長時間の移動でも十分な水を持ち運べる。
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「これも旅向きだな。」
八枚目。
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獲得
No.018
解毒薬
登録済み
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九枚目。
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獲得
No.003
木のコップ
登録済み
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そして最後。
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獲得
No.008
丈夫なロープ
登録済み
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「今回は旅道具が多かったな。」
レオンは満足そうに頷いた。
「戦うためだけじゃなくて、旅を助けてくれるものも出るんだね。」
リリアは感心したように言う。
「ああ。」
「ガチャって、案外こういう物の方が役に立つことも多いんだ。」
本が静かに閉じる。
星空がゆっくりと薄れていき、二人の視界は再びベルン平原へ戻った。
「さて。」
レオンは新しく手に入れた携帯地図を広げる。
「まずは冒険者の街を目指そう。」
リリアも隣から地図を覗き込む。
「街までは三日くらいかな。」
「途中で何があるか楽しみだ。」
レオンはそう言って歩き出した。
まだ知らない景色。
まだ埋まっていない図鑑。
そのすべてが、二人を待っている気がした。
新しく手に入れた携帯地図を頼りに、二人はベルン平原を歩き続ける。
空は高く、雲一つない青空。
吹き抜ける風が心地よい。
「平和だね。」
リリアが辺りを見回しながら笑う。
「このまま街まで何もなかったら楽なんだけどな。」
レオンも笑い返した、その時だった。
ガサッ。
背の高い草が揺れた。
二人は同時に足を止める。
「……何かいる。」
レオンが腰の短剣へ手を伸ばす。
もう一度、草むらが揺れた。
次の瞬間。
白い影が勢いよく飛び出してくる。
「速い!」
鋭い一本角を額に生やしたウサギだった。
「右!」
リリアの声が飛ぶ。
レオンは反射的に身をひねる。
角が服をかすめ、そのまま地面へ突き刺さった。
「危なっ!」
魔物はすぐに角を引き抜き、再び距離を取る。
「これが……。」
「ホーンラビットか。」
レオンは短剣を構え直す。
見た目は可愛らしい。
しかし、その突進速度はゴブリンよりも速い。
「次、来るよ!」
リリアが杖を構える。
ホーンラビットは後ろ足で地面を蹴ると、一直線にレオンへ向かって駆け出した。
「今だ!」
レオンは一歩だけ横へ踏み込み、すれ違いざまに短剣を振る。
ザシュッ。
短剣がホーンラビットの脇腹を浅く切り裂く。
「ギィッ!」
魔物は小さく鳴きながら距離を取った。
「浅い!」
「動きが速すぎる!」
その瞬間。
リリアの足元に魔法陣が広がる。
「ライトアロー!」
白い光の矢が放たれた。
ホーンラビットは避けようと飛び退く。
「レオン!」
「分かってる!」
避けた先へ飛び込み、短剣を振り抜く。
今度は首元を正確に捉えた。
魔物は二、三歩よろめき、そのまま静かに倒れる。
「ふぅ……。」
レオンは息を吐いた。
「思ったより強かったな。」
「でも、連携は上手くいったね。」
リリアが微笑む。
その時だった。
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図鑑更新
魔物図鑑
No.004
ホーンラビット
登録
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<図鑑>
ベルン平原などの草原地帯に生息する小型魔物。
額に生えた一本角を使った高速突進が最大の武器。
肉は柔らかく、初心者冒険者の間では食料としても人気が高い。
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運命ポイント
+1Pt
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「よし。」
レオンは小さく拳を握る。
「また図鑑が増えた。」
嬉しそうなその姿を見て、リリアは思わず笑った。
「普通は魔物を倒して喜ぶところなのに。」
「レオンは図鑑なんだね。」
「もちろん。」
レオンは迷いなく頷く。
「まだ世界には、見たことのない魔物がたくさんいる。」
「全部登録したい。」
「全部?」
「全部。」
即答だった。
リリアはくすっと笑う。
「本当にレオンらしい。」
ホーンラビットを解体しようと近付いた、その時。
草むらの奥から、再びガサガサッという音が響いた。
「……まだいる。」
レオンは短剣を構え直す。
しかし、音は一つではなかった。
一つ。
二つ。
三つ。
草原のあちこちが揺れ始める。
リリアが表情を引き締める。
「囲まれた……!」
姿を現したのは、一匹ではない。
五匹ものホーンラビットだった。
額の角をこちらへ向け、ゆっくりと距離を詰めてくる。
レオンは短剣を握り直し、小さく息を吐いた。
「一匹なら新人向け……じゃなかったのかよ。」
(第14話へ続く)
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
旅が始まって最初の戦い。
レオンとリリアの連携、そして図鑑がまた一つ埋まりました。
ですが、冒険はそう簡単には進みません。
次回は二人にとって初めての本格的な集団戦です。
ぜひ次回もお楽しみください!




