049 火山の遺跡
階段を下りた先は採掘場よりも広い空間が広がっていた。
そこからは四方に階段が伸びており、その中の一つを使って下りてきたことになる。
「これは来た道が分からなくなりそうだな。一応目印を置いておこう」
空間は四方向すべてが全く同じ造りになっている。
そのため移動を続けるうちにどこから入ったのかわからなくなる可能性があるのだ。
別の階段から進んだ先が他の階段の先と繋がっていれば、間違いなく迷う。
そんな構造ではない保証はないので、とにかくここから来た事がわかるようにしておく必要があるということだ。
アルシウスが目印に置いたのは、採掘場で拝借したままだったスコップだ。
これなら魔物や動物に持っていかれてしまうということもないだろう。
「さて、進むとしたらどこからにするか……」
空間の外へは階段を進むしかないが、階段は残り三方向ある。
どの階段から進むべきか判断する材料は当然ない。
「遺跡ですし、何か書かれていたりしないでしょうか?」
遺跡には往々にして古語が刻まれた石板などがある。
それがあれば何か得られるのではないかということだろう。
冒険者のランク昇格試験に古語がある理由はここにある。
「石板らしいものはなさそうだけど、壁とかにあったりするのかねえ……」
手当たり次第に空間を調べる。
白い空間は外壁と中央の床が離れている。なので外壁に近づくことはできない。
調べるとしたら床や階段横ぐらいしかない。
「——南、祭壇……?」
中央付近にしゃがみこんだアルシウスが言った。
南と言われてもこの環境ではどちらが南かわからない。それに祭壇とは何の祭壇だろうか。
まさか三賜物を祀っているわけではないだろうが、少しだけ期待してしまう。
「なあ、リーゼ。方位の魔法で方角だけでもわからないか?」
「無茶言うんじゃないよ。あの魔法は地図がないと使えないんだ。南部地域の地図すらないのにどうやって使うっていうんだい」
そう返せば、アルシウスはシュンと肩を落として「それもそうだよな」とこぼした。
「……横穴に入ったときの太陽の位置関係から、横穴の向きは南向き。階段の向きは横穴とほとんど同じだから正面の階段が南じゃないかい?」
観察不足だと肩を竦めて見せれば、エステラがあっ! と声を上げ、アルシウスとファイドロが揃ってやってしまったと顔を覆った。
随分と頼もしくなったがまだまだらしい。
「——じゃあ、正面の階段を進もう」
「ちょっと待ちなよ。他にもなにか書かれていないかい? 他の方角についてとか」
問題が解決したことで気持ちが逸っているアルシウスを引き止める。
アルシウスを信用していないわけではないが、古語と言ってもいくつもの系統がある。
万が一読み間違えていれば事故に繋がりかねない。
ここは複数人で確認するべきだろう。
アルシウスがしゃがんでいた所まで来て膝をつく。
床材に確かに文字が刻まれている。
「……南、下ると、祭壇。西、財宝? いや、この場合は宝石……だね……」
刻まれている文字はかなり古い系統だ。
文脈で意味が変わることが多い非常に厄介な言語である。
集まってきたファイドロとエステラも頑張って読んでいるが、首をひねるだけだった。
読めなかったようだ。
「東と北については……あった。——東は薬、北は……記録、か」
「出入り口について書かれていないのが気になりますね……」
私たちが入った場所は間違いなく遺跡の入り口ではない。
そうなると本来の入り口がどこかにあるはずなのだが、この場ではそれはわからない。
少なくとも来た道を戻ったところで何もない。
書かれていることが真実であるならば、もしかしたら崩れてしまったのかもしれない。
「宝石なら、そこに三賜物があるとは思えないな。財宝なら可能性があったが……」
「ならば、一度南に向かうのが良いだろう。何の祭壇かはわからんが、何かを祀っているのであれば、それが三賜物である可能性もある」
「そうだな。エステラ、引き続き先導を頼む」
アルシウスの指示に従ってエステラが階段を上る。
その後に私たちも続く。




