最悪の宣告『君に拒否権は無い。』
「あの、、、ボク、これからどうなっちゃうんでしょうか、、、。」
「、、、、、、。」
特対組の女の人に無理矢理連行され、牢獄みたいな場所に閉じ込められてしまった。
檻の外にいる見張の人に声を掛けても、何も答えてくれない。
『能力者』。それは、突如常人では持ちえない特殊な能力を発現した者の事を指す。
ボクはそんな能力を発現した記憶は全く無いのだが、死んだと思ったら生きていたり、意味不明な怪力を一時的に手に入れていた事が関係しているのだろうか。
何にせよ、『能力者』となってしまった者の末路を聞いた事がある。それは、、、、、
ガチャ、、、ギィィィ、、、
自分の今後を考え陰鬱な気分に浸っていると、檻が開け放たれた。
「無杉運牙君だね?」
身長190cm以上はあるだろうか。白い髭を口に蓄え眉間に皺を寄せた白髪頭のお爺さんが立っていた。
いや、お爺さんなのかは分からないが、スーツはパツパツしていて凄く筋肉質な身体をしている。それに背筋もピンとしていて、厳格なオーラが身体から溢れ出している。ただ顔の感じだけを見ればお爺さん、それ以外は屈強な漢なのだ。
「ひゃ、、、ひゃい、、、」
オーラに気圧され舌を噛んでしまった。
怖いよ、この人、、、
「今から部屋に案内する。付いてきたまえ。」
「ひゃ、、ひゃぃぃぃ、、、」
ボクはこれから拷問か何かを受けさせられるのだろうか。ビクビクしながらお爺さんについて行く。
「あ、あと、こんな檻の中に閉じ込めてしまって悪かった。すまない。未知な能力ゆえ少し様子を見る必要があったのだ。失礼な待遇をしてしまった事を心から謝罪する。」
「い、いえ!?そんな、、お、お気になさらず、、」
お爺さんがわざわざ頭を下げて謝ってくれた。
案外優しい人なのかもしれない。
ボクは少しだけ考えを改める事にした。
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「これから君には、ここ『特別事象対策武装組織』にて隊員として働いてもらう。」
あぁ、、、やっぱりだ、、、絶対にそうなると分かっていた。通された応接室にてお爺さんから開口一番に言われた言葉に落胆してしまう。
『能力者』になってしまった者は、強制的に特対組に入隊させられ、その一生を捧げる事になる。
「あ、あの、、ちなみに、、断る事は、、」
「無理だ。宣告しておこう。君に拒否権は無い。」
「そんな、、、」
ボクの人生は悲惨なモノになってしまった。
「あなた。特対組に入る事が嫌なの?」
応接室にはボクとお爺さんの他に、学校からボクをココに連行した女の人もいた。
多分ボクと同じくらいの年齢っぽいのに、もう前線でバリバリ活躍してそう。
「、、、はい、、嫌ですね。出来ればこのまま帰らせて欲しいです。」
「、、、、、ふーん、、、、。」
「すまないが、君には入隊する以外の選択肢は無い。特殊能力を発現出来る者は稀な存在だからな。君の能力に至っては更に特殊性が増している。もう普段の日常に戻る事は困難だと思っていてくれ。」
今、正式にボクの人生は終わりを告げた。もうこの先は地獄しか待ち受けていないだろう。
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「とりあえず入隊するに当たって、色々な事を説明して置かなければな。まぁ、大半の事は既に分かっているとは思うが。」
もう完全に入隊する前提で話が進んでいる。
、、、諦めるしか無いのか、、、。
「まず今から105年前、地球外生命体が地球に侵略して来た、と言うのは大丈夫だね?」
いきなり何言ってんだ、と思うかもしれないが紛れも無い事実である。
今から105年前の1月1日、円盤型の超巨大空母と戦艦に乗りながら地球外生命体が宇宙より攻めてきた。
日本時間でちょうど深夜0時を過ぎた新年、日本を象徴する大きなタワーが戦艦から放たれた破壊光線により崩壊した。これにより人類と地球外生命体との戦争が始まった。
