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ボクの名前はボロ雑巾。

「おう!お前が新入りだな!よく来たな!!この俺の隊に来たからには最強の漢に仕立て上げてやる!!泥舟に乗ったつもりでいるが良い!!」

「それ、沈んでしまうやつでは?」

「そうだったか?まぁ、細かい事は気にするな!ガッハッハッ!!!」

「、、、、、。」


テンションが暑苦し過ぎて、何をコメントすれば良いか分からない。

本部に戻ってきてすぐ連れて行かれたのは広いグラウンド。そこには既に男女計5人が待機していた。

そのうちの1人は昨日紹介を受けた水蓮さんだ。


「それではまず自己紹介からだな!俺は武士田(ぶしだ)猛彦(たけひこ)、この4番隊の隊長だ。武装は『剣』だ。よろしくな!!困った時は何でも俺に言えよ!!」


身長は180cmほど。上半身も下半身もムキムキしていて日焼けで肌が焦茶色になっているスキンヘッドのおじさん。見た感じ強面のこの人が隊長さんか。


「次は僕だね。初めまして、正野(ただの)良人(よしひと)です。この隊の副隊長を務めています。初めての事だらけで色々混乱すると思うけど、精一杯サポートするから安心してください。武装は『弓』です。」


さっきの隊長とは違い、肌の色は白くあまり身体もゴツくはない。だけど人当たりは凄く良さそうで、かけている黒縁眼鏡も相まって真面目そうだ。


「昨日も紹介したと思うけど、水蓮姫歌よ。」


ボクは今日この人に殺されるかもしれない。


「、、、あ、ヒメちゃんもう終わり?じゃあ、私ね〜。はじめまして、照見(てるみ)(ひかる)でーす。気軽に陽って呼んでねー。私も運牙君と同じ能力者なんだ〜。仲良くしようね〜。」


ボクと同じ能力者の陽さんは『回復』の持ち主らしい。茶髪の髪にはウェーブが掛かっていて、ゆるふわな雰囲気の女性だ。水蓮さんと同じく17歳で年上だ。


「じゃあ、最後はオレだな!罠田(わなだ)(かける)、16歳で同学年だ。よろしくな!武装は『罠』、ちょっと変わってるけど面白いんだ、後でたっぷり教えてやるよ!」


罠田君は気さくな人だ。すぐに友だちになってくれそう。オレンジ色に染めた髪が上に向かってツンツンしていて、額には黒いバンダナを巻いている。遠くからでもすぐ分かりそうな見た目だ。


