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だって私は、真の悪役なのだから。2  作者: wawa


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23

 


  侵入者を止められなかった部下達に注意する間もない。兵舎の短い階段を一足飛びに、五人に駆け寄ったハレーと副官は、背筋を最大限に伸ばすと肘に角度を付けて素早く敬礼した。


  「司令官殿に、ご挨拶申し上げます!!」


  ーー!?


  隊長であるハレーの言葉に、兵士たちも咄嗟に身を正して一斉に敬礼する。寄せ集めではあるが、軍隊に所属している者たちは、上官の緊迫した姿に反射的に全身を強張らせた。


  「司令官殿」と言われた青年は、ハレーだけを見据える。


  「先代パーチ男爵の護衛騎士ハレー・リード」


  「は!」


  「お前に任務を与える」


  スッと眼前に近寄った美しい顔。冷気を纏う様な雰囲気の青年は、物語に登場する感情の無い精霊の様である。思わず腰を引きかけたハレーだが、地についた足にグッと力を入れその場に留まった。


  「…………、………………」


  潜められた声、背に流れる冷や汗を感じながら、身を引いた青年にハレーは無言で敬礼を返した。


  青年の後ろに待機するのは、全く気配の無い暗殺者の様な四人の護衛騎士たち。力強いハレーの最敬礼に暗青の瞳は軽く頷くと、クルリと背を向ける。


  黒の騎士たちは、消えない恐怖だけを残して駐屯地から去っていった。


  「………………何故、あの方達が、ここに……? ……海を越えて、ここ、ファムファンに?」


  門から姿が見えなくなるまで、敬礼の姿勢で見送った上官に倣い、それを崩さなかった兵士たち。彼らの姿が完全に見えなくなって、ようやく手を下ろしたハレーに、乾いて張り付いた喉から声を絞り出した副官が問う。


  固唾をのんで聞き耳を立てていた部下たちは、次の言葉に戦慄した。



  「……ノースの断頭官……。その後継者である、メイヴァー・エール・ノースガイア子爵が、なぜ直々に?」


  関わり合えば、全ての者に死を招く十枚の葉。



  お伽噺、噂話と笑ったが、目の前に現れた美しい青年貴族は、そこに存在するだけで言い表せぬ畏怖を身に纏っていた。

 

  「司令官殿は、何と…?」


  ハレーは、今までになく厳しい表情で副官を振り返る。


  「至急、口の固い者を集めろ」


  踵を返して兵舎に戻る。程無くして集ったのは、副官と五人の兵士。彼らは、ただ事ではない雰囲気に、それぞれ顔を見合わせる。


  「我らの上級上官より、極秘任務を命じられた。内容は、この場に居る七人のみで共有する。外部に漏れれば我々軍人だけではない。親しき者を含め、この隊の全ての者の首が落とされること、心に刻め」


  六人の最敬礼を確認し、素早く広げられたのはファムファン島の詳細を記した地図。


  「ノースガイア上級上官のお言葉を伝える。ーー我らの最上級上官、ステイ大公閣下は今、人を探している」


  「……」


  その場には居なかった。沈黙のままハレーの言葉を待つ部下たちは、聞き慣れない最上級上官の登場に、ノース伯爵家の来島が本当だと知り緊張する。


  「数日前、上級上官の元に、ファムファン島のあ

 る商人から、鉱山町テハナで、なかなか見ることのない上質な黒髪を仕入れたと情報が入った」


  (黒髪……?)


  集められた五人の者たちは、かつて先代パーチ男爵の護衛で、ステイ大公国ダナー家の新年の祭典に同伴した事がある。彼らは、最上級上官のダナー家と、ノース家が直々に持ち込んだ任務「黒髪」に、ある二人の人物を結びつけた。


  ステイ大公国ダナー家の象徴である黒。その髪色の代表は、大公妃と長女の二人。


  「対象人物は少女」


  「!!」


  「お前たちの現在の任務よりも、これを最優先任務とする。以上!」


 

 

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