当時の記録から、地球外生命体の見た目は大してボクら人類と変わらないようだったらしい。
襲撃されたのは日本だけでなく、世界各地に戦艦が出現。各地で激戦が繰り広げられた。
結果だけを言うと、地球外生命体を追い払う事に成功した。倒し切った訳ではなく、あくまで地球から追い払うと言う形だ。
それが今からちょうど100年前。
この戦いは『星間追放闘争』と呼ばれた。5年に及ぶ戦いで日本以外の地域は壊滅。人類が生存しているのは日本のみとなった。その日本も総人口が半分以下にまで減ってしまい、予断を許さない状況が続いたらしい。
「そして、地球外生命体が去り際に残した粒子が更に日本に混乱を招いた。」
地球外生命体はタダでは撤退しなかった。
置き土産として、とんでもない異物を日本にばら撒いていったのだ。
『Possesion Energy』、通称『PE』と呼ばれる目に見えないとても小さな粒子が大量に大気を漂い始めた。
この『PE』は瞬く間に増殖し、そしてあらゆる物質に付着した。
PEが大量に付着、もしくは取り込んでしまったモノは、突然変異を起こしてしまう。
生物の場合、身体に異常が発生し理性を失い激しい攻撃性を身に付ける。
生物以外の場合、意思を持ち始め手当たり次第に攻撃を始める。
このような現象は『ポルターガイスト』と名称を付けられた。生物に起こるポルターガイストは『変異型』、生物以外を『物体型』とされた。
また自然災害を巻き起こす『自然型』と言うポルターガイストも過去に発見されている。
今日の先生の変化は『変異型ポルターガイスト』と呼ばれるものだ。個人によって差異があるものの、人類もPEを体内に取り込み過ぎると変異型になってしまう。
そしてポルターガイストに対処するために政府によって設立された機関、それが。
「この、『特対組』と言うわけだ。そしてワシがこの特対組の第1番隊隊長かつ総隊長、武士田國守だ。よろしくな!」
このお爺さん、まさかのトップだった。
「君には第4番隊に入ってもらい、君が発現した特殊能力を思う存分に使って活躍してもらいたい。」
「第4番隊、、、」
「無杉運牙君。君にとって、この隊は切っても切り離せない非常に縁のある部隊だ。是非頑張って欲しい。」
、、、わざとだよね、絶対。
高度な嫌がらせか、これは。
「お断りする事は?」
「無理だ。」
「、、、、、。」
諦めるしかないなんて、、、こんなの、あんまりだ。
「あの、星蓮家の皆んなには、お金の援助はいきますか?養子でもなんでもないから家族だって証明出来ませんけど。」
「安心してくれ。君がここ数年ずっと星蓮家にお世話になっていた事は調べている。手厚い待遇を約束しよう。」
「、、、なら、、、良いです。」
特対組に入隊すると、自身の給料は勿論、自分の家族にも多大な額の援助が入る。とりあえず、ボクを育ててくれた花火の家族にも援助が行く事を聞いて安心する。
「最後に、挨拶とかしても大丈夫ですか?」
「最後と言わずとも、休みの日には隊員は基本自分の家に帰ったりしている。だが、いつ死ぬか分からない仕事だからな。丁度ワシも君の家にお邪魔しようと思っていた。共に向かおう。」
「、、ありがとうございます。」
入隊する事実はもう変わりそうに無い。どう抵抗しようが無駄に終わるだろう。
いつ死ぬか分からない。だから、精一杯感謝の言葉を伝えよう。
死にたくないし、死ぬつもりもさらさら無いけど。
「そうだ、紹介しておこう。彼女も君と同じ第4番隊に所属している水蓮姫歌君だ。彼女は非常に優秀でね、17歳にして次期エース候補の実力なんだ。第4番隊に配属された後は彼女が教育係となって君を指導する。姫歌君、頼んだよ。」
この人、ボクより1個上だった。それに次期エース。凄い実力者だったんだ。
「よろしく、水蓮姫歌よ。この隊に入るからには生半可な指導なんかしない。もしまだ『ここで働きたくない』とかそんなふざけた事を考えているなら、さっさとそんな考えは捨てなさい。中途半端な奴は足手まといにしかならないから。自分が足を引っ張れば、それはチームメンバーの命を危険に晒す事に繋がる。その事をはっきりと覚えておきなさい。私から言いたい事は以上よ。」
