1回死んでみないと何が起こるか分からない。
「姫歌、現場に到着しました。対象を見つけ次第討伐に移ります。」
『了解。くれぐれも気を付けるようにして下さい。僕も応援に向かってます。無理だけはしないように。』
「了解です。」
突如市内の学校の敷地で感知したポルターガイスト反応。
早く討伐しないと一般人に危険が及んでしまう。
1階を捜索していると、上の階から降りてくる人の足音が聞こえてきた。
カチャ。
ハンドガンを構え、射撃の準備を整える。
すると、ポルターガイストではなく、1人の学生が降りて来た。
「はっ、はっ、はっ、、、うわぁぁ!ば、化け物!」
よっぽど焦っていたのか、私の姿を見ると腰を抜かして転んでしまった。
安心した。被害から逃れた人がいてくれた。
「落ち着いてください!特対組です!救助に来ました!あなたの他にこの学校に人はいますか?」
「特対組の人ですか!?あ、あの!3階にまだ友だちがいるんです!た、助けてください!」
「落ち着いて!まだ人がいるんですね?何人ですか?」
「2人です!先生が、、へ、、変異して!!早く助けに行ってください!このままじゃ、2人とも死んじまう!!」
只事では無いのは、学生の様子からすでに分かっていた。
私は、シールド装置を学生の周りに配置する。
「このシールドの中で待機していてください。私がすぐにご友人たちを助けに行きます。」
「お、お願いします!」
「良人さん、玄関横の踊り場にて男子学生1人を救出しました。シールド装置内で待機してもらってるので現場に到着したらまずその子を安全な場所へ誘導してください。私はポルターガイストの討伐に向かいます。」
『良人、了解。決して無理はしないように。』
「はい、了解です。」
応援要員の副隊長に無線で報告をし、私は学生の言葉を信じて3階へと向かった。
言葉から推測するに、この学校の教師が変異型ポルターガイストになってしまい、その場に遭遇した生徒たちが被害に遭っている。
急がないと!
手遅れになる前に!
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
「運牙、、、そん、、な、、、いや、、いやぁ、、」
「、、、、くそッ、、遅かった、、、!」
3階に上ってすぐの教室に入ると、凄惨な現場が広がっていた。
床に溜まった血溜まり。その血の持ち主は変異型が持っている巨大な刃物に胸を貫かれた男子学生のモノに違いない。
その男子学生の片腕は床に転がっていて、もう片方の腕も力無く垂れていた。
もう、あの学生は手遅れね、、、ごめんなさい、私がもっと早く現場に着いていれば。
後悔するのは後だ。今はもう1人いる女子学生を助けないと!
女子学生はどうやら目の前の光景に耐えきれず気を失ってしまったようだ。あの子だけでも助けなきゃ。
「『全距離適正討伐銃』『モード:ショットガン』起動。」
先ほどまでハンドガンだった物が形状を変え、ショットガンになった。
私の専用武器『全距離適正討伐銃』。これで今からこの変異型を討伐する。
「うぅぅ?」
男子学生を串刺しにしたまま、変異型がこちらに視線を向けてくる。
「早くその子をおろしてあげなさい。そして、覚悟しなさい。お前はすでに討伐対象。急にポルターガイストになった事は同情するわ。だから、せめてもの情けで一瞬で楽にしてあげるわ。あの世でその子に詫びなさい。」
「うぁぁぁ!!」
ポルターガイストに人の言葉は理解出来ない筈だが、私の言葉に怒ったような反応を見せた。
カチャ。
奴の心臓部に狙いを定める。狙い通りならコアを一発で破壊出来る。
「うぁぁぁ!!!」
「来なさい。」
引き金を引こうとした時だった。
ピカーー!!
