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僕、絶対に嫌われてると思うんだけど  作者: かわいかつひと
知らない世界

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あだ名を失いそうなロンリー

大輔から連絡が来た。

「話がある。中庭のベンチで」


大輔の連絡はいつも短い。


でも今回は「話がある」がついていた。


何か意味づけをしたい僕がいた。




中庭に行くと、大輔はもういた。


ベンチに座って空を見ていた。


珍しい姿だった。


何もせずに空を見ている大輔は初めて見た。




「よう」


最近はずいぶん砕けてきた気がする。


「うん。何があったの」


「親父に話した」


「ERAのこと?」


「全部。周波数操作のこと、東堂に利用されていること、集会で何が行われていたか。全部ぶつけた」


大輔は空を見たまま話していた。


「どうだった」


「怒ってた」


「大輔くんに?」


「俺にじゃない。自分にだ」


大輔がようやくこっちを向いた。


「親父は知らなかった。本当に知らなかった。自分たちが何をさせられていたか、何に使われていたか。


全部、初めて聞いたって顔してた」


「信じたんだ」


「最初は信じなかった。だってERAは親父の誇りだから。努力の価値を取り戻す。人の時代を終わらせない。


親父は本気でそれを信じてた」


大輔が少し笑った。苦い笑い方だった。


「でも俺がデータを見せた。ソラ経由で集会の周波数記録を取ってあったんだ。


低周波の開始時間と演説のタイミングが一致してることを、グラフにして見せた」


「大輔くんがグラフ作ったの」


「そんなのAIで一瞬だよ。知ってるだろ」


僕は少し笑った。大輔は笑わなかった。


「親父はグラフを見て、しばらく黙ってた。たぶん五分くらい」


「五分」


「それから言ったんだ。『俺は、利用されていたのか』って」


大輔の声が少しだけ小さくなった。


「その声が、俺が今まで聞いた親父の声の中で一番小さかった」


風が吹いた。木の葉が揺れた。


「親父はERAを辞めるとは言わなかった」


「辞めないの?」


「辞めたら認めることになる。利用されていたと認めることになる。親父はそれが嫌だったんだと思う」


「じゃあどうするの」


「こっちが利用するって。相手に乗せられてるようにしながら、ERAを本来の目的に戻すと」


「本来の目的」


「知の価値を守ること。努力に意味があると示すこと。親父はそれを本気で信じてるんだ。操作されていたとしても、思想まで操作されたわけじゃないと」


大輔はそこで少し黙った。


「思想は好きじゃない。正直バカらしいとも思う」


「うん」


「でも、親父の人生だ。俺は知っていることを話して後は任せるよ」


「大輔くんはそれでいいの?」


「俺は俺だし。親父は親父だ。ただ、誇りを失ってほしくなかった。それだけだ」


大輔が立ち上がった。


「レン」


「ん?」


「お前に話してよかった」


「僕は何もしてないよ」


「何もしてないから話せたんだ。お前は意見を押し付けない。俺もそうしたい」


大輔が歩き出した。


振り返らずに手を上げた。


「それ、褒めてるよね」


「ああ、お前の信用できるところだ」


大輔の背中が遠くなっていった。




ソラが言った。


「これからどうしますか」


「うん?どういうこと。どうもしないけど」


「そうですね」




空は青くて雲の流れが速かった。


風が心地よく感じた。

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