「よ、よろしくお願いします、、、出来る限り、精進します、、、。」


特対組の構成員は大きく分けて2種類に分けられる。

それは、能力者か非能力者か。

非能力者は特殊な能力を持たない代わりに専用の武器を使い、『武装者』と呼ばれている。

隊長は剣、副隊長は弓、水蓮さんは銃、罠田君はトラップと種類は多岐に渡る。


第4番隊はボクと陽さんの2人が能力者、その他4人が武装者の6人構成と言うわけだ。


「さ、挨拶も済んだし、早速特訓に移りましょうか。覚悟はちゃんと決めてきたわよね?」

水蓮さんが圧を強めながらボクに近寄ってくる。

「あ、、いや、、あのぉ、、決めてきたには決めてきましたけど、、」


「じゃあ、まずは腹筋500回からよ。」


、、、、、何を言ってるんだ、この人は。

そんなの無理に決まってるじゃないか。


「すみません、本日付けで退職を」


 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

「、、、、、、、、、。」


無理、、、死ぬ。

先生に刺された時は比較的苦しい時間は短かった。


これはもう、『生き地獄』だ。


腹筋500回、だったところは時間があまりにも掛かりすぎだと言う事で100回で打ち切られた。

だがその次は腕立て100回、背筋100回、スクワット100回(全て元々の予定は500回)が敢行された。


別にボクは運動が苦手なわけでは無かった。と言っても人並みには出来る程度だけど。

そして特訓を行うに当たって、特対組の隊員が必ず着用する身体機能を高める黒いボディスーツを着用している。


だけど、ボクはメニューの5分の1を消化するのがやっとだった。


「、、、次は60分持久走よ。寝っ転がってないで早くたちなさい。」

「頭おかしいんじゃないの?」

はい、分かりました、、、、あ、逆になっちゃった。


「何か言ったかしら?」

目をギョロリとさせ、ボクに発言を確認する水蓮さん。

「いえ!何も!」


、、、1時間後、ボクはまだ息をしているだろうか。


 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

「うっ、、、おぇぇぇ、、、」


しんど過ぎて吐いてしまった。

何とか1時間やり切った。終盤はほぼ歩いているような速さだったけど。


「運牙君、大丈夫?」

陽さんが背中をさすってくれている。何てお優しい人なんだ。


「お前、体力ねーな!!」

陽さんも罠田君も通常通りのメニューをこなしたはずなのにピンピンしていた。凄すぎる、、、


「陽、あまり甘やかさないで。掛、あんたはさっさと演習場に行ってきなさい。」

「別に甘やかしては無いんだけど、、、」

「りょ、了解っす!じゃあな、運牙頑張れよ!」


え?これ以上何を頑張れと?

罠田君がグラウンドを去り、グラウンドにはボクと陽さんと水蓮さんの3人が残るのみとなった。

隊長と副隊長はいつの間にかいなくなっていた。


「それじゃ、今から能力発動の特訓を始めるわ。」

「、、、、休憩は無いんですか?」

「今してるじゃない。」

正気か?

「て言うか、今までのやつは本来はただの準備運動みたいなものよ。そのボディスーツを着ていれば個人差があるとは言え最低でもメニューの8割くらいは消化出来るはずなのよね。、、、あなた、今までの人生何してたの?」


その言葉を聞いた途端絶望した。何に、かと言うと色々な事に対してだ。

あれが全部準備運動?8割、つまり400回は必ず出来る?今までの人生何してたかって、幼馴染一家と幸せに暮らしていただけですが?


「ヒメちゃん、ちょっと言い過ぎじゃ、、」

「甘い気持ちで特訓していても、怪我をするのは本人よ。厳しくいかないと。」

「うーん、、、、」


陽さんは本当に優しい人なんだろう。

思いやってくれているのが分かる。


「さぁ、次の特訓始めるわよ。」

「、、、はい。」


納得いかない。ボクは入りたくて特対組に来たわけじゃないのに、訓練に付いていけてなかったら罵倒される。


何も夢を持てずに日々を過ごしてきたツケが回ってきたと言う事なのだろうか。


「運牙君、、頑張って!」

応援してくれる陽さんの存在だけが、心の拠り所になっていた。


 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

「さぁ、早く出しなさい。」

「、、、、、何をですか?」

「何って、あなたの持つ特殊能力よ。」

「ボクの特殊能力って何ですか?」

「は?知らないわよ、あなたが一番分かってるはずでしょ?」

「いや、本当に分からないんですけど。」


いきなり能力出せ、とか言われても。自分で能力を発動した覚えが無いからどうしようもないんだけど。


「あの超パワーとか腕を生やした再生能力は?」

「え、やっぱりボクの腕って新たに生えてたんですか!?」

「何であなた何も知らないのよ!」

「だってボクはあの時死んだと思ってたから、何なら今もどうして生きているのかが不思議なくらいですよ!」


そう、変異した先生に刺されてしまった時、ボクは死んだはずなんだ。


「、、、陽、こんな事あると思う?」

水蓮さんが陽さんに質問をしている。

尋ねられた陽さんは少し考えた後、ボクに向かって口を開いた。


「ねぇ運牙君。能力者の先輩として言わせてもらうとね、能力者は一度発動した能力の事は何となく発動の仕方を覚えていて、いつでも好きな時に発動出来るようになってるの。だから、運牙君もその超パワー?回復?を好きなように発動は出来るはずなの。どう、何も身に覚えが無い?」

