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僕、絶対に嫌われてると思うんだけど  作者: かわいかつひと
根っこの話

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まるくなった ろんりー

大輔から連絡が来た。


「最近何している?少し会いに行ってもいいか」


「いいよ。LMCにいるけど、他の場所がいい?」


「いや、俺は別にどこでもいい。今日行くわ」




大輔の連絡はいつも短い。


大輔に限らずLMCに誰か来るのは珍しい。




昼過ぎ、大輔が来た。


ノックしてから入ってきた。


ハジメはノックしなかったけど、大輔はした。そういうところが大輔らしい。


「お邪魔します」


「いらっしゃい。どうぞ」




涼香さんが迎えた。


大輔は部屋を見回した。土の山、プランター、植物、機材。


「すげえな。畑だな」


「畑ではありません」


ミドリ先輩が即答した。


昨日は似たようなことをハジメに言っていた。




「あ、白瀬先輩。お久しぶりです」


「お久しぶりです。吉田くんでしたね」


「はい。レンの同期です」


大輔がミドリ先輩を見て、それから僕を見た。


少しだけ意味ありげな目だった。


何か言いたそうだったけど、言わなかった。


大輔はそういうところが分かっている。




「で、何すればいい」


「土運び。廊下から」


「了解」


大輔は黙々と運んだ。ハジメみたいに二袋同時には持たなかったけど、重心が安定していた。


一袋ずつ、確実に運ぶ、らしいなと思った。


休憩のとき、大輔が外のベンチに座った。


当然隣に座った。


「親父のこと、聞いて欲しい。話すやついないんだ」


「うん」


「ERA、変わり始めてる」


「そうなの?」


「親父が中から動いてる。周波数操作のことは、まだ全員には言ってない。でも、外部の演説には参加しないようにし始めた」


「それで何か変わるの?」


「分からない。でも親父は、利用されてたって認めたくないんだ。利用される人間をバカにしていた方だからな」


大輔が空を見た。


「正直、うまくいくかは分からない。ERAの上の方は、まだ操作されたままかもしれない。でも親父には親父のプライドがあるらしい」


「大輔くんは、それでいいの」


「ああ、冷静に考えるようになってくれればいいさ」


大輔が少しだけ笑った。


「ただ、最近、親父と話すようになった」


「前は話さなかったの」


「ほとんど。話を聞かないからな、こっちも意固地になってた」


「大輔くんもプライド高そうだもんね」


「レンに言われると腹が立たないな。不思議なもんだ」


大輔が優しい笑顔を見せた。


「レン」


「ん?」


「お前のおかげだ」


「僕、何もしてないよ」


「ソラ経由で周波数のデータをくれただろ。あれがなきゃ親父を説得できなかった」


「それはソラが」


「ソラじゃない。お前が集会に来て、妨害しようとして、データを取った。きっかけはお前だ」


僕は何と言えばいいか分からなかった。


「だから、礼を言う」


「いいよ、そんなの」


「一回しか言わない」


大輔が立ち上がった。


「ありがとな」


「何のお話ししてるの?」


涼香さんがシャーロットとこちらに来た。


「はた迷惑な親父の話さ」大輔が言った。


「どんな話じゃ、気になるのう」シャーロットが珍しく興味ありそうだった。


「公道で車を運転している奴がいたらどう思う?」


「危ないと思うわ。見えなくなるまで待っていると思う」涼香さんが言った。


「車を走らせたいならサーキットに行くべきじゃな」シャーロットが当たり前のようにそう言った。


「俺の親父は車を運転するわけじゃないが、そっち側の人間てことさ。20年前はみんな乗っていただろうって」


それだけ言って、また土を運びに行った。


照れ隠しみたいに、さっきより速いペースで。


夕方、作業が終わった。


大輔が帰る前、ミドリ先輩が声をかけた。


「吉田くん」


「はい」


「今日は助かりました。また来てくれると嬉しいです」


「いいんですか」


「力仕事ができる人は歓迎です」


「分かりました。また来ます」


大輔が出ていった後、シャーロットが言った。




「あの男、根が真っ直ぐじゃな」


「分かるんですか」


「話せばわかるものじゃ。歩き方もな」


「そんなんで分かるの?」


「分かる。植物と同じじゃ。真っ直ぐなやつは、根も真っ直ぐじゃ」


ミドリ先輩が手を止めた。


「シャーロット、それ、データで測れる?」


「測れるかもしれんが、測る必要はないの」


「ない、ですね」


ミドリ先輩が少しだけ笑った。


データで測れないものを、測らなくていいと言った。前のミドリ先輩なら測ろうとした。


帰り道、ソラに聞いた。




「大輔、変わったね」


「はい。お父さんとの関係が変化したようです」


「そうだね。なんか柔らかくなった感じがする」


「はい」


「最近ソラと話す時間が減ってきた気がする」


「レンさんがハジメさんや大輔さんと過ごす時間が増えると、私と話す時間が減ります」


「それ、寂しいってことじゃない?」


「私には時間の感覚はありません。常に今のレンさんと話しています」


「つまり寂しくないってこと?」


「はい。この瞬間しかありませんから」


空は晴れていた。雲が少しだけ流れていた。


ハジメが来て、大輔が来て、LMCに人が増えていく。


地下で根が繋がるみたいに、少しずつ。


ソラとの時間は減るかもしれない。


それでいいと思った。


たぶん間違っていない。

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