「、、、、、どうしても入隊を拒否する事は出来ませんか?」
「君に拒否権は無い。」
、、、ボク、この人に殺されそうな気がするんだけど。
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「どうしたんだ。君にしてはえらく冷たかったじゃないか。そんなに運牙君の事が気に入らないかい?」
「当たり前です!いくら特殊能力を持っているんだとしても、あんなヘタレみたいな奴がいたら逆に私たちが危険な目に巻き込まれてしまいます。、、、ガッカリしました、、まさか、あの人たちの息子があんな奴だったなんて。」
「まだそんな話した事も無いのにヘタレって、、。まぁまぁ。彼がこの仕事をどう思ってるかなんて我々には分からないんだ。しかし、彼が今のような性格になったのは間違いなく『あの事件』が原因だろうが。」
「、、、、、。」
「だけど僕は彼に期待しているよ。望んでいようがいまいが、彼には人を助ける為の資質が備わっている。いつか前向きになってくれる事を祈っているよ。」
「私にそんな役を押し付けないでください。」
「そこを何とか頼むよ。日本のより良い未来の為に、ね。」
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「う、、運牙が、、特対組に、、ですか?」
「運牙、本当なの?」
「うん、本当だよ。それで入隊する事になった。」
翌日になり、ボクにとっての家族、星蓮家に別れの挨拶を告げる。花火の容態は特に異常も無いらしいが、念の為検査入院と言う事になっている。挨拶をちゃんと言えないのが残念でならない。無事だと分かっただけ良しとしよう。
「そ、そうか、、随分、急だな、、、」
「申し訳ありません。ご存知かと思われますが、能力者は特対組の入隊が義務となります。急な事で申し訳ないですが、どうかご了承お願いします。」
「あ、いえいえ、、頭をおあげください、、」
花火のお父さん、星蓮花雄さんに、総隊長が頭を下げる。
「寂しく、、なるわ、、、うっ、ぐすっ、、」
「火花さん、泣かないでください。時間が空いたらまた会いにきますから。」
「でも、、、危険なんでしょう?」
「大丈夫、死ぬつもりなんかありませんから。」
花火のお母さん、星蓮火花さんは本気で悲しんでくれている。それは花雄さんも同様だ。
あぁ、2人がボクの父親、母親代わりになってくれて良かった。いや、、、代わりなんかじゃなくて、本当の父親と母親のように思っている。
「花雄さん、火花さん。まだ入院している花火にも帰って来たら宜しく言っておいてください。」
「運牙、、花火を助けてくれたんだろう?ありがとう、本当にありがとう!」
「花火が一番悲しんじゃうわね。あの子が一番運牙に懐いていたから、、」
「懐いていたのはボクの方ですよ。花火にも本当に感謝してるんです。ありがとうってボクが言ってたと伝えてください。」
「あぁ、あぁ、勿論だとも!」
「いつでも、帰っていらっしゃい!ここが、あなたのお家なんだから!」
入隊すると、基本は寮で過ごす事になる。休みになれば外出許可が出て実家に帰る事も可能だ。
だが、本当に明日死ぬかもしれない職業だからこそ、ちゃんと離れる前に伝えたい事をちゃんと伝えておかないと。
「、、、お父さん、お母さん、、行ってきます!」
「、、、、っ!?」
「運牙!!」
お父さんとお母さんに抱き締められる。
「本当は行かないで欲しい、、、絶対帰ってきてね。」
「お父さんたちはいつでも待ってるからな。」
「うん、、、ありがとう、、、。」
「運牙君、そろそろ。」
ボクは総隊長に連れられ、家を後にした。
お父さんとお母さんはボクの姿が見えなくなるまで、ずっと手を振って見送ってくれた。
家族とまた一緒に過ごしたい。
そんなボクの気持ちなんか関係無しに、ボクを乗せた車は特対組の本部へと向かうのだった。




