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うちの学校の聖女様は、私の前だと何故か素になる  作者: yui/サウスのサウス


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15 聖女様とデート2

喫茶店で時間を潰していると、開店時間になったので勘定して無愛想なマスターに別れを告げて店を出る。


最初に行くのは喫茶店から少し歩いた位置にある大きな建物。


大通りに面しており、駅近くで人の流れもそこそあるそこは8階建てで、複数の店がテナントとして入っており見て回るのが楽しいのだが、真っ先に向かったのは6階にあるアニメ系の専門ショップだ。


「なるほど。専門店と言うだけありますね」

「まあ、都会に比べたらあれだけどね」


慣れ親しんだ場所だけど、都心の規模とは比べるべくもない程に小さい。


それでも田舎においては数少ない専門店であり、通い慣れてるせいか不思議と足が向かう。


グッズを買うだけならネットもあるけど、実際に目で見れるのは大きい。


「少しは興味出そう?」

「ええ。こういう店は来たことありませんから」


楽しげに並んでる商品を眺める聖女様。


「これは前に鈴木さんが貸してくれた作品ですね。アニメ化してるとは聞いてましたがグッズが少ないですね」

「あー、それね。あんまりアニメ跳ねなかったからかもね」


田舎というの差し引いても残ってるのが缶バッチ系とマスコットのアルパカもどきのボールペンだけなのは少し寂しいところ。


「鈴木さんは何か買うんですか?」

「うーん、何かあればって感じかなぁ」


グッズ系は買い出すとお金が溶けすぎるので良くないけど、たまにめちゃくちゃ欲しいのがあったりするし見てるだけても楽しい。


結局、私はお気に入りの作品のアクリルカードのランダムパックを三つほど買うに留めておく。


聖女様は残ってたアルパカもどきのボールペンと何作品かの小物をちょこちょこと、私と同じアクリルカードを数個買ってたが、ボールペンは1200円近くしてたので素直にその財力が羨ましい。


