064 また明日
己の至らなさに打ちひしがれ、いずれ戻ってくるユーリスにどう告げれば良いのか悩む。
しかしそんな考えをし始めてすぐにユーリスが戻ってきてしまった。
「できましたよ。ババ様に教えてもらった薬草入りのスープです。お口に合えば良いのですが……」
器を私の膝の上に置き、スプーンを手渡してくれた。
それを受け取ろうと握ったのだが手が震えてシーツの上に落としてしまった。
こんなこともできなくなってしまった自分が情けなくなる。
「…………俺が掬いますね」
少し困ったような笑みで落としたスプーンを拾ってスープを掬うユーリス。
少しだけ冷まして私の口元まで運んでくれた。
それに口をつければ、少し変わった香りと塩味が広がった。
香りは独特だが嫌いではない。
そして飲み込もうとしてむせた。
「ゴホッ……ゴホッゴホッ……!」
「すみません、俺のやり方が悪かったですよね……!」
そんなわけないのに、ユーリスは謝りながら背中を擦り介抱する。
私が悪いのだと否定したくてもむせてそれすらも叶わなかった。
「ゴホッゴホッ……ユーリス、大丈夫だから……」
まだ喉が変な感じがする。異物が残っているようで咳が止まらない。
短くそう言うのが精一杯だった。
申し訳無さと呼吸のままならなさで涙が滲む。
「リーゼさん、ゆっくりで大丈夫ですから、少しずついきましょう。俺はいくらでも付き合いますから……」
器もスプーンも傍らの小机の上に置いてユーリスが私を介抱する。
そこまで尽くされるほど、何もできない自身にひどく腹がたった。
それから時間をかけてスープを完食した。
食事をしたからか体の内側から温かさを感じる。
時間をかけすぎて半分も減らないうちにすっかり冷めていたが、きっと薬草の効果なのだろう。
「ユーリス、手伝ってくれてありがとう。ユーリスもお腹すいただろう? 食べておいでよ」
「ですが……」
食器を片付けながら眉尻を下げたユーリスは立ったまま離れようとしない。
そんな彼に今度は私が困ったような笑みを浮かべた。
「私なら大丈夫。また明日お願いしても良いかい?」
明日はきっと今日よりもできることが増えているはず。
そう信じて言った。
これ以上ユーリスの手を煩わせるのは私の信念が許さない。
だからもっと身の回りのことが自分でできるようになったら、そんな思いを込めた。
「……わかりました。明日、起こしに来ますね」
少し寂しそうな表情で言ったユーリスはそのまま部屋を出ていった。
たった一人出ていっただけなのに、部屋の中はとても静かで広く感じる。
胸の痛みをそっと誤魔化して、明日の希望に期待した。




