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僕、絶対に嫌われてると思うんだけど  作者: かわいかつひと
僕は何を守りたいのか

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色が変わったミドリ

LMCに着くと、今日は涼香さんとシャーロットの両方がいた。


「レンくん、おかえり」


「ただいま」


ただいま、と返してから、家じゃないけど、なんかいいなと思った。


涼香さんのおかえりが自然だったから、ただいまも自然にでた。


シャーロットはいつもの調子だ「おお、来たか。今日はどうじゃ」


「普通です」


「それが一番じゃな」


「シャーロット、そればっかり」涼香さんが笑った。


「真理じゃからな」




今日は音叉、シンギングボウル、ティンシャを鳴らして、それぞれの値を記録する。


手を動かしていると、集会のことを少し思い出した。


三日後、と大輔くんは言っていた。




「そういえば」と僕は言った。「ERAの集会、あと二日後なんですけど」


「そうなんだ。今度は何かするの?」


「はい、ちょっとだけ」


「何かわかったのかえ?」とシャーロットが聞いた。


「わかりました。最初に低周波を流して、気分を落としてから、上げる仕組みなんです」


「落としてから上げる」


「はい。そうすると、印象が何倍にもなるみたいで」


シャーロットが立ち上がった。




「レン、それ、妾たちに使ってみよ」


「え」


「本当に効果的か確かめるのじゃ!」


「使わないですよ」


「なぜじゃ?妾たちとデートできるのじゃぞ」


「いや、そんな装置ないですし」


「装置の話ではない」


シャーロットは真顔だった。


「それにミドリ先輩に嫌われたばかりなのでそんな気分にはなれないです」


「それは関係ないじゃろ」


そうかもしれない。


「レンくん」と涼香さんが手を止めた。「ミドリのことね」


「はい」


「今日もちょっと話したの」


「あ、すみません、何度も」


「ううん。なんか、変なのよ」


「変」


「いつものミドリなの。話し方も、歩き方も、研究のことも、いつも通り。なのに」


「なのに?」


「男性に対して、反応がおかしい」


僕は手を止めた。


「男性、ですか」


「うん、そう。すれ違う学生にもね、ちょっと身を引くのよ。ほんの少し。普通なら気づく人はいないレベル」


「ミドリは男嫌いだったわけではないのじゃろ?」とシャーロットが聞いた。


「うん、全然。ミドリはむしろ男女に偏りがない方。なのに、今は明らかに違う」


シャーロットがうなずいた。


「妾もそれは感じた。気配の縮み方がじゃ」


「気配が縮む」


「うむ。男性が近づくと、ミドリの気配が一段小さくなる。怖がっているというより、反射じゃな。


自分で気づいているかも怪しい」


涼香さんが続けた。


「ねえレンくん、念のために聞くけど」


「はい」


「ミドリに何かした?」


「してないです」


即答した。即答してから、一瞬考えたけど、やっぱり即答でよかった。


「ソラもそう思う?」


「はい、レンさんはしていません」


ソラがすぐに答えた。


「ミドリさんに不快な行動を取ったデータはありません。断言できます」


シャーロットが笑い出した。


「わっはっは」


「え、何ですか」


「ソラよ、もうちょっと他の言い方はなかったのか」


「と、言いますと」


「不快な行動を取ったデータはありません、と言うより、他に言いようがあろう」


「たとえば?」


「レンさんはそういうことをする方ではありません、とかじゃ」


「それは、断言できませんので」


「たとえば『レンさんは意気地なしなので』とかな」


「それは否定できません」


「わっはっは」


涼香さんまで笑った。


僕はどうすればいいのか困った。


笑いが収まってから、シャーロットがこっちを向いた。


「ところでレン、お主はミドリのことどうなのじゃ」


「え?」


「幼馴染らしいの」


「あ、その話」


「うむ」


「いや、あんまり覚えてなくて」


「覚えておらんのか」


「覚えてないんです、本当に。母さん同士が友達だったらしいんですけど、僕は」


「そっか」


シャーロットは少しの間、黙った。それから言った。


「嫌われても別に構わぬのか」


僕は少し考えた。


考えるまでもなかったかもしれない。


「いや、嫌われても別にいいやとは、言えないですね」


「ほう」


「それは、嫌ですね」


「ほう」


シャーロットはうなずいた。


「はい」


涼香さんがモニターから顔を上げた。


「レンくん、まだわからないから今は気にしないでね」


「はい」


「返事が軽いわよ」


「そうでもないですよ」


「ならいいわ」


涼香さんは笑った。




帰り道、空は少し赤かった。


「ソラ」


「はい」


「僕はどうしたらいいんだろう」


「人の気持ちを考えてもどうにかできるものではありません。できることを頑張りましょう」


「できることって?」


「とりあえずは大輔さんとのことです。あとは普段の生活に集中することです」


ソラがそう言うのを、僕は嬉しいと思った。

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