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僕、絶対に嫌われてると思うんだけど  作者: かわいかつひと
僕は何を守りたいのか

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ただの下見ですから

集会の当日、朝から雨が降ったり止んだりしていた。


大輔くんから「一時間前にカフェに来てくれ、場所は送る」とメッセージが来ていた。


会場まで歩いて10分ぐらいのところにある古いカフェで、僕は行ったことがない店だった。




カフェに着くと、大輔くんは奥の席にいた。


窓際ではなく、一番奥。


入ってきた人間が全員見える位置。


「早かったな、助かる」


「ええ、まあ」


向かいに座る。


大輔くんはコーヒーを飲んでいる。


僕は紅茶の注文を送信した。




「今日の段取り、確認してくれ」


「はい」


「集会は十九時開始。会場は第三講堂。会場が開くのは十八時十五分。半田がデバイスを置くのは、会場と同時だ」


「一緒に入ると気づかれますか」


「いや、大丈夫だろう。これまでの二回の集会は気づかれなかった」


「あいつも忙しいからな。決まったパターンがある」


大輔くんは少しだけ笑った。


「レンは後から来ればいい。俺が開場と同時に入る。」


「半田の行動を確認して、レンに伝える。レンはそれを確認して欲しい」


「はい、大丈夫だと思います」


「もし気づかれたら、そのときはどうするかはソラに詳細を送る」


「はい」




大輔くんが手元のコーヒーをゆっくり回した。


「レンの仕事は三つだ」


「はい」


「一、半田がデバイスを置く位置を見る。壁際か、机の下か、演壇の近くか、具体的な場所を覚える」


「はい」


「二、デバイスの形を見る。サイズ、色、目立つ特徴。写真も録画もなしだ。目で見て覚える」


「記憶だけ、ですか」


「ああ。記録は残る。後で解析される可能性がある」


「怖いですね」


「不利になる可能性はなるべく排除しておく」


大輔くんは当たり前のように言った。


「三、自分は聴衆の一人として振る舞う。演技はいらない、普通の顔で聞いてろ。


集会が終わったら、周りに混じって適当なタイミングで出ろ。」


「普通の顔で聞く」


「演説が始まれば、周波数が流れる。わかっていても影響があるかもしれない」


「あ」


忘れていた。止めるんじゃなくて、今日は見に行くだけだ。


つまり低周波も高揚の周波数も、両方かかる。


「気分が落ちて、その後上がる、ってやつ、受けるんですよね」


「大輔くんは平気でしたか」


「知っていれば、どうってことはない」


「そんなものですか」


「来ると分かっていれば、受け流せる」




大輔くんはコーヒーを飲み干して、立ち上がった。


「じゃあ、俺は十八時十五分に会場に入る。レンは後から来い」


「大輔くんは、どこの辺に」


「入口の反対側。レンとは目を合わせない。今からお互い知らない人間だ」


「了解です」


大輔くんは先に店を出ていった。


僕は紅茶を少し残したまま、少しだけ座っていた。


「ソラ」


「はい」


「僕、緊張してる?」


「してませんね」


「やっぱりか」


「今日は下見だからじゃないですか」


「そっか」


「レンさん」


「うん」


「大輔さんの指示、三つ。全部覚えていますか」


「位置、形、普通の顔」


「はい」


「大丈夫、覚えてる」




十八時四十分、第三講堂に着いた。


入口で簡単な受付があった。


名前を書く欄があって、僕は夏目とだけ書いた。


受付の学生は顔を上げなかった。


中に入る。講堂は思っていたより広かった。


椅子が三百くらい並んでいる。演壇があって、その後ろに大きな旗が掛かっていた。


Bring Back the Era.


旗の下に、小さくElite Recognition Allianceと書いてあった。




「ソラ、指示はきた」


「はい。入口付近の消火栓の裏。反対側の通路出口の横。二箇所です」


講堂の入口近くの壁際に歩いていって、そこにある消火栓の箱の横を覗いてみる。


大きさは、大きめのコップくらい。色は黒。表面に何か小さなランプのようなものが見えた。


そこから席を探すふりをしながら通路出口へ。


同じものがあった。


僕はフーッと息を吐いた。




僕は後ろから三列目、通路側の椅子に座った。


なるべく目立たない場所、全体が見える位置。


人が埋まり始めた。


僕は何気なく周りを見るふりをしながら、入口を見ていた。


十八時五十分、次郎が入ってきた。


今日は眼鏡じゃないタイプのデバイスなのかもしれない。大きな鞄を肩にかけていた。


一番後ろで鞄の中を開けている。




演壇の方で、会長の姿が見えた。


いつも通り穏やかな顔をしていた。


何人かと挨拶をしている。こちらを見る気配はなかった。


十八時五十五分、低周波が流れ始めたらしい。


らしいというのは、何も聞こえなかったからだ。


ただ、なんか、落ち着かない。


椅子の座り心地が悪いわけじゃない。


隣の人が変なわけでもない。


理由のない不快感が、胸のあたりに、ゆっくり広がっていった。


これか、と思った。


大輔くんが言った通りだった。聞こえない。でも、感じる。


僕は唾を飲んで、呼吸を意識した。


普通の顔で聞いてろ、と大輔くんは言った。


普通の顔を作るのは、思ったより難しかった。


これは長い時間は無理だと思う、ちょっと強すぎるのではと心配になった。


「大輔さんからです。今日は特に強力だ、しばらく我慢しろと」


壇上に人が上がってきた。


拍手が起きる。


壇上の人が手を挙げて拍手を制した。


その瞬間、身体が楽になる。


嫌な感じだ。

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