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うちの学校の聖女様は、私の前だと何故か素になる  作者: yui/サウスのサウス


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7 聖女様と夢の中で

普段、夢を見ることが少ない私。


昔は悪夢に魘されたことがほとんどだった。


自殺する夢、殺される夢、飛び降りてひたすら宙を落ちる夢。


私を引き取って最初の頃は魘される私を叔父さんがよく安心させてくれたものだ。


大きくなって、一人暮らしになって悪夢はそれ程増えてないけど、その日の夢は少し趣が違った。


制服の私と聖女様が二人で座ってる。


私は当然口も動かせないし何も干渉出来ないけど、聖女様と私は恋人繋ぎで手を繋いで愛を囁きあっていた。


違う、私そんな事してない!


でも悪い気がしないのはなーぜなぜ?


『幸恵』


名前を呼ばれる。


ドクンと胸が高鳴る。


なんで?名前なんて叔父さんや瑞希にだって呼ばれたことあるのにこんな事はなかった。


夢なのに自分が変になってるのは冷静によく分かった。


『愛してます』


愛なんて知らない。


知らなかった。


叔父さんの向けてくる家族愛、瑞希の向けてくる友愛なら知ってる。


そのどれでもない愛なのはなんか分かった。


胸が変になりそうなのに、穏やかで不思議と心休まるそんな変な感じ。


『私も愛してる』


私じゃない私が答える。


勝手に答えるな。


そんな気持ちと間違ってない何とも複雑な変な感じ。


触れ合ってる手はイメージでしかないはずだ。


それなのに妙にリアルなのは何故だろう。


なんでこんなに……悪い気しないのか。



画面が一変して、隣にいた聖女様が消えてしまう。


喪失感が、安堵が全て消えたような絶望感。


必死に名前を叫ぶ私。


うっすらと闇の中遠くに聖女様の背中が見えた。


走る。必死になって追いかける。


でも届かない。


どれだけ進んでもどれだけ叫んでも聖女様は遠くなる。


聖女様は私をチラリと見た。


『さようなら』


やだ。ダメだよ。


行かないで。


置いてかないで。


私を……私を一人にしないで。


『カレン!』


遠ざかって消えてく背に私は必死に手を伸ばして――。





「……夢だよね」


目が覚めるとじっとりと汗ばんでいた。


普段、寝相が良いとは言えないけどいつも以上に悪いのは枕の位置でなんとなく分かった。


むくりと起きて時計を見ると朝の5時少し前。


まあまあ早いがお弁当本気で作る時よりは少し遅い時間。


「はぁ……変な夢見た」


なんで私は聖女様と愛を囁いてから、引き裂かれてたのだろうか。


「悲恋なんて柄でもないのになぁ」


普段から純愛の方が好きな私からしたら割と悪夢だが、夢とは恐ろしいものだ。


現実はどうであれ、夢の中の心持ちは本物のように思えて仕方ない。


起きてから内容が朧気になってくるが、とりあえずだ。


「お風呂入ろうかな」


変な汗かいたし、シャワーだけでも浴びてその後は……まだ時間あるし約束の時間までココアでも飲みながら本でも読んでようかな。


コーヒーでもいいけど、苦い気持ちが残ってるからか甘いものがいい。


もう一眠りしてもいいけど、もう一度寝て続きを見るのが少し怖い。


「夢なのになぁ」


悪夢は懲り懲りだ。


のっそりと立ち上がって風呂場に向かうとシャワーでスッキリする。


セミロング中間くらいの髪型だとこういう時は少し楽だ。


昔、ロングの時期があったけどあれは大変だった。


結局叔父さんに手伝って貰ってたし、そう思うと聖女様や瑞希みたいに長い髪を楽しめてる人は素直に凄いと思う。


手入れも面倒だろうによくやるよ。


風呂から上がって髪の毛を乾かしていると、ふとスマホの画面にメッセージが入ってるのに気づく。


「……昨日の夜か」


割とすぐ寝たし気づかなかった。


開くと聖女様からメッセージ。


『良い夢を見れそうです』


可愛いスタンプ付き。


そういえばアルバイト決まってから連絡先交換したなぁと思いつつ、さっきの今でこれを見た私は何を思えばいいのやら。


「まあ、私の情緒が不安定だったということで」


そういう事にしておこう。


環境の変化を敏感に感じる繊細なタイプではないにしろ、メンタル死んでる低燃費陰キャで鬱になってない程度に拗らせてるから仕方ない。


そう思うが、ふと叔父さんが昔言ってたことを思い出す。


『夢はその人の願望や時に自分の先を見せるからねぇ』


……違う、そんな願望ないし、そんな先も多分ない。


叔父さんも適当を言うものだと思いながらココアを入れて飲みつつ未読のラノベで気分を変える。


こういう時こそ現実逃避がてら想像の世界に飛び立つべきだよね。


パラパラとページをめくる度私は創作の世界へと入っていく。


そして三時間後。


「うぅ……ヘルンぅん……ズビズビ」


シナリオに大号泣する私がそこに居たのだが、あれはずるい。


感情移入系はこれだから死んでるメンタルにも突き刺さっていけない。


泣きゲーやこういう泣き系の物語は死んだメンタルを動かしてくれる。


創作とは偉大なものだと思う私であった。


ちなみに夢中になって、瑞希との約束に遅れるなんてヘマはしない。


約束は守りたい派だからね、私は。

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