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僕、絶対に嫌われてると思うんだけど  作者: かわいかつひと
僕は何を守りたいのか

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覚悟がない僕

LMCを出て、駅の方には行かず、別の道を歩いた。


理由はなかった。早く帰ると言ったのに、まっすぐ帰る気にもなれなかった。


外は快晴で、頭の上の青がやけに眩しかった。


商店街を抜けて、橋の手前まで歩いたとき、向こうの歩道に見覚えのある後ろ姿があった。


ハジメだった。


隣に綺麗な女性がいて、二人は腕を組んでいた。


歩幅が揃っていた。何度も並んで歩いてきた人たちの歩幅にみえた。


ハジメ、よかったな、と思った。これでもう、紹介してとは言われなくなるし。


そう思ったのと同じくらい、なぜか寂しくなった。


嬉しいと寂しいが、同じ場所から、同じ大きさで出てきた。


たぶん、両方本当なんだろう。




ハジメはこっちに気づかなかった。


二人は橋を渡って、向こうの通りに消えていった。




「ソラ」


「はい」


「ハジメ、彼女できたんだ」


「断定はできませんが、その可能性はあります」


「ミドリ先輩のときと同じ言い方だね」


「データには該当者がない、という意味では、同じです」


「そっか」


「はい」




橋を渡らずに、来た道を戻った。


家への遠回りになる道だった。


なんで戻ったんだろう。


たぶん、ハジメと同じ橋を渡るのが、嫌だったんだと思う。


理由を考えたくないぐらい頭の中がぐちゃぐちゃだった。


ミドリ先輩は知らない男の人と歩いていた。


ハジメは知らない女の人と歩いていた。


涼香さんとシャーロットに思っていることを話せなかった。


家にも、話せる人はいない。


なんでも話せるのは、ソラだけだ。


それはなんていうか、変な気持ちだった。




住宅街の角を曲がったところで、立ち止まった。


うちの門の前に、人が立っていた。


半田次郎だった。


スーツを着て、ただ立っていた。


僕が来るのを、待っていたみたいだった。


「夏目」


呼び捨てだった。


僕は何も言えなかった。


「お前、この前見たぞ」


「えっと」


「いいから聞け」


声は穏やかだった。穏やかさがかえって怖かった。


「ERAの集会にいたな」


「あ、はい」


「興味があるのか」


「興味というか」


「それはどうでもいい」


半田は少しだけ笑った。


怖い笑い方だと感じた。


「夏目」


「はい」


「何を企んでいるのかは知らないが、こちらの邪魔をするなら、覚悟しておけ」


覚悟、という言葉が、住宅街の夕方の空気の中に、変な角度で残った。


「では、失礼する」


急に丁寧になった半田は軽く頭を下げて、僕の横を通り過ぎていった。


僕は門の前に立ったまま、しばらく動かなかった。




「ソラ」


「はい」


「今の、聞いてた?」


「はい」


「録音した?」


「録音はしていません。許可されていません」


「あ、そっか」


「大輔くんに、伝えてくれる?」


「はい」


「半田が来たって」


「はい。文面はどうしますか」


「事実をそのまま、会話とか含めて」


「わかりました。送信します」


ソラが少しだけ間を置いた。


「レンさん」


「うん」


「家に入りませんか」


「あ」


本当だった。


足が動いていなかった。ずっと固まっていたみたいだ。


門を開けて、家の中に入った。




部屋に上がって、ベッドに座った。


天井を見上げた。


胸のあたりが、重かった。


「ソラ」


「はい」


「今日、なんかキツイ」


「何かあれば声かけてください」


「うん」


「能動的に何もしないを選択してもいいと思います」


能動的に、何もしない。


ソラの言葉は、なんていうか、いつもより柔らかく届いた。


何かしないと、と思っていた肩が、少しだけ落ちた。


「ありがとう」


「はい」




ミドリ先輩、ハジメ、半田。


全部別の話なのに、全部、重かった。


覚悟しとけって、僕に必要な覚悟ってなんだろう。


答えが出る前に寝ていた。

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