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074 信じてる

「——士爵にお願いがあります。もしも、今後も辺境伯領から逃げてきた人がいれば、全員このあたりの農地で受け入れるよう取り計らってもらえませんか」

「わかった。引き受けよう。無辜の民のことは私に任せなさい」

「……それからアル。エステラたちを私の代わりに弔ってあげて欲しい」

「そのことは心配しないでくれ。ルッツが二人を弔ってくれた。……それからリーゼの槍も送ってくれたんだ。今度拠点まで取りに来てくれ」

「わかったよ。……ありがとう」


 二人の返事に胸を撫で下ろす。あと心残りなのは——。


 アルシウスと士爵と話したいことは全て話し終え、二人はそれぞれ帰っていった。

 アルシウスは去り際に「お前が敬語なんて気持ち悪い」と言い残していった。

 あの視線の理由はそれだったかと、苦笑いして彼を見送った。

 そして今、家に残っているのは私とユーリスの二人だけだ。


「……その様子だと、明日行くんですね」

「……うん、勝手に決めてごめん」


 少しだけ寂しそうな表情で私を見たユーリスはそのまま私を柔らかく抱擁した。

 こうやって彼の匂いに包まれるのも久しぶりな気がした。


「俺はリーゼさんが決めたことには反対なんてしませんよ」

「……私の記憶が正しければ、一度あった気がするけど?」


 そう言い返せば、ぎくりと体を強張らせた。

 そんな様子が愛おしくて少しだけ笑って彼の頭を撫でた。


「本当に私たちは夫婦らしいことをしていないね……」

「これからしていけば良いんですよ。俺はリーゼさんが無事帰ってくることを信じて待ってますから」

「ありがとう。いつも待たせてばかりでごめん」


 思い返せば、私は出かけてばかりでいつもユーリスを待たせている。

 仕事柄といえばそれまでなのだが、それを言い訳にユーリスに甘え続けていたのかもしれない。


「そんな事は良いんですよ。……それでも申し訳ないというのでしたら、今夜を俺にくれませんか?」


 本当に私のことを良く知っている、良くできた夫だと思う。

 私にはもったいない。

 私が言おうとしたことを先回りして答えてしまうのだから。


「わかった。そんなことでいいのならいくらでも」


 ユーリスの抱擁がきつくなる。

 そこから伝わる彼の熱さを忘れまい、と私も強く抱きしめ返した。


 彼の胸元のペンダントが触れる。どうか私の代わりに——。


「——リーゼさんが帰ってきたら、ピアスを新調しましょう。割れちゃっていますから」


 言われてピアスに触れると、丸みを帯びていたはずの飾りが尖っていた。

 きっと火竜と戦っている間に割れてしまったのだろう。


「そうだね。じゃあ帰ってきたら一緒に行こうか。それまではお守り代わりにつけているよ」


 もしかしたら、遺跡から帰ってこれたのはこのピアスのおかげでもあったのかもしれない。

 離れていても守ってくれたのだと思うと目が熱くなる。

 それを隠すために彼の胸元に顔を埋めたのだった。









6章完結です。

贖罪のために命懸けの旅に出ることを決めたリーゼ。

その先に待ち受けているものとは──。


次章、ついに最終章です。


1話1話をより丁寧にお届けするため、今後は【毎週日曜日 13時台】の投稿にいたします。


結末まで一緒に見届けていただけますと幸いです。

応援よろしくお願いいたします!

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