「うぅぅ!?」
「う、、な、なに!?」
串刺しにされていた男子学生の身体が光を放ち始めた。
「まさか、、この反応は、、、いや、でもありえない!!」
光が、目も開けられないほど強くなる。
「ま、眩しすぎ!!」
教室は真っ青な光で包まれていった。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
さっきまで身体が寒くて寒くて仕方が無かった筈なのに、今は何故かポカポカと暖かかった。
それにポカポカになるだけでなく、身体に力が湧き上がって来ていた。
今までに感じた事の無い高揚感があった。今の自分の身体なら何でも出来そう、そう思わせるような。
今の自分なら、花火を助けられるかもしれない。
先生だって倒せるかもしれない。
待ってて、、、すぐに助けるから。
ボクの身体、、どうか、動いてくれ、、、
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
「この刃物、、、邪魔だな、、、」
今なら何だって出来そうだ。
死んだと思ったけど、まだボクは動ける。どうせ死にゆくなら、好きだった子を助け抜かないと。
ボクの胸に突き刺さったままの刃物を手で掴み握りしめる。すると。
バリバリ!バキン!
刃物が砕け散った。
「うぅぅ!?」
「あれ、、、意外と脆かったんだな。」
まさか少し握っただけで刃物が壊れるなんて。
とりあえず邪魔な刃物は無くなった。
「何でか分からないけど、力がどんどん湧いてくるぞ。」
両手をぐーぱーして動きを確かめた。
、、、あれ?ボクって左腕切られたよね。
「え、、、何で!?」
ドク、、、ドク、、、
「っ!?、、、鼓動が、、、!?」
心臓を貫かれた筈なのに、ボクの心臓は問題無く動いていた。
「ウソ、、、何で、、、?」
「え、、、誰!?」
訳がわからない事ばかりだ。
腕が治り、心臓も問題無く、まだ生きてる。
そして気絶している花火の他にもう1人いた謎の女性。見た目ではボクと年が変わらない学生みたい。
でもあの黒いボディスーツは見た事がある。特対組のものだ。
「うぉぉぉい!!」
一瞬目を離した隙に、先生がボクに殴りかかってきていた。
「うわっ、あぶなっ!」
瞬時の判断で後ろに飛び退いた、、つもりだったのだが。
「うわぁ!な、何だこれ!?、、ぐはっ!」
軽く飛び退いたつもりが勢いが凄く、離れた場所にあった後ろの黒板に背中から打ち付けられてしまった。
「な、、んで、、、痛て、、、」
背中をさすっていると。
「うぉぉぉい!!」
先生がボクに向かってきていた。
今、物凄くボクはパワーアップしてるらしい。
力の加減が全く分からない。
「うぉぉぉい!!」
だったら、このパワーはせめて先生に向かって放つべきだ。
「ごめん、先生。」
「うぉぉぉい!!」
先生が横からパンチを振ってきたのを屈んで避けた。
そしてガラ空きになったお腹の部分に右ストレートを叩き込んだ。
「うがぁぁぁぁぁ!!!」
見事お腹に拳が食い込み、そのまま先生の身体は教室の壁を突き破って階段のある廊下まで吹き飛んでいった。
「、、、、え?これ、本当にボクの身体?」
自分で自分の事が信じられない。そもそもまだ生きてる事自体がおかしいのだから。
「、、、、は、花火!!大丈夫?」
気絶して床に仰向けになっている花火の元へ駆け寄る。吹き飛ばされる先生に巻き込まれないで良かった、、、
「ちょっとあなた!!、、、一体何者?」
安心していると、声を掛けられた。特対組の人だ。
「いや、、何者と言われても、、ただのこの学校の生徒、、、ですけど。」
「それは分かってるわよ!さっきの力は何だって聞いてるの!あなた、『能力者』なのね!」
「いやいや、違いますよ!特殊能力なんか何も持ってません!!」
「あんな超パワー見せておいてそれは無いでしょ!良いわ、とりあえずこの子も保護して、あなたにも付いてきて貰いますから。」
「本当にボク何も無いんです!!信じて下さい!!」
それからボクは女の人に連行されてしまった。
『特別事象対策武装組織』、通称『特対組』の本部へと。
今の日本の安全を守る、最高の防衛機関にだ。
先ほどまで漲っていたはずの高揚感やパワーは嘘のように消えてしまっていた。
次の話から、色々と用語が出てくる予定です。
あまり複雑にならないよう頑張ります。




