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僕、絶対に嫌われてると思うんだけど  作者: かわいかつひと
数値では測れない

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30/62

何もなさそうな日常

いつも通りカフェは静かだった。


注文を終えてから、しばらく誰も口を開かなかった。


ミドリ先輩がカップを両手で持って、テーブルの一点を見ていた。




「なんで感情スキャンの実験が始まったんですか」と僕が沈黙を破った。


「もともとは少子化対策のひとつです。今となっては少子化が悪いことではなくなってしまいましたが」


「ずいぶん人口も減ったみたいですね」と僕は言った。


「ピーク時から三分の二以下です」とユイが言った。


「今では適正人口はさらにその半分という試算もあります」


「誰かが感情スキャンで結婚する男女を増やす計画です、お互いの気持ちを知って」


「だから同意がいるんですね」


「結婚制度が形骸化した現代では皮肉に思えますが、実験がスタートした時には深刻な課題だったのです」ソラが言った。




「……今後も注意が必要ですね」先輩がつぶやいた。


「そうですね、僕はなんか高揚感のようなものを感じて力が湧いてくる気がしました」


「飲み込まれなくてよかったです。私も注意していたのですぐに気づきましたが、何も知らなければどうなったか」


確かにそうだ、大輔がいなかったら、もしひとりで聞いていたらと考えると怖いかも。


「どこからやっていたんでしょうね」


「周波数はあまり外壁など関係ありませんので、中からではと思います」先輩がカップを置いた。


「もしかしたら、外にいる人も影響受けたかもしれないですね」


「ええ、本人は何が起きたのかわからないでしょうけど」


「次の集会でどこからか探せますか?」


ミドリ先輩がスマートグラスのレンズを触れた。


「ええ、大体の場所は特定できると思います」


「やり方を教えてください。先輩を危険に晒す訳にはいきませんから」


「え、それって」ユイが呟く。


「あなた達は私が守ります」ソラが言った。


そこはレンさんがじゃないのと思った。


変な沈黙があった。




「私たちの実験も続けていきましょう」と先輩が言った。


「そうですね。涼香さんの件は実験をやめさせるためかもしれないと思いました」


「そうかもしれません。たまたま涼香が現場にいただけで今のところ標的になった訳ではないと思っています」


「涼香さんに伝えましょう」


私が伝えておきますと先輩が言った。




「夏目くん」


「はい」


「今日はありがとうございました」


先輩と一緒に学校に戻ってきた。


涼香さんには今日行かないと言ったけど、顔だけ出して帰ろう。


そう思った。




第30話 お気楽なシャーロット




多種意識研究室(LMC)のドアを開けたら、シャーロットが水やりをしていた。


「おぉ、来たのかえ」


涼香さんはホワイトボードの前にいた。


ミドリ先輩が涼香さんに近づいて、何か話しかけた。


二人が会話の聞こえない距離まで移動した。




「どうだったのじゃ、デートは」とシャーロットが聞いた。


「デートじゃないですよ」


「ソラがそう言っておったぞ」


「たまにふざけるんですよ」


「デートにできなかった、レンさん」とソラが言った。




シャーロットが植物に水をやりながら笑っていた。


以前から思っていたが、綺麗な人だと思う。


笑い方が特に。こんな人とデートしたら緊張しそうだな。


なんかモヤモヤする。


「シャーロットさん、僕とお茶でもいきませんか」


言ってやったぞ。


「妾を誘うとは目の付け所が良いのぅ。じゃが今回は遠慮しておく。」


二人で笑い合った。


「レンは面白いのう」とシャーロットが言った。


「うーん、なんかごめんなさい」


「素直に受け取ればよいのじゃ」




遠くでミドリ先輩が涼香さんに話していた。


涼香さんの表情が少し変わった。何話してるのかな。




「ミドリはレンのことが好きなのじゃろ」とシャーロットが言った。


「それはないですよ。最近やっと警戒が薄れてきたとは思いますが」


「そうなのか」とシャーロット。


「そうですか」ソラが言う。


「では、四人でお茶に行こう。そこで妾にアプローチするのじゃ」


僕はシャーロットを見た。


「今回は止めさせていただきます」ソラが言った。


これはどっちだ?行かせたいのか、ほんとに行かせたくないのか。


シャーロットはニコニコしている。


「他の女性がいるところでアプローチはしませんよ」


「そうじゃな。妾も困るわ」とシャーロットが笑った。




ミドリ先輩が戻ってきた。


「伝えました」


涼香さんがこちらを見た。自然な笑顔に見えた。


「ありがとう、レンくん」


「いいですよ。なんのことかわかりませんけど」


涼香さんが「いろいろと動いてくれたこと」と言った。


「レンよ、先ほど妾に言ったことを言うのじゃ」


「言いませんよ、そんなこと」


「なんか仲がいいわね」涼香さんにツッコまれる。


ミドリ先輩が少し止まった。




「それより四人でお茶しましょう」


「そうね」「そうじゃな」「わかりました」


僕はなんとか乗り切った、気がした。

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