婚約破棄で別れた私と彼、まったく異なる人生を歩むこととなったようですね。~さくっと切り替えて進みます~
「あんたって面白くないよな」
婚約者ロバートは食事中突然そんな風に切り出してきた。
「え……っと、何の話?」
「いやだからあんたが面白くない女だって話」
「……それを言いたかっただけということ?」
「ま、そんな感じだな」
パンをちぎりながら言葉を紡ぐロバートは一瞬こちらへ視線を向けることすらしない。
「てことで、婚約は破棄な」
顔を見ることもしないまま、彼はそんな重大な宣言をしてくる。
「婚約破棄? ……それはさすがにちょっといきなり過ぎるんじゃないの」
「こっちの勝手だろ」
「そういう問題じゃないわ! しかも、目を向けもしないままで告げるなんて、失礼としか思えないわよ」
「知るかボケェ」
「もう……どうしてそんな汚い言葉を使うの。おかしいじゃない。しかも上手く言えてないし……」
それからも幾つか言葉を交わしたけれど、まともな会話が成り立つことはないままで――結局その流れのままに婚約は破棄となったのだった。
後にロバートの親からは謝罪があったのだが、正直どうでもいい、といったような気分だ。
今はただ、彼のことについて考えたくない。
脳内に彼の名が出てくるだけで不快だから。
とはいえ、彼とはもう終わったので、これ以上ああだこうだと言うつもりはない。
ここからはそれぞれの道を行くだけだ。
◆
あれから五年。
かつて婚約していた私と彼は真逆の現在を生きている。
私は、ロバートに婚約破棄された後ゆっくりとだが結婚相手を探し始め、やがて気の合う人と巡り会うことができて結ばれた。
夫婦で新しい家庭を作り、穏やかに暮らし、そうした中で子にも恵まれて。
今は、子育てで忙しいけれど充実感もある日常の中で、バタバタしつつもそれなりに楽しく生活できている。
この道が最良のものであったかどうかは定かでない。
ただ不幸だとは思わない。
特別なことなんて何もない、いたって普通の家庭だけれど、だからこそ出会えるたくさんの小さな幸せがここにはある。
一方ロバートはというと、私との婚約を破棄してから実家で何もせずぶらぶら暮らしていたらしく、健康的でない生活を積み重ねた結果、近頃身体のあちこちに問題が発生してきてしまっているらしい。
血管に異常が発見されたり、内臓の働きが低下してしまいつつあったり、と、お年寄りなわけでもないというのに非常に健康的でない状態となってしまっているそうだ。
また、担当の医師からは「このままの生活を続けていると間違いなく長生きできない」とたびたび注意されているそうなのだが、本人には改善の意思がまったくなく、だらしない生活を継続してしまっているそうで。健康状態は悪化する一方、とのことである。
◆終わり◆




