これからもずっとこうやってお茶会しよう、と言ってくれていた彼は、ある日突然……?
「来週もまた晴れるといいよな!」
「ええ、そうね」
婚約者ディスカンと二人でお茶会。
穏やかな時間を満喫できた。
これは私たちがもう数ヶ月続けている日常的な交流。
「これからもさ、ずっとずっとずーっと、こうやってまったりお茶会しような!」
「ええもちろん。夫婦になっても、お年寄りになっても、ね」
その日もいつもと変わらない様子で楽しく言葉を交わし別れたのだが――その翌日、早朝に彼から連絡があり、まさかの言葉を告げられることとなる。
「悪いな。お前との婚約だけど、破棄することにしたから」
――それは、関係の終わりを告げる言葉。
「え」
「実はさ、俺、前から気になってた人、好きな人がいたんだ。めちゃくちゃ美人なんだけどさ」
「そ、そう……」
「昨日お茶会の後その人から連絡があって。良かったら将来を見据えて交際しないかって言われたんだ。だから、お前とは終わりにするわ」
ディスカンは平然とそんなことを言う。
「お前も好きな人見つけろよな!」
なぜ? どうしてそんなことが言えるの? これからも仲良くしていこうといつも話していたのに、それなのに、こんなことを言い出すなんて。一体何がどうなっているの? 非現実的な話だけれど、変な呪いでもかけられたのかと疑ってしまうほど。人の心はそんなに急に変わるもの? 喧嘩したとか浮気が発覚したとか何か問題が起きたわけでもないのに。それでもこんなに変わる? 突然、こんな、別人みたいなことを言い出したりするもの?
驚きやら何やらで頭の中がめちゃくちゃになってしまって、思考がまとまらない。
「ちょっと待って。どういうことよ、それ。おかしいじゃない。言っていることがめちゃくちゃだわ」
「はあ? めちゃくちゃなことなんて言ってないだろ。分かりやすく説明しただろ」
「分からないわよ! だって、昨日まで、これからもずっとお茶会しようって言ってくれてたじゃない!」
「状況が変わって心も変わった、それだけなのに怒るなよ。心の狭いやつだな」
心の狭いやつ……?
何を言い出すのか。
よくそんなことが言えるな、と、苛立ってしまう。
急に昨日までと違うことを言われて驚き戸惑っているだけで心が狭いなんて言われなければならないのか。
「やっぱり、お前と結婚しなくて正解だったわ」
彼はそう吐き捨てる。
「お前がこんなクズ女だとはな」
そう発した瞬間のディスカンはとてつもなく冷たい目をしていた。
◆
あれから一年。
今、ディスカンは、前に言っていた女性――婚約者となっているのだが――その人の言いなりになることしかできない状況におかれているそうだ。
というのも、それまではわりと良い感じだった女性が婚約した途端豹変したらしいのである。
高圧的になった婚約者に暮らしのすべてを管理され、ディスカンは心を病み始めているとか。
もはや彼に自由はない。
彼はこの先いつまでも女性の支配の中で生きていくしかない。
だが、それもまた彼の選んだ道。それも私という存在がいたにもかかわらずそれを叩き潰してまで選んだ道なのだ。だから可哀想ではない。
◆
あの突然の婚約破棄から三年が経った。
私は二つ年上のリエベルという経済的な意味で豊かな青年と結婚し、まったりお茶をしながら、平穏な日常を満喫できている。
「リエベル、これ、今日の茶葉は新作ね?」
「ああ」
「私が知らない銘柄ってことは……貴方が買ってきてくれたのね」
「君に似合うようなパッケージだったので、つい。買ってしまった」
リエベルは善良な人だ。
最初に出会った時はそっけなくて、それゆえ冷たい人かと思っていたのだけれど、関わっていくうちに奥底にある優しさに気づくことができた。
だから彼と人生を歩むと決めたのだ。
冷たそうに見える人でもいい、本当の部分に優しさがあるのなら――大切なのは見た目ではない、そう思うから。
ちなみに元婚約者のディスカンはというと、今はもうこの世にいない。
妻となった女性に支配され続けたことで心を病み、体調を崩し、結婚後間もなく自宅の廊下で突然倒れ、そのままこの世を去ったそうである。
◆終わり◆