「お待たせしました。何を見てるんですか?」

「ガチャだよ」


先に会計が終わって入口近くのガチャを眺めてると聖女様も会計を終えて興味深そうに眺める。


「これ、可愛いですね」


指さすのは私も気になってたモンスターをゲットする系のキャラのやつだ。


この前来た時は無かったし新作っぽい。


「お金を払ってランダムで出てくるというのは良い商売ですね」

「欲しいの出ない時はめちゃくちゃ荒れるけどね」


全4種類で同じキャラが三連続でダブった時ほど世界を呪ったことはない。


「せっかくですしやりましょうか」

「そうだね」


お釣りで小銭はあるので、先に私が400円を入れてハンドルを回すとガタンとカプセルが落ちてくる。


「うーん。ハズレか」

「では、私ですね」


心做しかウキウキしてる聖女様もお金を入れてハンドルを回すと出てきたのは私が欲しかったキャラだった。


「これは鈴木さん行きですね」

「いいの?」

「ええ。次は欲しいの当てます」


そう言われたら遠慮なく受け取ることにして、お礼にもう1回私もガチャを回して試行回数を稼いでおく。


はい、二連ダブり。


知ってた。


「あ、出ましたね」


その次に回した聖女様はあっさりと欲しいキャラを引き当てる。


「なるほど、これは楽しいですね」

「でしょ?」


ダブったキャラを恨めしく見つつ、さっきのと交換という挺で聖女様に渡す。


「ありがとうございます」


心做しか先程自引きした時よりも嬉しそうに受け取る聖女様。


欲しいキャラじゃないのに喜んでる理由を察せる程度には私は鈍くないらしい。


でも、勘違いだと恥ずかしいから口にはしない。


気のせいってこともあるし。


「あ、少し待って」

「どうかしましたか?」

「少し気になるのがあって」


さっき出てきたアニメ系の店で見落としてたキャンペーンがあったのを発見。


対象作品を1500円以上でランダムステッカー1つか……むむ、高いなぁ。


しかしどれが出ても嬉しいし欲しいなぁ。


「ごめん、もう一度買ってきてもいい?」

「ええ。私はもう少しここで見てますね」

「ごめん、ありがとう」


そう言って聖女様に断りを入れてから、ほとんど目の前のさっきの店に戻って、置いてあるコーナーで商品を手に取ろうとして……その隣を見てはたと止まる。


さっきはこの辺は見てなかったけど、聖女様の好きなキャラと私の推しキャラが一緒になってるジオラマ風のやつを発見。


むむむ……一つ1200円かぁ。


これ買うとすればステッカー諦めないとだけど、どうしたものかと少し悩むが、残りの個数と聖女様の様子を思い出して自然と手に取っていた。


仕方ない。見つけてしまった以上、買うしかない。


そう思ってレジで会計を済ませて袋に入れてから聖女様の元に戻る。


聖女様はガチャコーナーを楽しげに眺めており、その聖女様に声をかけようとしてる連中も何人か見かける。


「お待たせ、愛染さん」


声をかけられるより前に愛染さんに声をかけると、愛染さんは笑みを浮かべて「買えましたか?」と聞いてきた。


「まあね」

「それなら良かったです」


本当は諦めて別の品にしたのだが、まあ後で驚かせたいし黙っとこう。


「見てるだけで楽しいですね」

「だね。その気になったら湯水の如くお金が消えてくよ」


貧乏女子高生としてはどうかと思うけど、オタクの血に逆らいすぎるのも良くない。


「他のエリアも見てく?」

「鈴木さんのエスコートに任せます」

「じゃあ、見てこうか」


気になってる店もあるようだし、お昼までもう少し時間がある。


そう思って下の階に降りると軽く小物が置いてある店を冷やかしてから、中学生がハマってそうなパワーストーンの店やら、小さめの服屋も見ていく。


「客層がガラッと変わりましたね」

「まあ、あの階が例外だと思って」


エステやネイルなんかもあるけど、流石にお昼が遅くなりそうなのでスルーとして、ついでに併設させてる百均も見ていく。


「本当に百円の品だらけなんですね」

「最近はそれ以外も多いけどね」


あと、何故かアニメ系のグッズが増えた気がする。


「このカードのやつはさっきの店にもありましたね」

「あー、こっちのはガム入ってないんだよ」

「そういう違いなんですね」


面白いと笑ってから、季節物のコーナーで足を止める。


「そういえば七夕もうすぐか」


期末テストが終わって、あと少しで7月に入る。


後半には夏休みだがその前に七夕なんてものもあったな。


「鈴木さんは短冊に願い事してるんですか?」

「昔は叔父さんと少しやってたかな」


瑞希がデカデカと『可愛い子と出会いたい!』と書いてたのだけは妙に覚えてる。


「愛染さんは?」

「近藤が昔、笹を貰ってきてやってましたね。最近は腰が痛いというので止めさせてますが」

「もしかして現地調達してた系?」

「ええ。持ってる土地に笹が生えてる場所もあるようですね」


スケール感が違うなぁ。


「鈴木さんには願い事はありますか?」

「そりゃあ、叶えたい事は山のようにあるよね」


お金が欲しい、将来安泰で居たい、叔父さんが健康で報われますように。


数えたらキリない程度には凡人並の妄想はある。


「愛染さんはどうなのさ」

「今願うのは二つですね」

「ほうほう」

「一つはもう少しこの時間を楽しみたいという事。もう一つは」


何だろうと続きを待つと「秘密です」と楽しげな答えが返ってきた。


「気になるなぁ」

「そのうち分かりますよ」

「そうなの?」

「ええ」


ならそういう事にしておこう。


「似合いますか?」


スチャッと星型の派手なサングラスを付けて見せる聖女様。


「あんまり似合う人居ないと思うやつだけど、悪くないよ」


七夕コーナーに置いてある品じゃない気がするが、こんなネタグッズでも普通に魅力に変換できるのは1種のチートだと思います。


「では、鈴木さんで試しましょうか」


そう言って私にも星型のサングラスを付ける聖女様。


「似合う?」

「愛嬌がありますね。首輪とセットなら更にいいと思います」


程よく滑稽ということか。


聖女様的にはアリなのだろうけど。


ふと時計を見ると程よい時間になっていた。


「そろそろお昼向かおうか」

「そうですね。どこで食べるんですか?」

「愛染さんが前に絶賛してた場所」


そう言うと満足気に頷いて案外しろと言わんばかりに手を差し出してくる聖女様。


様になるその手を少し迷ってからエスコートするように取って向かうのはファーストフード店。


うん、絶対エスコートするような場所じゃないけど、聖女様は直接店に来たことが無いので実に楽しげだ。


こういう表情を見ると、悪い気がしないのだから我ながら己の単純さに呆れてしまうが、そんな自分がこの時だけは嫌いではなかった。


つまりそういう事なのだろうと勝手に納得しておく。


何の話かって?


私は聖女様の素の笑顔に弱いって話だよ。


そういう事にしておいて。


そう思いながらウキウキな聖女様とレジに並んで順番までメニューを眺める。


「迷いますね」

「そうだね」


不思議とレジで並びながら待つ前にメニューはある程度決めててもやっぱり直前であれもいいな、これもいいなと迷うのが人という生き物。


ファーストフード店は安い美味いがウリだし、ジャンクなものはたまに無性に食べたくなるが、いつも通りか少し冒険するかで迷うのも毎度のことだ。


「シェイクというのも美味しそうです」

「あー、シェイクね。イチゴが私は好き」

「そうなんですね。炭酸と迷います」


流石に両方飲むとお腹壊しそうだし迷うよね。


「いっそ、両方Sで頼んでみるとか?」

「それもいいですね」


冗談で言ったけど少し真面目に検討する聖女様。


ジャンクフードには炭酸という古の決まりがあるが、シェイクでもあり。


かの偉人もそう言ってたような気がする。


結局、聖女様は私とシェイクを半分こする事に決めたらしい。


私の意思が介入する余地はなかった。


別にいいけど。


私も一つ丸々飲み切るよりは分けて確実に飲みきった方が楽だし。


ただ、喫茶店でコーヒー飲んでるし朝もコーンスープとコーヒー飲んでるのでお腹の心配はしなくもない。


その程度なら大丈夫だとは思うけど、変なタイミングでお手洗いに駆け込むのは聖女様の前では何となくしたくないんだよね。


瑞希なら別に気にしないし、叔父さんでも多分気にしない。


聖女様にそういう姿を見せるのはなんというか少し乙女としての矜恃に関わる気が。


こんなんでも私は一応女の子。


そして気になってるかもしれない人の前で醜態を見せる可能性は極力減らしたい。


既に色々見られてて今更かもだけど、それはそれ。


乙女としての自覚が芽生えてきた今日この頃でありんした(今更)。

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