「、、、全く無いです、、、」

「そっか、、、ヒメちゃん、もしかしたら運牙君はちょっと変わった能力かもしれない。」

「それは分かってる。総隊長からも『特殊事例』だとは言われてるわ。だけど、本人が発動の仕方が分からないとなるとねぇ、、、」


水蓮さんは悩みながらも何かを決意したかのように頭を上げた。

「、、、仕方ない。実力行使しか無いわね。」


、、、何か不穏な言葉が聞こえた気がするんだけど。


ぽきっ、ぽきっ。

何で水蓮さんは指の骨を鳴らしながら近付いてくるんでしょうか。


「ヒメちゃん、手加減はしてあげなきゃダメだよ。」

「分かってるわ。」


何故か近付いてくる水蓮さんからは、あの変異した先生よりもヤバい雰囲気を感じた。


ダッ!

「、、、ちっ。」

「あぁ、逃げ出しちゃった、、」

身の危険を感じたボクは距離を取るためとりあえず逃げた。


逃げたのだが。

「どこに行こうとしてるのかしら。」

「がっ!」


すぐに追いつかれ、首根っこを捕まれそのまま地面に顔面を擦り付けられるように倒された。

「この期に及んでまだ甘ったれた気持ちを持っているようね。言ったはずよ、そんな気持ちは捨てろって。」

「だ、だったら、痛い事はしないでください!」

「だったら、早く能力を発動させなさい。」

「だから、その発動の仕方が分からないって言ってるんです!」

「だから、実力行使して無理矢理能力を発動させようとしてるの。」

「無茶苦茶だ!!」


頭のおかしい上司から逃げたいけど、身体能力では勝ち目が無い。大人しく能力を発動するしか無いのだが、その肝心の発動の仕方が分からないし、そもそも自分の能力が何なのかも分かっていない。


、、、要するに今のボクは"詰んでいる"んだ。


「発動出来ないなら、生存本能で呼び覚ますしか無いわね。、、、少しでも早く発動してくれる事を願っているわ。ふんっ!」

「ゔっ、、ぶはっ!」


腹を蹴られた。中身が飛び出すかと思った。

「さぁ、早く。」

「ぐはっ!がはっ!」


その後も殴る、蹴る、の暴行は続いた。

だがいくら身体を傷付けられても、ボクの能力が発動する兆候は出ずに、ただボクの中に水蓮さんへの恐怖心が植え付けられていったのだった。


 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

「今日はここまでにするわ。明日も同じ特訓をするから、覚悟しておきなさい。、、、陽、手当をお願い。」

「ヒメちゃん、もう少し」

「良いから、早く。」

「、、、分かった。運牙君大丈夫?すぐ傷を直してあげるからね。」

「、、、、、。」


返事をする事も辛い状態だった。

全身暴行によるアザだらけ、まぶたも腫れている。息もし辛い。どこかの骨もイカれてるかも。


陽さんの能力で治癒されている部分からは痛みが少しずつ引いていく。


こんなのが明日からずっと続くのか。

逃げようにも、ボクはこの組織内で最低の身体能力だろうから不可能だ。


泣きたい。

でも今は今日会ったばかりとは言え女の人の前だ。カッコ悪いから我慢する。


こんなボコボコにされて、恰好がどうとか言ってる場合でも無いけど。


「運牙君、ヒメちゃんもね一生懸命なの。恨むなって言っても無理だろうけど、あまり悪く思わないで欲しいな。」


、、、ごめんなさい、無理です。




結局その次の日も全く同じメニューで、最後には立てなくなるくらいボロボロになり陽さんの治療を受けた。


相変わらず無表情で暴行を加えてくる水蓮さんの事が怖くて堪らなかった。

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