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だって私は、真の悪役なのだから。2  作者: wawa


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24

 


  ーーガチャン!!


  逞しい馬が六頭、堅牢な檻の馬車が街中を走り抜ける。いつもの光景にそれを横目で見ただけの住民の足下、灰色の猫がスルリと現れると、軒下に積まれた木箱を足場に素早く商店街の屋根に駆け上がる。


  「……」


  遠ざかった六頭の馬。尖った耳をピンと立て、行き先を眺めた猫は、屋根づたいを飛ぶ様に檻の馬車を追った。



 **



  馬車の中には、路上で物乞いをしていた者ではなく、親や身内から売られた者、そして孤児院から売られた者が殆どだった。


  その中で、ファムファン王国で王家の色である赤を髪色とするエメイエアは、目が覚めるとここにいた。


  王族貴族ではない母親とその子供のエメイエアは、王宮内に一室を与えられのみで、扱いはとても王子とは思えない様な差別を受けて生きてきた。


  「仲直りしよう」と、物心着いた時から母子を虐めてきた母親違いの兄妹たちに呼び出されて、半信半疑で向かった兄の部屋。途中で何者かに袋を被せられ気を失った。


  犯人が自分を呼び出した兄と妹だと直ぐに分かったが、もう、どうでも良くなった。


  子供たちは、大半がエメイエアと同じ気持ちで生気が無く、ぼんやりと宙空を見つめていたが、華やかな街中で乗り込んできたとある人物に身を固める。


  少年か少女なのかも分からない。ごわごわとした男物の衣服に身を包むのは透けるような色白の肌、そして作り物の人形の様な美しい顔。黒髪に大きな青い瞳は、実物を間近で見たこともないが、煌めく青の宝石を想像させる。


  「……」


  悠然と馬車の中を見回す青い瞳。咄嗟に、子供たちは目を合わせないように俯いた。五つの島には、人外の者と、目を合わせると命を取られるという言い伝えがある。


  美しすぎて、恐怖を纏う。


  (魔物が、乗ってきた……)


  それが、こちらを見ようと目玉だけを動かした。


  「!」


  思わずエメイエアも目を逸らす、すると目の前に座っていた少年が、恐怖で泣き出し嗚咽をこぼし始めた。それは連鎖し、年端も行かない子供たちは声を殺して肩を震わす。


  「…………」


  ちらりと、後方を確認したエメイエアは、青の瞳が無感情に子供たちを凝視し続ける姿に息を飲み込んだ。



 **



  「降りろ! 早くしろ!」


  檻から降ろされた子供たちは、連れられた小屋で衣服を剥ぎ取られた。


  身体の状態を確認し、購入者が決まると奴隷の烙印を押される。横暴な行為に泣き出す者が殆どだが、その日はいつもと違った。


  「おい……」

  「あれ、やべぇな」


  ファムファン島で一番の闇商人であった男の一人娘ラフィラに、今回の商品には王族の婚外子が居ると念を押されて警備は増やした。物々しさは増しているが、更にそこに異様な者が紛れ込んでいる。


  黒の服に身を包み、奴隷の列に並ぶ異質。


  泣き叫ぶ奴隷たちを見て、仕事と割りきる者と楽しむ者に分かれるが、常日頃、加虐を楽しむ者でさえ、その扱いに戸惑い触れることもしない。


  「特級品か」


  警備の男たちの増員により、逃げる隙間もない小屋の中。裸に剥かれる者たちを前に、王子も緊張に憔悴しているが、黒髪の者からは何の感情も読み取れない。


  長年この仕事を引き受けている女も、順番が近付く異質な者を怪訝に見た。裸の少年が連れ去られると、女を補佐する男が同じ困惑の顔で声を潜める。


  「管理者(デアドール)に確認しますか?」


  「……そんな暇は無いだろ」


  自分の番が来て衣服を裂かれて泣き叫ぶ少女。それを、真っ青な瞳は無表情に凝視している。だが青い目は、何故か女の顔に移動した。


  (……ヒッ)


  中年の女は、穴が空くほど自分を見つめる青の目に、内心で怯え手元に力が入る。いつもよりも乱暴に衣服を剥ぎ取ると、少女から「痛い」と漏れた悲鳴のお陰で仕事に集中することが出来た。


  そうこうしていると、ついにその順番が回ってきた。異質な者は、女の顔を見つめ続けている。


  「取りあえず、どうするんですか?」

  「どうって、えーと、お前、あれはそうだ、特級なら王子と同じ扱いで、下手に触んない方がいいんじゃないか?」


  「ですよね」と、面倒事に触れたくない男も声を潜めて同意し、それと王子を他へ移動しようと扉に向かうが、近寄ると、青い目は更に見開いて女と男を見つめた。


  (やっぱり、瞬きしてねえ……)


  よく見ると、見たことの無い青色の瞳は、緑色の輝きを宿す。


  (こいつ、本当に人間じゃ……)


  ーードガァンッ!!


  「騎士団だ!!」


 

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