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うちの学校の聖女様は、私の前だと何故か素になる  作者: yui/サウスのサウス


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16 聖女様とデート3

「揚げたてのポテトは美味しいですね」

「世界の真理に気づいたね」


運良く揚げたてが提供されてその味を知ればテイクアウトではく店に来たくなる。


これこそ狡猾な店側の狙いなのだろうと偏見を抱きつつ、私も揚げたてを楽しむ。


「鈴木さんが前にテイクアウトしてきてくれた時も美味しかったですけど、その場で出来たてを食べるのも良いですね」

「でしょ」


学校近くのファーストフード店から急いで持ち帰ってきても距離が少しあるだけで大分味わいも違ってくる。


冷めてても美味しいと思える貧乏舌だけど、可能なら出来たてを食べたいと思うのは自然なことだろう。


「ポテト一つあげるね」

「では私もお返ししますね」


ポテトとポテトを交換するという実に無駄なことをしているが、聖女様は楽しそうだ。


「この後はどうするんですか?」

「まだ時間はいいんだよね?」

「はい。今日一日は空いてます」


そうなると他も回れるか。


「……鈴木さんともっと早く出会ってたら、色々変わってましたかね」


何をとは聞くまい。


「私、お友達はそれなりに居るんです」

「うん、知ってる」


聖女様フェイスでの繋がりは広くて浅くしてることも私は知ってる。


「でも、誘われてもこういう所には行きませんでした」


興味がなかった訳じゃないだろう。


事実、こうして初めての場所を満喫してるし。


誘われた相手と来る気がなかったということか。


「馴れ合いを否定はしません。お友達関係を拒否はしません。でも連れ出してくれる人は本当の私を知ってて好いてくれてる人だけと決めてましたから」


それはきっと、複雑な人間関係の柵なんかと一緒にある聖女様のちょっとした願望。


譲れない何かだったのだろう。


「私は合格ってこと?」

「そうでなければここには居ませんよ」


悪い気はしない。


内なる私の面倒な女の部分が歪んだ悦を感じてることも。


分かってる、きっとそれは今は小さくて、気持ちが想いがハッキリした時、大きく醜くなる欲なのだろう。


育てるべきじゃないそれを私は切り捨てることが出来ない。


私に心がある以上、逃れられない定めのようなもの。


醜くなった私を聖女様はどう思うか。


「鈴木さん。来月から期間限定のフラッペが出るそうですよ」


楽しげに小さな宣伝用の立て札を眺める聖女様。


また来たいた仰せのようだ。


「美味しそうだし、また来ようか」

「ええ、是非行きましょう」


即答される。


いつのも外面聖女様スマイルではなく、愛染カレンという本人の素の笑顔で。


この笑顔をもっと見たいと言えば困るだろうか。


まずもって更にグイグイくる様が見えるが、拒否された時私は母みたいにならないかという恐怖もある。


空恐ろしい妄想をさておき、シェイクを飲む。


甘いものはいい。


そう思って一息ついておくと、伸びてきた手が続けて私の口をつけたシェイクを飲んで艶やかに笑みを浮かべる。


……艶っぽい顔するのやめません?


独り占めしたくなるので。




実に健康に宜しくないお昼を済ませてから、何店舗か近くの店を回る。


服屋で服を物色しつつ、冷やかしついでに試着させて貰ったり、ランジェリーショップで聖女様のサイズを知って絶望したり、靴屋でちょっといいのを見つけて買おうか悩んだり。


聖女様は自分の服より私に着せたい服の物色が多い気がしたが、私は着せ替え人形ではないんだけどなぁ。


そう思っても楽しげな聖女様を振り切れる訳もなく。


最終的に聖女様のポケットマネーで何着も私の服を買おうとしたのを阻止できたのは良かった。


そんな勿体ないお金は使うべきじゃないしね。


そうして見て回ってから本屋にも少し寄る。


漫画やラノベ、雑誌コーナーなどを回って、純文学の新作でちょっと面白そうなのを見つけていると、聖女様は本屋に隣接されてるカードコーナーが気になったようなので少し見ていく。


「大人が多いですね」

「今日は大会みたいだね」


カードゲーマーの年齢層が高いのは置いておいて、小さくとも大会となればそれなりに盛り上がってるようだ。


本屋に併設されてるので、大歓声が静かな本棚の間をすり抜けてしまっているが、ご愛嬌というやつだろうか。


「確か、愛染さん何種類かカードゲームコレクションしてたね」

「何となくで集めてました。対戦したのは鈴木さんだけですが」


ルールは素人同然でも、あれだけ完成度の高いデッキまで作ってたのだから流石というべきか。


ネットがあるからそちらを参考にしたのだろうか。


何にしてもカードゲームを大人が嗜んでるのも少し分からなくない気はした。


のめり込む程ではないけど、誰かとワイワイやるのは楽しいしね。




本屋を物色した結果、地味に追いかけてる四コマ系の漫画家さんの新刊が出てたのでそれと聖女様のオススメの作者さんの小説を買ってしまった。


ここで出費する気は無かったのになぁと思いつつも、悪くない買い物にホクホク。


外に出るとクレープの屋台から甘い匂いが。


「折角だし食べる?」

「いいですね」


私はシンプルなイチゴを選び、聖女様は色々乗ってる季節のクレープをチョイスしていた。


甘いものはなんて罪深いんだと思いつつ食べていると、聖女様の口元に少しクリームがついてしまう。


「愛染さん。ついてるよ」

「ええ。ですので取ってください」


文脈おかしくない?


