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僕、絶対に嫌われてると思うんだけど  作者: かわいかつひと
数値では測れない

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模造された感情

「明日は来れません」


涼香さんが手を止めた。シャーロットも振り向く。


「どこか行くの」と涼香さんが聞いた。


「ERAの集会です。ロンリーと一緒に」


「吉田大輔くんって知ってる?」とミドリ先輩が言った。


涼香さんが「ロンリー?吉田くん?知らない」と聞いた。


「3人で行くの」と先輩が答えた。


「ミドリそんなの興味あるの?」と涼香さんが聞いた。


「それほどでもないけど、夏目くんに誘われたから」


ん?誘ったっけ。....まあいいか。




涼香さんが「そうなんだ」と言って、何かを堪えるように植物の方を向いた。


シャーロットが英語で何か言った。


ソラが訳すのが一拍遅れた。


「シャーロットさんは、数値が揺れたのじゃと言っています」




——


集合場所に大輔が来ていた。


「白瀬さん、来たのか。意外だな」と大輔が言った。


「はい、ご迷惑でなければ」とミドリ先輩が返した。


「もちろん、オープンな会だ。多い方が主催者も嬉しいだろう」




「一つ聞いていいか」と大輔が言った。


「二人は昔、勉強しろとか言われたか」


「言われてないです」と僕は言った。


「しつけはされましたが、基本的に好きなことしてろって感じでした」


ミドリ先輩も「私も特には」と言った。


「そうだろう」と大輔が言った。「普通はそうだ」


少し間があった。




「俺は違った」と大輔が言った。「興味がないことも全部やれと言われた」


「なぜですか」と僕は聞いた。


「それが正解だったから。AIがない時代の話だ。親父はそう教え込まれて、信じて、やり遂げた」


「やり遂げて、どうなったんですか」


「価値のないものになった」


少し間があった。


「許せないんだろう」と大輔が言った。


「だから認めさせないといけない。それを正しいとは思わない。ただ、気持ちはわかる気がする」


——


会場は大学近くの公民館だった。


最初は静かだった。パイプ椅子が並んでいて、スーツを着た人たちが座っていた。


こんなにたくさんのスーツ姿を見るのは初めてかもしれない。


演説が始まった。


「我々は時代に敗れたのか?違う!ここから新たな始まりなのだ!


AIに比べ、我々人間の処理能力は比較にならない。しかし、今日まで社会を支えてきたのは誰だ!


諸君、我々が支えてきたんだ。これは諸君らが一番知っている。


我々は学び、努力し、積み上げてきた。そして一握りのAIが、その全てを無価値に見せた。


人間の叡智に価値がないと誰が決めた。努力が報われないと誰が決めた。


AIに屈した軟弱者たちでは——」




内容は知識の価値について、努力が報われない時代への怒りについて、人間の存在意義についてだった。


「なんか応援したくなる感じがある」とソラに言った。


「そうですか」とソラが言った。


「いいことを言ってるとは思えないんだけど」


「どういうことですか」


「ちょっと興奮してる。でもなんでだろう」


ソラが0.三秒止まった。




人が増えてきた。


野次馬らしき若い人たちが後ろに集まってきた。


若い人が多いのが少し不思議に感じる。


熱気も出てきて、演説者の声が大きくなってきた。


演説が終わり拍手が起き、僕も思わず拍手した。




なんかおかしい。


内容は特別良いとは思わない。


でも反応している。これはなんだろう。


——


会場を出てから大輔に言った。


「何かおかしかった、周りに感化されたのかな」


大輔がミドリ先輩を見た。


「気づいたか」と大輔が言った。


「知ってたんですか」とミドリ先輩が聞いた。


「確認したかった。気づける人間がどれだけいるか」




ミドリ先輩が「周波数を共振させています。おそらく熱気や興奮するようなもの。」と言った。


声が少し低かった。


「会場内に何かを流していた。いくつかミックスしていたのではないかと思いました」


「それって」


「感情スキャンの逆用です。スキャンではなく、送信」




大輔が「これをやってるのが東堂なのか、まだ黒幕がいるのか」と言った。




「気づけたのは才能だよ」大輔が言う。


「でも、何も知らない状態だったらどうだろう」と僕。


僕は会場の入り口を見た。


人が出てきていた。


みんな少し興奮した顔に見えた。




「今日はありがとう、親父のところ行ってくるよ。また連絡する」


大輔はそう言って去って行った。


「夏目くん、帰りましょう」


「はい、少し寄り道していきましょう。カフェに行きませんか」


「それって...」ユイが呟く。


「ええ、デートと思ってください」とソラ。


コメントしづらくなってしまった。


先輩はなんか固まってるし、まあとりあえず行けばいいか。

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