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竜の眠る場所 外伝  作者: 知花 紗采
1章 アストラ
3/13

雷鳥カルラ

 その後、道中で遭遇した魔物を相手に訓練が始まった。


 はじめに軽く説明をして、実際にやってみせる。

 ただ見ただけでは何をしているのかわからないので、動きながらも説明をする。


 その後実際にやらせながら必要に応じて助言もすれば、二、三回やるだけである程度形になった。

 なかなか素質があるようだ。


「やればできるじゃないか」

「はぁ……はぁ……動きが大きいやつなら、なんとか……」


 度重なる戦闘を終え、体力も限界に近いらしい。

 三人は息も絶え絶えの様子で地面にへたり込んでいた。


「今日はここまでにしておこうか。ここらで野宿するよ」

「でも、予定の場所はまだだいぶ先——」

「やめておこう。だいぶ陽も落ちてきている。今の状態で魔物とかち合うのは危険だ」


 ラィスが先に進もうとするのも無理はない。

 なにせ当初の予定では今の時点で目的地付近の村に到着しているはずだったのだ。

 行程が大幅に遅れていると言っても過言ではない。


 だが、体力的にはこのあたりが潮時であるのは明白だった。

 いや、正確に言えば、このあと私が一人戦いながら進むことは可能だ。

 だが、動きの鈍っている三人をかばいながら、かつ暗がりでの戦いは少々骨が折れる。

 安全を最優先すればここで野宿するしか選択肢はない。


 少しの休憩の後、渋々といった様子で野宿の準備をするのだった。




 翌日の昼になってようやく目的地付近の村に辿り着いた。


 昨日の反省を活かして、道中の訓練は程々にしてある。

 なにしろ、この後は主目的である魔物討伐が待っているからだ。

 体力の温存は必須だ。


 村に着いて軽い休憩をしながら作戦を確認する。

 しかし、その場では私は口出しをしない。

 ただ三人を見守るに徹する。


 三人の話がまとまり、ラィスの号令と共に村を発つ。この依頼の本番はもうすぐだ。




 街道をまっすぐ進んで村から少し離れた場所に討伐対象はいた。

 事前の情報通り、標準的な見た目の雷鳥カルラだ。


 雷鳥といえども、別にその身に雷を纏っているわけではない。

 なので直接剣で切りつけたところで感電するようなことはない。

 言ってしまえばただ大きな鳥型の魔物である。


 しかし最低ランクのDではなく、Cランクに認定されているのには理由がある。


 一つはその素早さ。

 その動きの速さゆえに弱点である首を狙うのが難しい。

 更にはその巨体のせいでたとえ地に伏せていたとしても、剣で首を切り付けることができない。


 そして二つ目。

 雷雲を呼ぶ特殊スキルを持っている。

 これが雷鳥の所以だろう。──雷のように速いからという説もあるが……──。

 どんなに晴天で雨が降る気配がなくても、戦いが始まれば立ち所に雷雲が立ち込めると言われている。

 そして雷鳴が轟き、時には落雷も伴うとか。

 噂話程度の情報だが、その真偽はすぐにわかるだろう。


 雷鳥に対峙すれば、すぐにこちらに気付いたように飛翔する。

 巨大な翼が生み出す風圧に砂埃が舞う。

 それに顔を庇っている間に、先程までの晴天が嘘だったかのように分厚い雲に覆われていた。


 ピシャリと短く雷鳴が響く。

 少し間を置いて再びピシャリと響き、暗雲が光った。

 どうやら噂は本当だったらしい。


 そんな大物然とする魔物に対峙する三人に恐れの色はなかった。


「行くぞ!」


 行動開始の合図を叫んだラィスは先陣を切ってスキルを使い雷鳥に飛び掛かる。

 狙うはその目だ。


 首よりも高い位置にあるので当てるのは難しいが、潰せれば飛ぶのは難しくなるだろうという判断だ。


 しかし、当然その動きは見切られ、雷鳥は首を振って、まるでボールを打ったかのようにラィスを弾き返した。

 綺麗に胴体に入ったがゆえにラィスの剣は掠りもしなかった。


 だが次の瞬間にはラィスとは反対側から火球が叩きつけられていた。

 狙い通り目に当たった。

 それに動揺した雷鳥が甲高い悲鳴をあげる。

 ジタバタと翼と足を動かし、しまいにはバランスを崩して地面に倒れ込んだ。


 そこにファイドロが身動きを取れないように片方の翼をもごうと掴んであらぬ方向に持ち上げ引っ張る。

 そして見えた翼の付け根めがけて放たれた風刃によってそれはスッパリと胴体から切り離された。


「やった!」


 その激痛故だろうか。雷鳥は長い悲鳴をあげた。

 それと共に雷鳴は激しさを増し、更には落雷まで始まった。


「全員退避だ! 翼を失えば、後は時間の問題だ! 今は落雷に気をつけろ!」


 ラィスの指示に、雷鳥に飛び乗っていたファイドロも木陰に隠れていたエステラもそれから離れるように飛び退く。


 私は、ここに来て始めて行動を始めた。

 これは作戦通りでも指示があったわけでもない。

 だが致命的な問題になる前に動かなければならなかった。


「傷口が小さすぎる! このままでは奴は弱らない!」


 ジタバタともがく雷鳥は今にも起き上がりそうだった。

 片翼を失ったので飛ぶことはできないだろうが、起き上がられては攻撃を当てるのは難しくなる。


 え? と振り返る三人を尻目に私は一番狙いやすい胸部めがけて槍で突いた。


 槍を引き抜けば、とめどなく血が流れる。

 痛みに雷鳥のもがきが激しくなるが、流れ出る血が増えるだけだった。


 そこから一歩飛び退けば、先程までいた場所に雷が落ちた。明らかに狙ったものだろう。


「後は俺が! でぇりゃぁぁぁああ!」


 遅れて反応したラィスが弱って地に落ちた首めがけて飛びかかり剣を振り下ろした。

 暴れているものの、もはや起き上がるだけの力を出せないそれを仕留めるのは簡単だった。

 首はあっさりと切り落とされ、わずかに痙攣した後、雷鳥は動かなくなった

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