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うちの学校の聖女様は、私の前だと何故か素になる  作者: yui/サウスのサウス


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13 先達のアドバイス

「はろはろ〜」


期末テスト明け、珍しく一時間目の前に登校してきた瑞希は私のスマホを覗き込んで首を傾げる。


「珍しいね、幸恵が店調べてるの」

「そう?」

「普段検索なんて画像とか攻略サイト漁るくらいでしょ?」


それは瑞希の方では?


いや、この親友はそれなりにデート先とかホテル調べたりもしてるか。


「なになに?もしかしてデートですかなぁ」


にまぁとからかう気満々の笑みを浮かべる瑞希だが、そんなんじゃない。


「少し先約があってね」


テストが終わったら聖女様と遊びに行くと約束をしていた。


正確には瑞希のせいで誤解を与えてからの流れだが、それは割愛。


私にとってはいつも通りで、聖女様にとってはあまりない行かない場所を回るつもりだが、いつも行く場所以外にも何かないかと少し気になって調べてただけだ。


「私にサプライズなら可愛い子が居る場所で」

「違うし、瑞希の場合どこに居ても気になる子にちょっかい出すでしょ」

「ちゃんとフリーな子を選んでるってば」

「そんなのよく分かるね」

「分かるよ〜。フリーな子ってそういう欲求不満な感じとか寂しがってる感じが出てるからねぇ」


前者はともかく後者を見抜けてて尚修羅場があるのだから女とは恐ろしいものだ。


「んでんで?相手は?」

「察しの通り」

「あ〜、やっぱりかぁ。進展あったの?」

「お陰様でね」


認めたくないが、半分くらいは瑞希のお陰かもしれない。


「安いホテルならオススメはね〜」

「いや、行かないから。瑞希みたいに私ケダモノじゃないし」

「純愛の使徒に向かって失礼な」

「その純愛の使徒様にお尋ねします」

「何かね、サチエもん」


誰がサチエもんだ。


「外面が良くて、世間知らずっぽそうで俗世に興味津々な子のエスコートってどう?」

「普通の子よりちょろいね〜。夢見がちな子ならなおよし」


そういえば、お嬢様校の子を口説いたとか前に話したような。


「やっぱり女子校もいいよね〜」

「行けば良かったじゃん。ていうか瑞穂姉は高校は女子校だったんでしょ?」

「そりゃまあ、お姉ちゃんはねぇ。私の場合は好きな子がここ受けるって言ってたし」


不純な動機だなぁ。


「それに幸恵もここ来るって決めてたでしょ?」

「学力的にここが安泰だったし」


進学率や就職率を考えても私の成績だとこの学校がギリギリ安牌だったんだよね。


うちの高校、進学校としてもそれなりだけど、就職の募集もかなり来るって聞いてるし。


その点で言えば、目の前の親友はともかく聖女様はウチよりも上の高校でも行けただろうになんだってうちの高校にしたんだろうか。


今度聞いてみるか。


「でも、正直ホッとしたよ」

「何が?」

「幸恵、叔父さんが言ってくれなかったら平気で転校して県外の高校選んでたでしょ」

「そりゃあ、まあね」


大人の事情ってやつなら仕方ないと思ってたし。


「絶対、幸恵は違う高校に行ったら私の連絡スルーするでしょ?」

「そんな事ないって」


多分。


「幸恵、意外と薄情だしなぁ」

「そういえばさ。昨日これ出たんだけど」


チラリとカバンからスリーブに入ったカードを取り出す。


そのカードは瑞希が推してるキャラのレアだった。


「サチエもんってば最高!愛してる!」


やるとは言ってないのにチュッと投げキッスして奪ってく親友に呆れていると、親友がふと聖女様の方を見た。


「どうしたん?」

「ん〜。嫉妬の視線は気持ちいいなぁって」


嫉妬ねぇ。


「それで?私そんな薄情だと思うわけ?」

「事実、幸恵って県外まで私に会いにこないよね?」

「交通費って結構お高いだろうし」

「そういうとこだよ!まったく、私は幸恵のこと愛してるのに」


友愛的なものであると願おう。


「まあ、それに高校生活に幸恵居た方が楽しそうじゃん。だから幸恵の叔父さんには感謝してるんだ」

「私もだよ。いつか恩返ししたい」

「まさか幸恵……叔父さんに身体を……」

「アホ」

「あうん!」


思わずデコピンすると変な喘ぎをあげる親友。


なんで私の周りには演技上手が多いのやら。


「冗談はさておき、それで幸恵はデートはどこに行くの?」

「デートって決めつけるんだ」

「違うの?」


違うよ。


聖女様と遊びに行くだけ。


「ふーん。幸恵の中ではそうなんだろうねぇ」


そう言ってニマニマしてチラリと聖女様に視線を向ける瑞希。


聖女様はいつも通り平民たるクラスメイト達を柔らかく対応してるが、何度か視線があった気がする。


「幸恵さ、知ってる?気になる人と出かけるのもデートなんだよ」

「初耳だけど」

「サチエもんは万能なロボットじゃないからね〜」


原作の方もネズミが苦手な欠点あるけど、確かにあれと比べられても困るなぁ。


いや、そんな事どうでもよくて。


「いつものコースとか昔のコースで喜ぶかな?」

「ん〜、慣れてる場所は必ず入れた方がいいね。全部初だと絶対ミスるし」


百戦錬磨がこうも頼もしく感じるとは。


そういう意味で出かける訳じゃないけど。


「それにさ。向こうは幸恵と幸恵のエスコート期待してるんでしょ?なら幸恵の思うままやれば普通に良い結果になるでしょ」

