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言っちゃダメな事だってある。

「今日も同じメニュー、腹筋500回からよ。」

「、、、はい。」

「声が小さい!もっと大きく!」

「、、はい!」

「だから小さいって言ってるでしょ!現場では隊員どうしのコミュニケーションも必須よ。そんな消えそうな声じゃロクなやり取りも出来ないでしょ!もっとお腹から声を張り上げて!」

「はい!」

「そう、それで良いの。さ、早く腹筋始めなさい。そろそろ200回は行ってほしいものね。」


何かこの空間だけ時代が取り残されてない?


「運牙の奴、大丈夫っすかね?」

「今は見守るしか無いね。」


結局今日は150回止まりだった。


 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

「うっ、、ぐっ、、かはぁ!、い、痛いっ!や、やめてください!」

「だったら、早く能力発動して。」


今日も今日とて一方的な暴力。


「こんなにやっても、駄目なんて。」

「ぐ、、、うぅ、、、」

一旦暴力が止まる。


「、、、趣向を変えれば、、、。あの現場のあの場面、、、。」

何かブツブツと呟いている。


「ねぇ、あなた。早く能力を発動して私を止めなさい。」

「、、、、、は?」


カチャ。

水蓮さんが陽さんの頭に向けて銃口を構えたのだ。

「ひ、ヒメちゃん、何してるのかなー?」

「ちょっ、、、正気、ですか、、」

「えぇ、正気よ。」


撃つはずない。仲間をそんな簡単に撃つなんて、ありえない。


バンっ!

「なっ、、、」

地面に一発銃弾を撃ち込む水蓮さん。

地面にはバスケットボールが埋まった跡みたいな穴が空いていた。


カチャ。

「あと30秒以内に発動しないと、撃つわ。」

「ひ、ヒメちゃん?嘘だよね?私を撃つなんて。」

「黙りなさい。私はやると言った時はやる。それは陽も分かってるでしょ。」

「ちょっ、一回落ち着こうかヒメちゃん!」


嘘だろ。撃つなんてそんな、、、


水蓮さんの顔はずっと無表情だ。ボクに暴行を加えている時と同じ、何を考えて思っているのか分からない顔だ。


「29、、、28、、、27、、、」


この人なら本当に仲間でも撃ちかねない、、でも、だからってどうしたらいい?


「23、、、22、、、21、、、」


「クソ、、クソっ、、、」

頑張ってボロボロで痛む全身を奮い立たせ、立ち上がる。


「15、、、14、、、13、、、12、、、」


カウントダウンは容赦なく進んで行く。

「うぅぅっ!」

とにかく踏ん張って身体に力を入れてみる。だが頭に血が上っていくだけで、何も身体に変化は起こらない。


「8、、、7、、、6、、、5、、、」


カウントは1桁に突入した。時間がもう無い。


なのに、、、なのに、、、


「クソっ、、何で何も起きないんだ!」


「4、、、3、、、2、、、1、、、」


「、、、0。」


「何で、、、」


カチ。

目を閉じて顔を逸らす。

だが、銃声はいつまで経っても聞こえてこない。


「あなた!!どうして何もして来ないの!!」


代わりに耳に飛び込んできたのは、水蓮さんの怒声だった。


「別に能力が発動出来なかった事は100歩譲って何も言わないでおくわ。だけど!どうして何もせず突っ立ったままなわけ?ココに来て日もまだ浅くてお互いの事をよく知らないのは分かるけど、それでも撃たれそうになっている陽を全く助けようとしないのは何故!?」


ボクが何もせず諦めた事に対して怒られているようだった。


何故動かなかったか。

その理由はシンプルだ。


「あのまま無策で突っ込んでも死ぬだけだからです。」

「、、、何ですって?」

「武器も無い。相手に対抗出来る能力も無い。相手は格上で飛び道具を使ってくる。そんなの、むざむざと死にに行くようなものじゃないですか。だからボクは何もしなかったんです。」

「、、、それが、、理由?」

「はい。ボク、もう死にたくないので。」


「、、、、、、、っっ。」

「ひ、、、ヒメちゃん?」

ぷるぷると身体を震わせる水蓮さん。そんな水蓮さんの様子に戸惑う陽さん。


心のどこかで、陽さんは撃たれないと思っていたのもあるかもしれない。

だが、やはり()()()()()()一番の理由は、身体に植え付けられた『死』の痛み。

例え大した時間も掛からずに死ぬんだとしても、段々と身体が冷たくなっていくあの感覚、、『自分』と言う存在が身体から抜け落ちていく、あんな体験などもう2度としたくない。


