動く世界
夜に大輔からメッセージが来た。
「話がある。明日の朝、そちらに行きたい」
詳しい用件が書いていないのは、いつも通りだ。
家の近くの公園を指定した。
——
公園に行ったら、大輔はすでにいた。
「早いね、報告」と僕は言った。
「動きが早かった」
大輔が少し周りを見た。
人が来ないのを確認してから口を開いた。
「東堂がERAを使ってスキャンをしてるらしい」
「ERAのメンバーに?」
「ああ。幹部クラスを中心に、感情データを収集している」
しばらく黙った。
「親父さんも?」と僕は聞いた。
「たぶん」
大輔の顔が少し変わった。
「ただ本当に東堂なのかはまだわからない。ただ、何回か半田は出入りしているようだ」
「ERAにスキャンの有用性を示したみたいだ。自分たちが実験台になってね」
「会長とERAの目的は違うけど、手段として協力できると言うことですか」
と聞いた。
「動かしやすい人間とそうでない人間を選別しているんじゃないか」
と大輔が言った。
「操れる、ということですか」
「そう考えている」
以前会ったときの東堂先輩の言葉を思い出した。
「感情をデータにできる時代に、まだ勘で動く人がいるのが不思議でね」
「半田は目立つ」と大輔が続けた。
「デバイスの調達、ERAとの接触。他にも何かしているかもしれない」
半田のことを思い出す。
「君は半田と話したことがあるだろう」
「ええ、少しだけ」
「どう見えた」
少し考えてから答えた。
「忠犬です。単純そうに感じました」
「単純かどうかはわからない、そう見せているだけかも」
大輔がまた周りを見た。
「半田に会ってみる。東堂の動きを近くで掴むには、半田を経由するのが一番早い」
「一人でですか」
「一緒に来るか?」
「一応知り合いなんで、偶然に出会った演出をしましょう」
「そうだな。行動パターンを調べて偶然に出会おう。また連絡する」
大輔が少し間を置いた。
「それと明後日ERAの集会がある、都合がつくなら一緒に来てほしい」
「わかりました」
大輔が立ち上がりかけた。
「面白いものを見せれると思う」
そう言って行ってしまった。
「ソラ、どう思う?」
「さあ、行ってみて考えましょう」
「ミドリ先輩にも伝えようかな。でも、そっけなくされそうだ」
「それはレンさんがそっけないからではないですか」
「だってなんとなく圧を感じるんだよ」
——
ラボに行くと涼香さんとシャーロットが植物の記録をとっていた。
ミドリ先輩も一緒だ。
先輩を廊下に呼んで伝えた。
二人に聞かれたくないわけじゃないけど、なんとなく。
涼香さんがこっちを見た、なんか気まずい。
話し終わったとき、先輩はしばらく黙っていた。
スマートグラスのレンズが薄く光った。
「夏目くん」
「はい」
「ERAの集会は一緒に行ってもいいですか」
「はい、行きましょう」
今回は圧を感じなかった。




