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僕、絶対に嫌われてると思うんだけど  作者: かわいかつひと
見られる者達

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19/64

レンの悪くない日常

朝、実験室に着いたらミドリ先輩がすでにいた。


端末を見ていた。


こちらに気づいて「おはようございます」と言った。


おはようございますと先輩、コチラを向かなかった。


だからちょっと踊ってみた、でも一瞥しただけで何も言われなかった。




「何かわかりましたか」と気を取り直した僕は聞いた。


「少し」とミドリ先輩が言った。


「状況証拠はありますが」


そう言ったミドリ先輩にオレンジジュースを差し出す。


たまに飲んでるのを知っている。


「これは?」


「好きなんじゃないかなと思って」


「どうして・・・でも嬉しい」とユイ。


「ユイ」


「喜んでもらえて嬉しいです」


「あとでいただきます。ありがとうございます」


ミドリ先輩は固まった表情でそう言った。




「本当はすぐ飲みたいけ・・」


「ユイ、黙って」


先輩がタブレットを僕の方に向けた。数値のログが並んでいた。


「犯人が持っていたとすれば、このくらいの端末です。市販されているものを改造したのかもしれません」


「どこで手に入るんですか」


「自作か闇市場でしょう」


さらっと言った。


「……闇市ですか、普通に言いますね」


「闇市と言っても、危険なわけではありません」


「お金が使えないから、誰が何を売って何を買ったのかが追えないだけです」


先輩がタブレットを戻した。


「確認する方法がありません」


「直接聞きに行けばいいんじゃないですか」


ミドリ先輩が止まった。


何かを言いかけて、やめた。




なんだろう。機嫌が悪そうだ、ちょっと軽はずみだったかもしれない。


「すみません、余計なことでしたか」


「……いいえ」


先輩がスマートグラスのレンズを軽く触れた。


しばらく黙っていた。


「……ちょっと考えてみます」とミドリ先輩が言った。


「行くなら着いてきてね」とユイ。


「もちろんです」とソラ。


なんだよ、勝手に進めるな。



——


昼、食堂でハジメに捕まった。


「レン、久しぶりじゃん。最近どこいたの」


「いろいろあって」


「いろいろって何、ミドリ先輩と事件調査?」


なんで知ってるんだろう。


噂になっているのかな。


「うん、まぁ」


「そっか、いいな。俺は瑞稀さん押しまくったから、そろそろ引くとこ」


「戦略的一時撤退です」トッポが言った。


「だよな」とハジメが頷いた。


「よくわかんないけど、あんまり迷惑かけないでよ」


そんな会話をしていると、ミドリ先輩が食堂に入ってきた。


僕の隣に座った、自然に。


ハジメが一瞬固まった。


「白瀬先輩、お疲れ様です」


「……ええ」


ハジメが僕を見た。僕を見てミドリ先輩を見て、また僕を見た。


にやにやしていた、いやな顔だ。




「何ですか」とミドリ先輩が言った。


「いや、なんでもないっす」




ハジメが急にトレーを持って「あ、瑞稀さんいた、ちょっと失礼」と消えた。


「何ですかね」と僕は聞いた。


「わかりません、気にせず食事しましょう」とミドリ先輩が言った。


二人で黙って食べた。


うちの家族は食事中よくしゃべった。でも先輩はまったくしゃべらない。


なぜか僕にはしっくりきた。


——


午後、廊下で涼香さんと会った。


一人だった。



「あ、レンくん」


「こんにちは」


「ミドリは?」


「さっきまで一緒でしたけど」


「そっか」


涼香さんが少し笑った。


いつもより薄い笑い方だった。


「最近どう、ミドリ」


「普通じゃないですか、変わらないですよ」と僕は言った。


「そっか」




涼香さんがまた笑った。今度は少しだけ本物に近かった。


「ありがとう」


「何がですか」


「いろいろとね」


涼香さんが廊下の向こうへ歩いていった。


ソラが静かに光った。


何も言わなかった。


——


帰り際に「ソラ」と呼んだ。


「はい」


「事件のこと何かわかるかな」


「あり得ないものを一つずつ排していけば、たとえどんなに突飛に思えても、最後に残るものこそ真実だ。ワトソン君」


「なにそれ」


「言いたかっただけです」


「意味がよくわからないよ」


「言ってみたかっただけです」


なんか、ソラらしい気がした。


たまに出る楽しいソラだ。


夕焼けもきれいで、気分が良かった。

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