死んででも人を助けるのは、もう花火を助けたあの1回だけで十分だ。ボクはもう命は張らない。


「何で、、、あなたは、そんな事が言えるのよ。」

「だから言いました。死にたくない、と。自分の命を捨ててまで人を助けるなんて、ボクにとっては馬鹿がやる事ですから。」


言ってるうちに気付いた。これは明らかに『失言』だと。だけど、理不尽な扱いをずっと受けてきてボクも我慢の限界が来ていたらしい。

言葉を取り消そうとは思えなかった。


「馬鹿が、、やる事、、ですって?、、、あなた、本気で言ってるの、、、?」

「、、、本気ですよ。」

瞬間、水蓮さんの顔が途轍もない怒りの表情へと変わった。


「あなた、それでも無杉(なさすぎ)(みこと)無杉(なさすぎ)明霞(めいか)の息子なの!?」

ボクのボディスーツの胸ぐらを掴み、般若のような形相で問い掛けてくる。


まさか、父と母の名前が出てくるとは。少し動揺してしまった。でも、そりゃ知ってるよね。調べなんかとっくに済ませてるだろうし、総隊長だって分かってこの隊に入隊させたんだし。


何より、世間で騒がれた『あの事件』を知らない者などいないだろう。


「私は!あなたの両親に命を救われた!あなたの両親に憧れて特対組に入隊したの!街の皆んなを助ける為に命を賭して戦う、その姿が私の将来なりたい姿になった。私だけじゃない、これは特対組の隊員全員のモットーでもあるの!」


境遇の事は知らないけど。それ以外の事、そんなの言われなくても知ってるさ。


「私たちでしか助けられない命がある。だから命を張る!国民の誰もが一度は憧れる、その勇姿に今あなたは泥を塗ろうとしてる!あなたのさっきの発言は日々必死に戦っている特対組の皆んなへの侮辱だわ!」


皆んなどうかしてるよ。人を助けたところで、自分が死んだら意味なんか無いのに。他人を助けたから、自分の帰りを待つ人間の気持ちを裏切っても良い、なんて事には絶対にならない。


ましてや、命をかけて戦っても必ずしも賞賛されるわけではないのだから。

だから特対組の理念なんかに一切共感は出来ない。


「何故素晴らしいご両親を持ちながら、あんたはそんな事が言えるの!!」


憧れの存在だって言ってたね。えらく神格化されてるみたいだ。

スポーツ選手の子ども全員がスポーツ選手を目指すものだと思っているのかな。


「こんな体たらくでは、()()()()()()ご両親も浮かばれないな!」


「、、、、っっ!?」

、、、言って良い事と、、悪い事があるだろ。

確かにボクの失言から始まった事ではある。


だけど、もう無理だ。

何も知らない奴が好き勝手言いやがって!


「姫歌、さすがに言っても良い事と悪い事が」


「お前にボクの何が分かるって言うんだ!!」


「なっ、、、!?」

「う、運牙君!?」


ボクがいきなり張り上げた怒声に2人とも驚いているようだ。

多分人生で一番大きい声を上げた瞬間だ。


「ロクに自分の子どもの相手もしないで!勝手に死んで!死んだ結果、自分の子どもに残したのは金とバッシングの嵐だけだ!ボクが、どれだけ学校でイジメられていたと思う!?一度自殺未遂まで行ったぐらいだ。ボクは産んだのは確かに2人だ。だけど、本当の親だなんて、ボクには思えない!」

「運牙君、、、そんな事、、、」


今となっては懐かしい。中学2年の時、屋上から飛び降りようとしていたのを花火が気付いてギリギリ止められたんだ。

その時の花火は凄く泣いてしまっていて、とても悲しんでいた。


父と母との思い出は、無いに等しい。

ボクの思い出は全て星蓮家の人たちとのモノだけ。彼らこそ、ボクにとっての家族だ。


「憧れるのは勝手にしたら良い。だけど、お前の勝手な理想をボクにも押し付けるな!!」

「、、、、、。」

水蓮さんは黙り込んでしまっている。


「他人を助けるために自分の命を投げ出す。大変高尚な心意気だと思います。でもそう言う事は1()()()()()()()()()にして下さい。ボクはもう2度とあんな経験したくないですから。」


こんな偉そうな事言って、、、もうココでのボクの将来は暗黒なモノとなりそうだ。


「うっ、、、」

あれ、頭が少しフラフラしてきた、、、久しぶりに怒ったせいかな。

「お、おい!」

「運牙君!?大丈夫!?」

「、、、だい、、じょう、、、、」

バタっ。


ボクはそのまま地面に倒れ、意識を失った。

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