音にならない声
「この子たち、レンくんが来るといつも嬉しそうよね」 シャーロットが言った。
「そうね」と涼香が言った。
「データ見なくても感じるわ」 植物たちは今日も静かだった。
データは出ている。
何を言っているのかはわからない。
「ミドリまで来るようになったのも面白いよね」とシャーロットが続けた。
「ミドリ、いつも何か言いたそうで」
「そうね。幼馴染らしいのよ、二人」
「え、そうなの?」
「ただレンくんがあまり覚えていないみたいで」涼香が少し笑った。「ミドリが怒っていたわ」
シャーロットが「ふふ、それは悲しいかも」と笑った。
しばらく植物の記録をつけながら、シャーロットがまた言った。
「レンくんって、掴みどころがないわ。不思議な感じがする」
「そうね。本人は僕は普通ですみたいな顔してるけど」
「もっと話したいな、涼香は?」シャーロットが涼香を見ながら言った。
「そうね。でも、そんなんじゃないから」
「ふふ、なにも言ってないけど」とシャーロットが笑った。
「ミドリがモタモタしてる間がチャンスじゃない?」
「だからそんなんじゃないってば」 シャーロットがまだ笑っていた。
涼香は植物の方を向いた。
「でも」とシャーロットが言った。
「あの人たちが来てから、この子たちも元気になったみたいね」
涼香が端末を見た。
「数値的にもそう出てる」
「場所の空気に共感しているみたい」とシャーロットが静かに言った。
「優先は温度や湿度の環境だけど……私たちから出ている波長が心地よいのかもしれない」
「そうかも。実験として考えれば、悪意を出すのも手だけど」
「それはしたくない」と涼香が言った。「私も」
二人でしばらく黙った。植物たちも風に揺られているだけだ。
「あ」とシャーロットが言った。 窓の外に、二人の人影があった。
ミドリが前を歩いていた。レンがその後ろをついていた。
「ミドリがレンくんを従えてるみたい」とシャーロットが言った。
「無口な上司と能天気な部下」 涼香が笑った。
しばらく二人とも黙った。
窓の外で、ミドリとレンが建物に入ってくるところだ。
「さあ、データとにらめっこしましょうか。何か変化あるかも」
涼香が楽しそうにそう言った。