そう思いつつも、わざとだと分かりつつハンカチで拭くと少し不満げにしてからまたクリームを自然に口元につけた。


「テイクツーです」


隠す気ゼロっすね。


そう思いながらもこれ以上どうしろというのかと少し考えて、指でそっとクリームを掬って変な音が心臓から聞こえる前にペロリと舐める。


これでどうだと視線を向けると満足そうに続きを食べはじめる聖女様。


羞恥心とかないのだろうか。


そう思いながら遅れてやってくる変なドキドキを隠して私もクレープを食べて誤魔化す。


「鈴木さん。口元ついてますよ」

「え?そう?」

「はい。ばっちりとクリームがついてます」


そう言って聖女様はそっと私の頬に手を当てるとつぅーと這うように唇に指を這わせる。


擽ったさとゾクリとした謎の感覚を抱いていると聖女様は堪能するように指を這わせてからゆっくりとクリームを掬いあげて、楽しむように眺めてから、ペロリとそれを色っぽく舐める。


「ご馳走様でした」


見てるこっちがドキドキさせられる。


聖女どころか魔女だろうと思わなくないくらい色っぽすぎるが、素直に反応してやるのも違う気がして気にしてない風を装って「ありがとう」と言っておく。


そんな照れ隠しを見抜いてる聖女様は笑顔でそれを見守っていたが、今日一楽しそうなのが私をからかう時ってのも如何にも聖女様らしいよね。


分かってて翻弄される私も私だけど。




ゲームセンターも近いのでついでに寄ってく。


クレーンゲームや音ゲーに興味津々な聖女様と試しにということで色々やってみるが何をやらせても聖女様は上手かった。


「太鼓も良いかもしれませんね」

「習ってないの?」

「楽器は一通り抑えてますが、太鼓は講師予定の方が飛んでしまって延期になってそれっきりですね」


よく分からないけど、習うはずの先生の都合が悪かったということだろうか。


そういう事にしておこう。


「持ち上げるんじゃなくて引っ掛けて動かすんですね」

「フィギュア系はそうだね」


箱物は大抵片方のアームの爪で動かして落とす系が多いけど、聖女様は見ただけで察したように一発で落として見せた。


「取ったけどどうしましょうか」

「まあ、荷物になるね」


二人とも特段推しキャラでないやつだし。


「良かったらどうぞ」


そう思っていると、聖女様の行動は早かった。


私たちの前にやってて、取れなくて残念そうな中学生のカップルに渡して荷物を軽くした。


「渡して良かったの?」

「試しでやったやつですし、初々しいカップルへの聖女からの施しですよ」


まあ、あのカップルからしたそうだろうな。


とはいえ。


「こんな時まで聖女になる事ないと思うよ」


不意にそんな言葉を零してしまう。


知ってるからだろう。


外面の聖女という仮面を聖女様は好きでないことを。


そして同時に私の前でその仮面を見せられると私はモヤッとしてしまっていた。


「ふふ。そうですね。その通りかもしれません」


ややあってから、そんな内心を察したように楽しげに笑う聖女様。


「鈴木さんは可愛いですね」

「褒めての?馬鹿にしてるの?」

「褒めてますよ。そんな鈴木さんだから、私も素顔が見せたくなるんです」

「あっそ」


照れ隠しなんてバレバレだろうにそう答えてしまう。


「鈴木さん」

「なに?」

「ご機嫌取りさせてください」

「……あれ欲しい」


まんまと乗るのはあれだけど、近くのぬいぐるみのクレーンゲームを指さすと聖女様は一発で取って見せた。


「どうぞ」

「ん」

「それにしても可愛いですねこの子。私も欲しくなりました」

「じゃあ、今度は私が取るよ」

「そうですね。私のナイト様にお任せしますね」


誰がナイトだよと思いつつ、チャレンジ五回で柄違いの同じやつを獲得。


「結局、手荷物増えちゃったね」

「ですね。でもお揃いは誰にも譲れません」


本日の施しは終了のようだ。


それを是としてる私はきっと聖女様のファンからいつか刺されそうだなぁと地味ーに怖くなるがそれはそれ。


「愛染さん」

「なんですか?」

「手荷物はあるけど、まだ付き合ってくれる?」

「喜んで」


ここでぬいぐるみを取ったのは誤算だけど、お揃いに喜ぶ聖女様に置いてけと言えるわけもなし。


まあ、出かけた時に荷物が増えるのはいつもの事割り切ってゲームセンターを一通り回ってからウインドショッピングという名の冷やかしを楽しむ。


瑞希と回る時とは違った楽しさを感じてるけど、聖女様だからなのだろうか。


そう思いつつ、チラリと私のぬいぐるみと自分のぬいぐるみを見て微笑む聖女様の笑みに惹かれてはいかんいかんと正気に戻ったりしてる私はかなり情緒が不安定な気がする。


こんなに心が揺れ動いてるのはいつぶりだろうか。


叔父さんや瑞希と会う前、母と過ごしていた時はただひたすらに痛い思いをしたくなくて必死だった。


殺されなかっただけマシだと思えるくらいには客観的に見て危うかったけど、叔父さんに拾われてようやく人並みの心が戻って、瑞希と出会って普通の私になった。


そんな私の本質を無意識に引き出そうとするように聖女様は私の心をかき乱す。


出会ってから今日まで、私は聖女様に振り回されっぱなしだ。


そしてそれが嫌ではない自分がいる。


こうして過ごしてるだけで私は私の知らない私が顔を見せようさえしてる。


そしてその中に聖女様への気持ちへの答えも混じってるのが何となく分かった。


それでも、いやだからこそ今はこの時間を楽しみたい。


きっと、この後無視できないくらいその気持ちを自覚させられるとしてもだ。

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