「そんなものかな」

「そんなもの。背伸びしてもいいけどらしさがない虚無なのは逆にダメだよ」


ふむふむ。


「それとホテルの代金は必ず自分が出すこと」

「行かないから。ていうか自分で払ってるの?」

「いんや?基本相手の子持ちだよ」


キリッと言うことだろうか。


「それにしても妬けちゃうなぁ」

「なにが?」

「幸恵がこんなにやる気になってるって相当レアだよ」

「そうかな?」

「そうだよ〜。私は負けヒロインくらい悲しい」


しくしくと嘘泣きが様になる親友だこと。


「いっそ私も参加しようかな」

「それは遠慮してどうぞ」

「いけず〜」


絶対瑞希が混じったら宜しくない展開になるだろうし。


それに聖女様を瑞希に取られる気がして。


逆もまた然りだけど、私の無意識はそちらを危惧していた。


何より。


「瑞希その日デートあるんじゃない?」


ポチポチとカレンダーを見せるの確かにと納得する瑞希。


「それなら仕方ないね〜」

「うん、仕方ない」

「じゃあ、夜は合流して4人でだね」


なんでだよ。


「冗談だってば〜」

「本当に?」

「二割くらい本当だって〜」


八割とかダメじゃん。


そんな話をしていると、一時間目の教師が教室に入ってきてチャイムが鳴る。


「授業か〜。面倒臭いなぁ」

「仕方ないって」

「じゃあ、その前に親友にして先達たる私から真面目に幸恵にアドバイスしとくね」

「アドバイス?」


またツッコミ待ちみたいな発言をするのかと思っていると、幸恵は少し真面目な顔をして私の耳元で囁いた。


「想いがあるならちゃんと言葉にしなよ。向き合うのが怖いのも分かるけど、好きな子が別の世界に行くなんてありふれてるんだからさ」


そう言って「ガンバ」と席に戻る瑞希。


別の世界ねぇ。


(そんなんじゃないっての)


デートデート、瑞希がうるさいけどただ純粋に二人で遊びに行くだけ。


そう分かってても、同時に最後の言葉も少し引っかかる。


いきなり聖女様が三次元から二次元の世界に行くなんてことはない。


確かに二次元の世界から来たような美少女様だが、そうではなく、ましてや異世界に飛ぶなんて非現実的な話でもない。


自分の手の届かない場所に、もしかしたら誰かの物になってしまうのかも。


聖女様が別の人と。


想像すらしたくないのに思い浮かべて胸がキュッと苦しくなる。


友達を取られたなんて感じるのとは違う苦しさ。


昔、初めての友達の瑞希に、唯一の家族の叔父さんに私は依存しまくってた時があった。


他の人と楽しそうにしてたり、私の知らない話が出ると凄くモヤモヤして嫌な気持ちになったけど、それらは今ほどのものじゃない。


聖女様のことでもし似たようなことがあったら。


(きっと、私は母のようになる)


叔父さんや瑞希とは比にならないくらいに嫌な女になる。


確信があった。


教科書とノートを取り出しながら授業の準備をしていると、メッセージが入る。


チラリと覗くと聖女様からだった。


『デート、楽しみにしてます』


……聞こえてたのだろうか?


朝の騒がしい教室でそれはないと思うが、聖徳太子よりも優れてそうなお耳を持ってるし否定もできない。


何よりも向こうから言葉にされてしまった。


(そっか、デートか……)


違うと否定したい。


冗談だと笑い飛ばしたい。


でも、デートであると認識して不思議とシックリきてるのも事実だった。


(想いを言葉にか)


形にしてはいけない。


きっと母のようになる。


分かってるが向き合うべき場所まで来てしまってる気がする。


もっと時間が欲しい。


どうせなら答えを確信出来るようにそうであって欲しい。


でも、同時にハッキリさせたいという気持ちもある。


私と聖女様の付き合いはまだ瑞希ほど長くない。


それこそ高校入学数ヶ月の付き合いにそんな答えを出すのは早いと思うけど、このまま悩んでたら私はきっと更にダメになる。


だったら、向き合う準備はしておこう。


相応しくないかもしれない。


母のように狂って苦しむかも。


それでも、聖女様に近づきたいという気持ちは隠せない。


「……お節介焼きめ」


ポツリと誰にも聞き取れない声で親友を罵倒すると、ニンマリと実に良い笑みがこちらを見てる気がする。


決戦は今度の日曜日。


親友のアドバイスを先達のアドバイスを真に受けるかはさておき、その日私と聖女様が何か変わる可能性もある。


チラリと見ると聖女様と一瞬目があう。


実に自然で何事もなく聖女様は授業に入るように教科書とノートを開くが、目が合った瞬間イタズラっぽい笑みがあったのを見逃さなかった。


クラスの誰も知らない、私だけが知ってる聖女様の素顔。


私は普段のクラスの聖女様を見ても何も思わない。


皆みたいにあの作ってる笑顔を尊いとは思えない。


でも、さっきの聖女様は……いつも私が見てる聖女様のことはどうしても気になってしまう。


ふぅと息を吐いて頭を降ってから教科書とノートを開く。


まずは授業に集中しよう。


頭を切替えるなんて器用な真似が得意なわけじゃないが、私は不器用だから立ち止まる訳にはいかない。


うん、デートならデートでいいや。


聖女様の笑顔が見れればそれでいい。


その上で答えが出さればなおよし。


難しく考えすぎだな。


そう思えるようなメンタルでありたいものだ。

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